ビッグシングルでも乗りやすい!

700馬力オーバーを楽しむ現代流RB26チューン

究極を求めれば際限がないRB26DETTチューニング。高出力化を突き詰めれば、ストリート仕様でも1000psオーバーが狙える時代だ。一方で、極端なハイパワー化や高回転化はトラブルのリスクを高め、街中での扱いやすさを損ないやすい。

かつては、乗りやすさよりもピークパワーを優先したチューニングカーも少なくなかった。その反動もあって、近年は「純正形状ツインターボで600ps弱」という、気兼ねなく乗れてイージードライブを楽しめる仕様が人気を集めてきた。

ところが、そんなツインターボブームにも一巡感が出てきたのか、最近は少し大きめのシングルターボを求めるユーザーが増えているという。

「そのツインターボブームも一巡したのか反動なのか、最近は少し大きめのシングルターボを求める流れが強まっていますね」。そう語るのは、ガレージ・ザウルスの林とっくりさんだ。

その背景には、新世代ターボの登場に対するユーザーの興味に加え、クランク角センサーのコンバージョンキットが普及したことで、エンジン制御そのものが進化してきたこともある。ハイチューンエンジンでも、以前より乗りやすく、安定した仕様を作りやすくなっているのだ。

「2.8L化やVカムが使える現代は、大きなタービンでも下から回せて乗りやすい。そして何より、シングルターボは実はコスパもいいですから」。

2.8L+Vカム+GT6290_BB!

その好例が、今回紹介するBNR32だ。

エンジンはHKSの2.8Lキット・ステップ1で排気量を拡大。Vカムに加えてエキゾースト側にもハイカムを投入し、ポート&燃焼室にはCNC加工を施している。そこへ組み合わせるのが、HKSの「GT6290_BB」タービンだ。

GT6290_BBは、GTシリーズの4世代目として登場したギャレットベースの新世代タービン。マットブラックに特殊処理されたコンプレッサーハウジングには、アルミ削り出しのポーテッドシュラウドを備え、サージングを抑制。ボールベアリングの採用によってレスポンスも高められている。

サイズ的にはGTIII-4Rより大きいものの、新世代タービンならではの設計によって、低回転域ではGTIII-4Rと同等以上の立ち上がりを見せるという。

つまり、大型シングルターボのネガティブな部分を、最新のターボ技術で補っているわけだ。

20本近く試作した6-2-1エキマニ

そして、ザウルスがGT6290_BBとセットで力を注いだのがエキゾーストマニホールドだ。

シングル前置きトップマウント式の6-2-1ロングタイプで、各パイプの長さや径はもちろん、ウエストゲートへつながるパイプ径まで徹底的に吟味。なかでも性能を大きく左右するという2-1部分は、なんと20本近くの試作を重ねて現在の形状へと辿り着いた。

「もともとロングタイプのエキマニは、特性が安定して乗りやすいという考えがあったんです。2-1部分の長さと径がすごく効くことが分かって、このマニを投入したら全域がすごく良くなりました。それに見た目も新しい感じでしょ(笑)」

さらに、タービンハウジングからエキマニ、ダウンパイプまでしっかりと断熱。排気温度を保ってターボ効率を高めると同時に、エンジンルームへの熱害も抑えている。

Vカムでビッグタービンを下から回す

大型タービンをストリートで楽しむうえで、2.8L化と並ぶ重要なポイントがVカムだ。

可変バルブタイミングはマップを再構築し、作用幅いっぱいまで積極的に使うことで、低回転域から過給圧を立ち上げる。そこへHKSのトリガーキットとR35用コイルによるダイレクトイグニッションを組み合わせ、高回転域での安定性も確保した。

エンジンマネージメントはF-CON V ProとEVC7が担当する。

競技車両であれば、車速や回転数、ギヤごとにブースト圧を細かく制御することも可能。しかしストリート仕様では、制御を増やしすぎるほど「自分で操る楽しさ」が薄れてしまうという考えから、あえてベーシックなコントロールに留めている。

新世代インジェクターで乗りやすさを向上

インジェクターにはボッシュ製900ccマルチホールタイプを採用。

近年のインジェクターは霧化性能が高く、こうした燃料系パーツも乗りやすさを作る重要な要素になっているという。とくに長期使用で劣化した純正インジェクターをメンテナンスのタイミングで新世代品へ交換するメリットは大きい。

あえて純正カップリングファンに戻す理由

クーリングについても、時代とともに考え方が変わってきた。

チューニング全盛期には、エンジン出力のロスを嫌って電動ファン化する手法が流行した。しかし近年は外気温の上昇によって電動ファンの稼働時間が増え、それに伴う故障からオーバーヒートへ至るケースもあるという。

そこでザウルスでは、あえて純正のカップリングファンへ戻すケースが増えている。

「30年、40年前の、外気温30℃想定時代のクルマをさらにイジっているんですからね。夏場はホントにいたわってあげて!」。

チューニングパーツで冷却性能を高めるだけではなく、そもそも古いクルマをどのような環境で使うのかまで考える。そこにもザウルスの考え方が表れている。

純正6連スロットルを49φへ拡大

吸気系はハイパーチューン製サージタンクを使用しつつ、スロットルは純正6連式をリビルト。さらに45φから49φへと拡大している。

ビッグシングルターボを組むとシングルスロットルへ変更したくなるところだが、ザウルスではコントロールがスムーズでなくなる傾向があるとして、ストリート仕様には積極的に勧めていない。

また、30年を超える車齢だけに、純正スロットルはブッシュやスプリングが限界を迎えている個体も多い。ナプレックによるリビルトだけでもアクセルフィールは大きく変わり、パワーチューン時にはさらに拡大加工を組み合わせるのがザウルス流だ。

燃料系はターゲットステージによって変わる

燃料系は、ドラッグレースやサーキット走行時の安定性を考慮して、トランク内にコレクタータンクを装備。ただし完全なストリート仕様であれば、純正タンク内の燃料ポンプを強化するだけでも対応できるという。

700馬力+α、ドラッグなら750馬力オーバー!

こうして仕上げられたRB26は、通常の最大ブースト圧1.6キロで700ps+αを発揮。

ドラッグレースではドラッグガスを投入し、ブースト圧を1.8キロまで高めることで750psオーバーに達する。それでも最大回転数はドラッグ走行時で8000rpm程度に抑えられている。

2.8L化したエンジンは、過給に頼りすぎなくてもグイグイと車体を前へ押し出す。そこへVカムを積極的に働かせることで、低回転域から過給が立ち上がり、豊かなトルクを発生。

一方でGT6290_BBには十分な余裕があるため、高回転域までスッキリと伸びていく。トルクバンドも広く、低いギヤを中心に使う街乗りでは、そもそも8000rpmまで回すような場面はほとんどない。

触媒付きの合法ストリート仕様で700~750ps。それでいて気難しさを抑え、イージードライブを楽しめる。これこそが「2.8L+Vカム+GT6290_BB」仕様の魅力なのだ。

駆動系まで“乗りやすさ”を追求

このBNR32の「扱いやすさ」を象徴するのが駆動系だ。

ミッションにはOS技研のOS-88シーケンシャル、クラッチにはORC、LSDにはOS技研スーパーロックLSDを投入。街乗り主体のクルマにシーケンシャルミッションというと過激な印象だが、クラッチを含めてセットアップが決まれば、純正ミッションに引けを取らないほど扱いやすいという。

もちろんOS-88まで公認を取得。本気で走るときには強力な武器となる。

柔らかめの足でストリートと競技を両立

サスペンションはザウルスオリジナルの「REX」。

街乗りを軸に、サーキットやドラッグも楽しめるよう、スプリングレートはフロント9kg/mm、リヤ7kg/mmと比較的柔らかめに設定。さらにニスモ製ブッシュ、クスコ製アーム、スタビライザーなどを組み合わせ、アライメントまで含めて車体の動きを整えている。

足元にはアドバンレーシングGTビヨンドRの10.5Jを前後にセットし、タイヤはアドバンA052の265/35R18。フェンダーはわずかに叩き出して収めた。

ブレーキも前後バランスを重視

ブレーキも単純な大径化ではない。

第二世代GT-Rでは、前後それぞれ別のブレーキキットを装着した結果、前後バランスを崩している車両も多いという。

そこでザウルスでは、フロント6ポット+355φローター、リヤ2ポット+324φローターを前後セットで開発。前後の圧力バランスを考慮し、さらにマスターバックも大型化することで、安定した姿勢で減速できるよう仕上げている。

700馬力を主張しすぎない大人のスタイル

インテリアも派手さを抑え、ブリッドのストラディアIIIを左右に装着。ナンバー7のカーボンステアリングやニスモのフルスケールメーターなど、ツウ好みのアイテムで走り屋らしい雰囲気を演出する。

エクステリアも同様だ。

純正風デザインのフロントバンパーにニスモダクトを追加し、リップとフロントアンダーは一体式を採用。リヤは純正ウイングを取り外し、カーボン製のニスモ風チビスポをセットすることで、700psオーバーという中身を過度に主張しないシンプルなスタイルにまとめている。

“乗って楽しい”ために残したアナログ感

良いパーツを使えば、チューニングの質そのものは高められる。しかし林さんは、各部のセットアップには多少の「アナログ感」を残した方が、乗って楽しいクルマになると考える。

2.8L+Vカムによる豊かなトルクを、新世代のGT6290_BBと作り込んだ6-2-1エキマニで低回転から引き出し、700~750psを発揮。それでいて8000rpm以上を常用する必要はない。

さらに、シーケンシャルミッションから足まわり、ブレーキまで同じ思想で仕立て上げる。街中では気兼ねなく乗れて、踏めばドラッグで9秒台を連発する速さも持ち合わせる。

極端なピークパワーだけを追い求めるのではなく、チューンドRB26らしい刺激と、現代的な乗りやすさを両立する。

それが、いまガレージ・ザウルスが提案する「2.8L+Vカム+ビッグシングル」という新たなRB26チューンのカタチなのである。

●取材協力:ガレージザウルス 埼玉県狭山市入間川4-8-16 TEL:04-2968-9212

「壊れたGT-Rを買ったら、25年後には1000馬力!」884レーシング最強のBCNR33を紐解く

チューニングから離れていた時期に舞い込んできた、故障したBCNR33の売却話。オーナーは購入を決意し、ガレージザウルスで修理とリフレッシュを実施した。それから25年以上。愛車は965psを発揮し、ドラッグとサーキットの双方で速さを磨き続けている。

【関連リンク】
ガレージザウルス
http://www.g-saurus.jp