パワーを追うほど熱対策が重要に!
4B11を壊さず速くするランデュースチューン!
4G63に代わる次世代エンジンとして、2007年にランサーエボリューションXへ搭載された4B11。アルミブロックとセミクローズドデッキを採用することで軽量化と耐久性を両立し、リバースヘッドによって環境性能への対応や搭載位置の最適化を図るなど、4G63の弱点を改善するための技術が盛り込まれた高性能ユニットだ。

吸排気側の両方にMIVECを採用し、低回転域から豊かなトルクを発生するのも特徴だ。ブーストアップでもその恩恵は大きく、エボIXより車重が約70kg増えたエボXをものともしない力強い走りを見せる。
ただし、純正タービンのまま出力を高めていくと、まず燃料系がボトルネックになる。純正インジェクターのままなら350ps程度、燃料系まで強化すれば370ps付近がブーストアップの目安となる。

そこからタービン交換へとステップアップする際に、オリジナルランデュースが推奨するのがHKS GTIII-RSだ。2Lクラスでは定番のアクチュエーター式タービンで、エボX専用品は周辺部品に小加工が必要となるものの、純正エキマニに装着できる。純正TD05よりもコンプレッサー容量に余裕がありながら、レスポンスにも優れている。
「ポン付けできる手軽さと、450psが狙えるキャパシティを備えているのがGTIII-RSの魅力です」と話すのは、ランデュースの浅田さん。カムまで交換してセッティングを煮詰めれば450~500psも視野に入り、純正タービン仕様から100ps以上の出力アップが狙える。


現在ランデュースでは、インテーク側のサクションからエキゾースト側までパイピングを製作し、できるだけ曲がりを減らすことで吸排気効率の向上を図っている。エキゾーストにはHKSスポーツ触媒とスーパーターボマフラーを組み合わせる。
もちろん、タービンだけを交換すれば済むわけではない。インジェクターや燃料ポンプ、デリバリーパイプの容量アップに加え、クラッチなど駆動系への対策も必要になる。


制御系は、ブーストアップならフラッシュエディターだけでも対応できるが、タービン交換時にはF-CON V Proとフラッシュエディターを併用。純正ECUと社外ECUそれぞれの長所を生かしながら、パフォーマンスと扱いやすさの両立を図っている。
ここまでは4B11の比較的オーソドックスなステップアップだが、450~500psの領域に入ると、このエンジンならではの課題が見えてくる。それが排気温度の問題だ。


後方排気レイアウトのため、タービン周辺のスペースに余裕がなく、熱がこもりやすい。出力を高めるほどその傾向は顕著になるため、排気温度のモニタリングは欠かせない。浅田さんも「性能を引き出すには熱対策が欠かせない」と話す。
さらに、ECUの制御にも注意が必要だ。低回転域からブースト圧を急激に立ち上げると、セーフモードに入ってまともに走れなくなる場合がある。そのため、特に低回転域では過給圧を緻密にコントロールする必要があるという。
そこで、さらなるパワーを求める場合にランデュースが選択肢としているのが、より大径のウエストゲート式タービンだ。
アクチュエーター式のGTIII-RSよりもインターセプトポイントが高くなるため、低回転域から過給圧が急激に立ち上がるのを抑えられ、ECUがセーフモードに入りにくくなる。さらに、排気側の抜けも改善できるため、4B11の弱点である排気温度への対策にもつながる。

こうした考え方を実際の車両でさらに一歩進めたのが、菊本さんのランサーエボリューションXだ。購入後にサーキット走行の楽しさに目覚め、多いときには月2回ほど走行するという菊本さん。約10年にわたってランデュースでチューニングを進めてきたが、車検対応は絶対条件。普段使いからサーキットまで、1台で楽しめるオールラウンダーを目指している。

エンジンはHKSのキャパシティアップキットで2.2L化し、シリンダーヘッドには燃焼室加工とポート研磨を施工。当初はGTIII-RSを組み合わせていたが、出力の向上に伴って排気温度が大きく上昇。ブロックが動く兆候が現れるとともに、ピストンのかじりも発生した。

本来ならブロックを新品に交換したいところだが、すでに製造廃止となっている。そこで今回のエンジンでは新たにライナーを組み込み、さらにシリンダーとブロックをピンで連結して補強。ブロックの動きを抑え、まずはエンジン本体の剛性を確保した。
タービンもGTIII-RSからウエストゲート式のGT5565_BBへ変更。パイピング類もワンオフで製作し、形状を最適化することで排気の抜けを改善している。

「車検対応を度外視すれば、いくらでも対策できますが、オーナーさんは普段使いもされているので、それではナンセンス。できる対策はすべて導入しました。完成後はECUをリセッティングし、どこまで抑え込めるかを詰めていく予定です」と浅田さん。
2.2LエンジンにGT5565_BBを組み合わせれば、本来は600ps強も狙える。しかし、このエボXが目標とする出力は550psだ。
出力を上げるほど、各部品の寿命は短くなる。しかも近年は、純正部品や車種専用のチューニングパーツも減少傾向にあり、壊れてから直せばいいという考え方は通用しにくくなってきた。そこでピークパワーを追い込むのではなく、排気、燃料、冷却、駆動系まで含めて余裕を確保しながら、中間域のトルクを太らせる方向で仕上げている。

冷却系にはHKSのインタークーラーを装着。オイルクーラーは純正とHKS製の2基掛けとし、ラジエーターもDRL製へ交換するなど、サーキットでの連続走行を想定した熱対策を施している。
一方、ファイナルエディションの5速MTをはじめ、ミッション内部や駆動系はノーマルのままだ。高回転まで引っ張ってピークパワーを使うのではなく、2.2Lエンジンが生み出す豊かな中間トルクを生かして早めにシフトアップする。こうした走らせ方も、各部への負担軽減につながるという。

サスペンションはオーリンズDFVをベースに、ランデュース独自のセッティングを施している。スプリングレートはフロント10kg/mm、リヤ8kg/mmだ。

フロントにはクスコ製スタビライザー、リヤにはパワーブレースを追加し、ボディの動きを整えている。

ブレーキは前後ともにランデュースオリジナルのRBKを装着。フロントは8ポットキャリパーと380φの2ピースローター、リヤは6ポットキャリパーと356φローターを組み合わせた強力なシステムで、ブレーキパッドにはオプション設定のZONE製を採用する。

ホイールはアドバンレーシングGTビヨンドの9.5J×18+29を前後に装着し、タイヤにはアドバン・ネオバAD09の265/35R18を組み合わせる。さらにバリス製エアロをフル装備し、ダウンフォースの確保だけでなく、エンジンルームの放熱性向上も図っている。


インテリアもストリートカーとしての機能性を残しながら、MOMO MOD.08ステアリングやレカロRMS、Defi ADVANCE FDなど、サーキット走行に必要な装備を追加。特に追加メーターは、4B11チューンで重要となるエンジンコンディションの把握にも欠かせない。

純正タービンで350~370ps、GTIII-RSへの交換で450~500ps、そして排気温度やブロック剛性まで対策した2.2Lエンジンとウエストゲート式タービンの組み合わせで550psへ。4B11は段階的にパフォーマンスを高められる一方、パワーを追求するほど熱との付き合い方が重要になる。
600psという数字を無理に追うのではなく、余裕を持たせたエンジンから太い中間トルクを引き出し、それを生かして速く走る。部品供給も厳しくなり始めたエボXをこれからも長く楽しむことを考えれば、そんな550ps仕様こそ、令和の4B11チューンにおけるひとつの回答といえそうだ。
●取材協力:オリジナルランデュース 岡山県倉敷市三田118-1 TEL:086-464-0606
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オリジナルランデュース
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