400psオーバーだけが正解じゃない!
用途で選ぶ現代13B-REWターボチューン
バイクのような鋭いレスポンスと滑らかな回転フィールを味わえるロータリーエンジン。FD3Sに搭載された13B-REWはシーケンシャルツインターボを採用し、ターボの高効率化などによって、V型(タイプR、RS)以降のカタログスペックは280psに達した。
チューニングベースとしても人気を集めてきた一方で、「ロータリーは壊れやすい」と囁かれ続けてきた側面もある。しかし現在は、ECUや各種センサー、冷却パーツが進化。エンジンの状態をしっかり把握したうえで適切にセットアップすれば、タービン交換仕様でも安心して長く楽しめるチューンドに仕上げられるようになったという。

「まずは圧縮を測り、燃料ポンプや点火系も含めて、現在の状態を把握することが大切です。きちんと制御して吸気温度を安定させれば、ロータリーだからといって特別に神経質になる必要はありません」と話すのは、パンスピードの佐藤さん。

そんなパンスピードが、13B-REWのステップアップメニューとして推奨するタービンが、HKSのGTIII-4Rだ。TO4Zの後継として開発された大容量タービンで、MHI製コアと鍛造アルミ製ビレットインペラーを採用。コンパクトな設計ながら、700ps超にも対応する風量を備えている。
排気エネルギーの大きいロータリーは、比較的大容量のタービンも力強く回せる一方、排気温度が高いという特徴がある。タービンによっては、エキゾーストハウジングが熱で変形し、排気漏れやブレードとハウジングの干渉を引き起こすことさえある。
その点、GTIII-4Rは耐熱性に優れたハウジングを備えており、ロータリーとの相性も良好。タービン自体には十分な容量的余裕を持たせながら、最大ブースト圧を約1.0キロに設定することで、410~420psを狙える。


エンジン制御には、純正ハーネスを生かして装着できるLINKのプラグインタイプを推奨。ラムダセンサーからの情報をもとに燃料を補正し、燃料噴射や点火、ブーストを一括管理する。回転数に応じた過給の立ち上がりを制御できるのはもちろん、スイッチを設けてハイ/ローの2チャンネルを切り替えることも可能だ。異常発生時の保護制御を組み込みやすい点も、LINKのメリットとなる。
ただし、13Bではノッキングがエンジンに深刻なダメージを与えることがある。そのため、パワーアップに取り組む前に重視したいのが、吸気温度の管理だ。

そこで効果を発揮するのが、ラジエターとインタークーラーをV字に配置するVマウント化だ。双方にフレッシュな走行風を当てられるうえ、前置きインタークーラーのように、インタークーラーを通過した熱気がラジエターへ流れ込みにくい。そのため、水温と吸気温度を同時に安定させやすい。コアの容量だけでなく、走行風をしっかりとコアへ導き、脇へ逃がさないための導風板など、細部の作り込みも重要になる。
吸気温度をできるだけ下げ、その変動を小さく抑えることが、ロータリーを壊れにくくする基本なのだ。

燃料系も同様だ。純正の燃料ポンプとインジェクターでは、余裕を見れば約300psが目安となる。FD3Sは年式的に燃料ポンプの性能が低下している車両も少なくないため、パワーアップに合わせて容量アップを図り、予防整備も兼ねて交換しておきたい。

排気系については、高回転域での効率だけを考えれば、メインパイプは太いほど有利になる。しかし、ストリート仕様では音量や車検への適合も無視できない。逆にサーキット専用ならフルストレート化も有効で、排気系パーツの選び方やキャタライザーの有無によって、出力が20~30psほど変わるという。


こうした周辺環境を整えたうえで、パンスピードではダイナパックを使った現車合わせのセッティングを実施。実例では、補正なしで381.6ps&41.49kgmを記録した。一般的な補正値であるTCF1.15を掛けて換算すれば、430ps+αに相当する。パワー、トルクともに滑らかな曲線を描き、ストリートでも扱いやすい特性に仕上がっている。

さらにもうワンランク上を目指すなら、エンジンのオーバーホール時にサイドポート加工を施すのも選択肢のひとつだ。ロータリーには、レシプロエンジンの鍛造ピストンのような強化部品がなく、基本構成は純正のままとなる。そこでサイドポート加工によってNA領域のトルクアップを狙えるが、同時に排圧も上昇するため、容量の小さい純正タービンには負担が大きい。社外タービンとの組み合わせを前提に検討したいメニューだ。
では、FD3Sを速く楽しむためには、タービン交換が必須なのかといえば、そうではない。

パンスピードがもうひとつ提案するのが、純正シーケンシャルツインターボを生かした「常時ツインターボ」仕様だ。
その考え方を具現化したのが、同社のデモカー。速さだけを追い求めた、乗り手を選ぶチューンドではない。街中を快適に走り、そのままサーキットへ向かって存分に楽しみ、再び自走して帰ってこられる。そんなストリート仕様の理想を目指して作り込まれている。
目指したのは、メーカー純正のような完成度を備えた「FD3Sスポーツパッケージ」。例えるなら、ポルシェGT3のような存在だ。エアコンなどの快適装備を残しながら、エンジンや足まわり、スタイリングをトータルで磨き上げている。

エンジンは、純正シーケンシャルツインターボから切り替え用バルブを取り除き、常時ツイン仕様へと変更。ノーマルは低回転域をプライマリータービンが受け持ち、途中からセカンダリータービンが加わる仕組みだが、切り替え時には加速に段付きが生じやすく、回転数が変動するタービンにも負担がかかる。
常時ツイン化すると、排気を常に2基のタービンへ振り分けるため、両方のタービンが同時に働き、ブーストが滑らかに立ち上がる。純正シーケンシャル特有の、ごく低回転域での鋭さは若干薄れるものの、アクセル操作に対してリニアに反応し、息つきもない。切り替え時にセカンダリータービンが急加速する際の圧力や回転変動も抑えられ、タービンへの負担軽減にもつながる。実際にユーザーが乗り比べると、8~9割は常時ツインのほうがフィールがいいと感じるそうだ。
最大ブースト圧は0.9キロ。スポーツ触媒付きなら310~320ps、サーキット向けのフルストレート仕様なら340ps前後が目安となる。GTIII-4Rほどの力強さこそないものの、軽量なFD3Sには十分なパワーで、エンジンや駆動系への負担も抑えられる。

500psを超えない仕様であれば、ミッションは純正のままでも問題なく、クラッチを強化する程度で対応できる。ただし、年式を考えれば、ドライブシャフトのブーツなどに亀裂が生じていないか、定期的なチェックは欠かせない。
そして、このデモカーが目指すのは、エンジンだけが速いFD3Sではない。オリジナル車高調やブレーキパッドは、木下みつひろ選手とタッグを組んで開発。街中ではしなやかに動き、サーキットではドライバーの操作に素直に応えるシャシーを追求している。
車高調は前後とも16kg/mmのスプリングを採用。走行テストを重ねながら減衰力やバネレートを詰め、サーキットで求められる応答性と、街中やサーキットからの帰路でも疲れにくいしなやかさを両立した。

ブレーキには純正の17インチ対応キャリパーを使用し、パッドによって前後バランスを最適化。リヤを積極的に効かせることで、4輪を使って車体を安定させながら減速できるようにしつつ、コーナーを曲がるためのコントロール性も確保している。


コクピットも、ブリッドのフルバケットシートやナルディのステアリング、Defiの追加メーターでスポーティにまとめながら、エアコンはしっかりと残している。エンジンのコンディションを把握でき、街中では快適に乗れるという、このクルマの狙いをそのまま反映した仕立てだ。

「誰が乗っても気持ちよく、ストレスなく乗れることを意識してセットアップしています。走るたびにFD3Sの軽さや一体感を味わえる。そんな1台に仕上がっていると思います。楽しいですよ!」と、小森谷さん。
同様のパッケージで仕上げたもう1台のFD3Sは、エアコン付きのまま筑波サーキットで59秒8をマークしている。
GTIII-4Rを組み合わせて400psオーバーを狙うのも、純正タービンを常時ツイン化して300ps台のレスポンスと扱いやすさを磨くのも、目指すところは同じ。エンジンの状態を把握し、熱や燃料、制御を整えたうえで、必要なパワーを必要なだけ引き出す。

街で乗りやすいクルマは、サーキットでも速い。ロータリーを長く、気持ちよく楽しむという、パンスピードの揺るぎない哲学が、そこには貫かれている。
●取材協力:パンスピード 埼玉県蓮田市関山2-7-8 TEL:048-764-2040
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