610kgの最軽量ボディにワークスの心臓を移植!
CAN通信&イモビの壁を越えて低予算ターボ化を目指す!
筑波スーパーバトルや峠スーパーラップに参戦し、HA36アルトワークスの可能性を切り拓いてきた“KCテクニカ”。オリジナルパーツも豊富に展開しており、同社のデモカーはチューンドアルトの代名詞的存在となっている。
そんなKCテクニカのピットでは現在、新たな伝説を築く可能性を秘めたマシンの製作が進められている。

「今取り組んでいるのは、最軽量のバンにワークスの機関系を移植した、通称『バンターボ』です。先代の23型でも同様のデモカーを走らせていたので、36型でも挑戦しようと考えました」と、KCテクニカの藤山さんは語る。


ベースとなるアルトバンは、車重610kgと36系の中で最軽量。安全装備などの充実によって軽自動車も重量が増加する傾向にある中、装備が最低限に抑えられた商用バンなら、その軽量ボディを最大限に活かしたチューニングカーを作れるというわけだ。
ちなみにKCテクニカでは、HA23アルトの時代にも同様のバンターボを製作。デモカーに刺激を受けたユーザーからのリクエストに応え、約60台を世に送り出した実績がある。
今回のHA36でも基本的な考え方は同じだが、単純にバンへワークスの部品を移植するだけでは終わらない。事故車のワークスを1台用意し、必要な部品を丸ごと移植する、いわゆる“ニコイチ”的な手法なら作業は比較的簡単だ。しかし、それではコストが膨らみ、ユーザーが気軽に真似できるメニューにはなりにくい。
そこで今回は、中古の機関系パーツだけを用意して換装。CAN通信やイモビライザーといった電子制御の壁があることも承知のうえで、必要な部品だけで成立させるノウハウの構築に挑んでいる。


サスメンバーやコアサポートはNA仕様のまま、マウント類も変更することなく、ワークス用エンジン&ミッションの搭載に成功。エンジン本体はノーマルだが、タービンには36ワークスのデモカーでテストしていたIHI製F4を組み合わせ、130〜150ps弱を目標としている。

インタークーラーやラジエターといった補器類もアップデート。最終的には、中古で購入したエンジンアッセンブリーなどを活用し、リーズナブルにバンターボを構築できるメニューへとつなげる考えだ。
ただし、本当に難しいのはここから。取材時点でハード面の移植は完了しており、エンジン始動にも成功していた。しかし、実走行で負荷をかけた際に、CAN通信に絡むエラーが発生する可能性もある。

特に大きな課題となりそうなのが、イモビライザーをはじめとする電子制御や、装備の違いだ。エンジンコンピューターやハーネスにはワークス用を投入しているものの、CAN通信を介してどのような制御が関連してくるのかは未知数。ボディコンピューターの移植やハーネス加工も試しながら、メカニックの山口さんがひとつずつ確認を進めている。

バンにはABSレス仕様も存在するが、こちらもCAN通信への影響が分からないため、現段階ではワークス用ABSユニットを配管未接続の状態でセット。実走テストで問題がないことを確認できれば、ユニットの撤去やハーネス処理による、さらなる軽量化も検討する。

もちろん、バンとワークスでは駆動系にも違いがある。ミッションやドライブシャフトをはじめ、スタビライザーの有無など、ターボエンジンのパワーを受け止めるための装備や強度には多くの相違点がある。パーツの品番や現物を比較しながら、何が必要で、何が不要なのかを見極めている最中だ。
「正直、本当にワークスの事故車を丸ごと用意すればよかったと、日々後悔しています(笑) でも、10万円程度で買える中古ターボエンジンを使って、低予算で楽しみたい人を応援できるメニューにしたい。だから頑張りますよ!」。

ただ動かすだけなら、もっと簡単な方法がある。それでもあえて遠回りするのは、完成したデモカーを披露するだけでなく、製作を通じて得られたノウハウをユーザーに還元するためだ。
今秋のシェイクダウンを目指して進められているHA36バンターボ計画。610kgの軽量ボディに130〜150ps弱というスペックが組み合わされれば、その走りが刺激的なものになることは想像に難くない。HA23アルト時代に約60台を世に送り出したバンターボが、36型でどのような進化を遂げるのか。完成後の走りにも期待したい。
●取材協力:KCテクニカ 京都府宇治市槇島町目川6 TEL:0774-28-5075
【関連リンク】
KCテクニカ
https://www.kc-technica.com
