理解し、意識し練習して体得する

スポーツドライビングにおけるコーナリングの基本には「スローイン・ファストアウト」をはじめ、「ブレーキで曲げる」、「アクセルは、クルマの向きを変えてから踏む」などなどさまざまある。サーキットにおける「速い旋回のコツ」を説くキーワードもいくつもある。だが、それらを正しく理解できていなかったり、実践しても上手くいかなかったり。とくに、最近はVITAがクラブマンに人気だが、これまで速いと思っていた自己流の走りがこの車両にまるで通用せず、タイムが伸び悩んでいる人も多いそう。逆にいえば、「プロたちが実践している旋回テクニック」をマスターできれば、それだけでエキスパートへの道が開かれる。

ここで伊東黎明が伝授してくれた「荷重によるヨーのコントロール」は、コーナーをより速く曲がるために欠かせない、プロ必須の旋回技術だ。クルマが自転しようとする動き(ヨーモーメント)を、荷重移動によって積極的にコントロール。クリッピングポイントに向けて車体の姿勢を早く変え終えることで、アクセルを早く踏めるようにする。

このテクニックは、タイヤのグリップだけに頼らず、クルマの慣性を活かして曲がるため、舵角抵抗ロスが少なく、タイヤへの負担も軽減される。さらに、4輪すべてのグリップ性能を使えるため、コーナリングが安定し、ボトムスピードも高く維持できるのだ。

「この技術さえマスターすれば、車種や仕様を問わず、どんなクルマでも速く走らせることができますよ」

そう語る伊東も、当初は、カートやフォーミュラとは勝手の異なる、ハコ車の動きに慣れるのに苦労したという。しかし、データロガーを活用し、操作のタイミングを研究、トレーニングを積むことで身体に覚え込ませた。プロであっても、練習なしに、この走法を身につけることはできないのだ。

「リアを回して曲がる」操作の流れとポイント

走行中のクルマは、ステアリングを切るった後にロールしていき、同時にヨーイング(自転しようとする力)が発生する。この一連の動きがなければ、クルマはスムーズに曲がることができない。じつは、ドライバーは無意識のうちに、車速やタイヤのグリップ力に応じてヨーをコントロールしながら走っている。

伊東の「リアを回して曲がる」という表現は、レーシングドライバーの旋回技術を自身が言語化したものだ。「ブレーキで曲がる」や、「クルマの向きを変える」といった操作のコツが、このひとことに集約されている。ブレーキをリリースしながらコーナーに進入し、クリッピングポイントにノーズを向けるように旋回する。この一連の動きが、「リアを回して曲がる」だ。

実際の操作の流れとしては、

①コーナリングに向けヒール&トーで減速し、フロントに荷重を乗せる。

②ブレーキリリースでリアに荷重を移すと同時に、ステアリングをゆっくりと切り始める。

③リアが巻き込む動きを感じながら、ブレーキを抜く速度とステアリングの舵角でヨーイングをコントロール。

④ノーズがクリッピングポイントに向いたら、ブレーキを完全にリリース。

⑤アクセルを踏み込み、コーナー出口に向けて加速する。

このドライビングで必要なヨーを発生させるための秘訣は、減速時に車速を落とし過ぎないことだ。この走法はクルマの慣性を活かすため、ある程度の車速が必要になる。

「進入速度は、少しオーバースピードと感じるくらいがちょうどよいです。旋回中も、ある程度車速をキープし、オーバーステアの一歩手前の荷重バランスを保つイメージです。

さらに、荷重バランスについては、あくまでも、リアタイヤもグリップしている状態です。ただし、『ギュ』という強い接地感ではなく、『ツツツッ』という少し抜け気味のグリップ感。コーナーのRに沿って、リアが巻いてくる動きを見せれば、ヨーで曲がるための理想的な荷重バランスが取れている証拠です」

なお、オーバースピードやオーバーステアに対する恐怖感が強い場合は、まずは広場で、操作の感覚をつかむのも手だ。シミュレーターは実車のようなGや荷重移動を体感することはできないが、それでもブレーキングやステアリング操作のタイミングを学び、「リアを回して曲がる」感覚を養なうことは十分にできる。


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