“おしゃれ”で選ばせた新感覚スクーター【ホンダ・ジョルノ】

HONDA ジョルノ|1992年発売
シャープなデザインやスポーティな装備が人気を集めていた1990年代前半。そんな中、まったく違う方向から登場したのがホンダ・ジョルノだ。
丸型ヘッドライトに、全体をやわらかな曲線でまとめたボディ。欧州スクーターを思わせるレトロな雰囲気は、当時の50ccスクーターの中でもかなり異色だった。
ジョルノが狙ったのは、最高出力や速さだけでは語れない価値。ホンダ自身も後年、ジョルノを「ファッション・スクーター」の第1号モデルとして位置づけており、スクーターをファッションの一部として楽しむ流れを広げた存在といえる。
もちろん、見た目だけに振ったモデルではない。シート下には20L容量のセンタートランクを備え、ヘルメットなどを収納可能。ワイドなフロアや大型レッグシールドなど、街中での使いやすさもしっかり考えられていた。
搭載するのは49cc空冷2ストローク単気筒のAF24E型エンジン。最高出力は5.6ps。スポーツスクーターのように数字で速さを競うキャラクターではなく、スタイルと実用性をひとつにまとめたことこそ、このモデルの新しさだった。

【SPECIFICATIONS】
総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:5.6ps/6500rpm
最大トルク:0.68kgm/5500rpm
全長×全幅×全高:1660×630×1010mm
重量:69kg
タイヤ:3.00-10・3.00-10
発売当時価格:18万9000円
“日常”を本気で磨いた実用派【ヤマハ・ジョグアプリオ】

YAMAHA ジョグアプリオ|1993年発売
翌1993年(平成5年)に登場したヤマハ・ジョグアプリオも、スポーツスクーターとは少し違う方向を目指した一台だ。
ヤマハが掲げたのは、誰もが気軽に使えるスタンダードなスクーター。丸みを帯びた親しみやすいデザインとしながら、毎日の足として必要な機能をしっかり磨き込んでいた。
その代表が、スクーター初となるマイコン制御デジタル点火。エンジン回転数などに応じて点火タイミングを電子制御することで、幅広い走行条件に合わせた効率のよい燃焼を狙ったものだ。さらに燃料タンク容量は従来の3.5Lから6Lへと大幅に拡大され、給油の手間を減らしている。メインスイッチ操作でシートを開けられるシートオープナーもクラス初の機構だった。
つまり、派手な装備を並べたというより、日々使ったときに「これは便利」と感じる部分をひとつずつ積み上げたスクーターなのだ。
最高出力は6.8ps。見た目は丸みを帯びた親しみやすいベーシックモデルながら、JOG系らしい走りの素性もしっかり持っていた。
そして、その素性のよさは後々別の楽しみ方にもつながっていく。コンパクトな車体に加え、JOG系のパーツを活用しやすかったことから、アプリオはチューニングベースとしても人気を獲得。見た目はごく普通なのに、イジると速い。そんなギャップにハマった人も少なくなかった。
速さを前面に押し出さなくても、日常で気持ちよく使えて、さらに遊びの余地まで残されている。派手さはなくても、乗れば「これでいい」ではなく「これがいい」と思わせてくれる。ジョグアプリオは、そんな1990年代ヤマハの“影の主役”だった。

【SPECIFICATIONS】
総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク・クランクケースリードバルブ単気筒
最高出力:6.8ps/6500rpm
最大トルク:0.75kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1615×630×1000mm
重量:61kg(乾)
タイヤ:80/90-10・80/90-10
発売当時価格:14万2000円
速さだけじゃない。それも90年代スクーターのおもしろさ
ジョルノはスタイル、ジョグアプリオは日常での使いやすさ。狙った方向は違うが、どちらも「最高出力が何psか」だけでは測れない魅力を持っていた。
スポーツスクーターがどんどん過激になった1990年代だからこそ、こうしたモデルの存在も見逃せない。見た目で選ぶ。便利さで選ぶ。そこからイジって遊ぶ。スクーターの楽しみ方そのものが広がっていった時代だった。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています
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