連載

自衛隊新戦力図鑑

ステルス戦力を急速に拡大する中国

中国空軍のアクロバット・チーム「八一飛行隊」が見事な編隊飛行を見せて会場を沸かせた。2日目以降、ときおり激しく雨の降る悪天候となってしまったが、飛行展示は連日行なわれた(筆者撮影)。

中国航展は、開催地から珠海エアショーとも呼ばれている。隔年開催のイベントで今年は15周年の節目の年を迎える。中国国営の航空宇宙企業「中国航空工業集団(AVIC)」を中心に、大小の国防関連企業が出展し、中国の最新軍事技術が披露された。注目されたのは初公開となったステルス戦闘機「J-35」だ。「J-20」に続く、中国2機目の国産ステルス機であり、J-20より小ぶりな機体となっている。空軍のほか、海軍でも空母艦載機として配備される見込みであり、アメリカ軍におけるF-35のような役割に相当するかもしれない。輸出も想定されていると言われているが、この点もF-35と同様だ。F-35が世界的ベストセラーとなっているなかで、これに対抗するためステルス戦闘機を欲する国は少なくないだろう。

中国の最新兵器が一同に会した同国最大の航空ショーを現地よりレポート(画像はこちらから全9枚)

AVICブースに展示されたJ-35Aの模型。同機は飛行展示も行なわれたが、晴天に恵まれた初日のみだったようで、筆者は撮影の機会を逃してしまった。同機は以前、「FC-31」や「J-31」と呼ばれていた(筆者撮影)

国産初のステルス戦闘機J-20も、大きくアピールしている。連日にわたって飛行展示が行なわれたほか、AVICブースでは複座型「J-20S」の模型がお披露目された。日本のSNS上では同機をポンコツと侮る声もあるが、すでに推定で200機近くが配備されているといわれており、実用戦闘機として充分な性能を持つことは間違いないだろう

観客を前にJ-20にパイロットが乗り込む。間近に見る実機は、大柄な機体もあって迫力がある(筆者撮影)
雨まじりの悪天候のなか、J-20による展示飛行は連日行なわれた(筆者撮影)

非ステルス機でも能力向上が著しい

中国軍戦闘機としてはJ-35やJ-20などのステルス機のほか、ソ連/ロシア製Su-27を国産化したJ-11系統の最新モデル、「J-15T」や「J-16」の展示飛行も行なわれた。J-15は空母艦載機であり、従来のJ-15がスキージャンプ発艦式空母用であったのに対して、T型はカタパルト発艦式空母に対応するものとなった。これは中国三番目の空母であり、初のカタパルト式空母「福建」の建造に対応したもので、中国空母戦力の増強を示している。また、J-16は複座の多用途戦闘機で、国産のアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーや各種電子機器を搭載する。その性能は本家ロシアのSu-27発展型機を上回るとも言われている。

着陸直前のJ-15T。前脚から突き出た「棒」は、カタパルトと機体を繋ぐローンチ・バー。中国海軍の空母戦力増強を強く感じさせる(筆者撮影)
J-16により展示飛行。同機は、Su-27をベースとしつつも中国の独自技術によって性能を大きく向上させた。中国の航空機技術は、すでにロシアを上回っているとも言われる(筆者撮影)

中国との連携に期待するロシア

ウクライナ侵攻以降、西側とは断絶状態にあるロシアだが、中国との関係はいまも深い。それを象徴するように、今回のエアショーでも同国の最新ステルス戦闘機「Su-57」やアクロバット・チーム「ルスキエ・ヴィチャージ(通称:ロシアン・ナイツ)」による展示飛行が行なわれた。開催3日目にあたる11月14日には突然、ショイグ前国防相が会場を訪問するなど、対中連携の強化や兵器輸出の拡大を目論む同国の思惑が透けて見える参加となった。

ロシアの最新ステルス戦闘機「Su-57」も、雨天をものともせず連日の展示飛行を行なった。同国航空幹部は、会場で記者団に対して輸出型「Su-57E」の初輸出の決定を発表しているが真偽は不明(筆者撮影)
ロシア空軍のアクロバット・チーム「ルスキエ・ヴィチャージ」。文句なしに世界でも最高レベルの技術力を持ったアクロバット・チームだと筆者は考えている。何度か飛行展示を見ているが、毎回その技量の高さに驚かされる(筆者撮影)。

さて、今回は飛行展示された航空機を中心に中国航展をレポートしたが、来週日曜日更新の記事では最新のドローン/対ドローン技術など、注目すべき兵器技術について解説したい。

連載 自衛隊新戦力図鑑

業界人コラム 2025.12.07

日本最西端の島、与那国の空を護れ!「03式中距離地対空誘導弾」&「24式対空電子戦装置」を配備

業界人コラム 2025.11.30

ずんぐりした船体を揺らして氷を砕く!? 哨戒艦「マックス・バーネイズ」来日

業界人コラム 2025.11.23

将来の無人機は「声」で指示を受ける!? 有人戦闘機×無人機の連携に向けた研究

業界人コラム 2025.11.16

海上自衛隊の新型「さくら」型哨戒艦が進水。小型ながら「無人機母艦」として活躍か?

業界人コラム 2025.11.09

攻撃ヘリは時代遅れなのか? ドローン時代に適応した新たな能力に生き残りをかける

業界人コラム 2025.11.02

海上輸送群の小型輸送艦「あまつそら」が進水。船ごと海岸に上陸する「ビーチング」能力とは