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ホンダ・CBR650R E-Clutch……115万5000円~
ホンダ・CB650R E-Clutch……108万9000円
官能的な吹け上がり、直4ならではの楽しさを再確認する
かつてホンダのミドルクラスには、CBR600Fという名車が存在した。欧州や北米では1987年から、国内では1992年から販売されており、コスパに優れる直4スポーツバイクとして世界中で人気を博した。2003年にCBR600RRが登場するまではレースシーンでも活躍するなど、文字どおりオールマイティなモデルだったのだ。
そんなCBR600Fは、2014年に新開発の直4エンジンを搭載したCBR650Fへと移行。同時に、ホーネットの愛称で親しまれていたネイキッドのCB600Fも、CB650Fへとモデルチェンジしている。そして、2019年にこの2台はCBR650RとCB650Rへと進化した。スタイリングを一新するとともに、倒立式フロントフォークや新デザインの前後ホイール、ラジアルマウント式のフロントキャリパーを採用するなど、足周りも刷新している。
こうして歴史を振り返ると、このミドルクラスのCBRとCBは、ホンダが1980年代後半から大切に育ててきたマスターピースであることが分かろう。600cc前後という排気量は、若者向けのエントリーモデルとしてだけでなく、ダウンサイジングを求めるベテランライダーのニーズにも応える必要がある。だからこそ幅広いユーザーに体感してもらえるように、Eクラッチの初搭載モデルとして、CBR650RとCB650Rを選んだのだという。
筆者がこの2台をテストするのは、2019年のモデルチェンジ直後に試乗して以来だ。2023年型で令和2年排ガス規制に適合しているが、最高出力95psは変わっていない。今回はクローズドコースでの試乗なので、スロットルを思う存分開けることができるのだが、とはいえ100psに迫ろうかというパワーは伊達ではない。右手の動きに対してエンジンはリニアに反応し、7,000rpm付近から一段と伸びが増す。その勢いはレッドゾーンの始まる12,500rpmまで衰えることはなく、慣れるまではそのはるか手前でスロットルを緩めてしまうほどだ。
そして、何より感心するのは、こうした高回転域でのエキサイティングなパワーを持ちながら、街中で常用する低~中回転域のトルクが潤沢なことだ。特にEクラッチ採用車は、その楽しさゆえ無駄にシフトアップしてしまうことが多いのだが、高めのギヤでも長い上り坂をスルスルと加速してくれる。これなら渋滞路での極低速走行も苦にならないだろう。
直接のライバルは、価格的にもパワー的にもトライアンフのデイトナ660ということになるだろう。並列3気筒エンジンを搭載するデイトナ660は、スポーツ/ロード/レインという3種類のライディングモードを備えており、それに連動してトラコンとABSの設定が最適化される。これに対してCBR650RとCB650Rはトラコンのオンオフのみだが、とはいえ発進から停止までクラッチ操作が不要なEクラッチのアドバンテージは圧倒的であり、何を優先するかで選ぶべきバイクが変わってくるだろう。
バンク角主体の扱いやすいハンドリング、乗り心地も良し
フルカウルのCBR650RとネイキッドのCB650R。異なるのは外装とライディングポジションぐらいで、車重差も4kgしかない。とはいえ、ハンドリングには大きな違いがある。
CBR650Rは、カウリングの整流効果もあってかスタビリティ成分が強めで、速度が増すほどにピタッと安定してくる。旋回力がそれなりだと感じるのは、ホイールベースが長いからだろうか。事実、CBR600RRより80mmも長く、これも安定性を高める要因になっているのは間違いない。
よって、スタイリングこそスーパースポーツ的だが、ハンドリングはスポーツツアラーに近く、マシンなりに寝かし込むとバンク角主体でスムーズに向きを変える。旋回中、リヤサスが奥で突っ張っているように感じるが、フロントフォークの動きはスムーズで、これによる安心感は大きい。また、サス自体の動きは良質で、巡航時の乗り心地がいいのも気に入った。
これに対してネイキッドのCB650Rは、とにかくロール方向の動きが軽快で、CBR650Rに対して10kg以上は軽いようなイメージだ。ライディングポジションはアップライトで、なおかつハンドルバーの幅が広く、積極的にマシンをコントロールできる。また、カウリングがない分だけ車体のピッチングが分かりやすく、これも扱いやすさの源になっている。二次旋回の印象はCBR650Rと大差ないが、そこに至るまでの倒し込みが素早く、また車体姿勢をコントロールしやすい分だけ、ネイキッドのCB650Rの方がワインディングロードは楽しいと言えるだろう。
ブレーキキャリパーは前後ともニッシンで、フロントにはラジアルマウント対向式4ピストンを採用。初期からガツンと利くタイプではなく、あくまでも入力に対して従順に制動力が発生する。峠道でペースを上げるともう少し利いてもいいかなと思うが、街乗りやツーリングユースを考慮すると、これが最適かもしれない。
昨年、401cc以上のバイクで国内第4位の販売台数を記録したというCBR650RとCB650R。今年はEクラッチがタイプ設定されたことで台風の目になる可能性は大きいのだが、これを執筆している6月中旬現在、残念ながら発売時期は未定となっている。とはいえ、欲しい人は早めにオーダーしておいた方がいいだろう。