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ヤマハ・シグナス グリファス……357,500円
低振動かつメカノイズの少ない、上品なブルーコアエンジン
一回り大きくなった? というのが偽らざる第一印象だ。それもそのはず、全長と全高は前後13インチホイールを履くNMAX ABSと同値となり、シート高は前作のシグナスXよりも10mmアップしている。車重は6kg増えているが、これはエンジンの水冷化と、パワーアップに対する各部の強化による影響だろう。
ややマンネリ気味だったシグナスXシリーズから一転、250ccのXMAXを彷彿させる逆スラントヘッドライトを採り入れた外観は、なかなかに存在感がある。加えて、試乗したグレーはフロントカウルからフェンダーにかけて縦方向にロゴが入っており、ここにもXMAXとの共通性を見出せる。ステップスルーデザインを堅持しつつも大胆にスタイリングを刷新してきたことに、ヤマハの並々ならぬ気合いが見え隠れする。
まずはエンジンから。ブルーコアと名付けられた124cc水冷SOHC4バルブ単気筒は、2016年にNMAX、2018年にトリシティ125が搭載してきたという歴史があり、2021年にトラコンとアイドリングストップを追加した最新型NMAXも含めて、いずれも好印象だった。特徴的なのは可変バルブVVAで、これは6,000rpmを境に吸気カムをローとハイに切り替えるというものだ。また、NMAXと同様に始動モーターとジェネレーターを一体化したSMG(スマートモータージェネレーター)を採用しており、将来的にはアイドリングストップが追加される可能性は大きい。
エンジンを始動し、まず驚かされるのは圧倒的な静粛性だ。キュルルルッという一般的なセルモーターの作動音がほとんどせず、しかもアイドリングは非常に静か。センタースタンドをかけてバイクからほんの少し離れると、本当にかかっているのか不安になるほどだ。おまけに、シートに座っていても微振動やメカノイズはほとんど伝わってこない。空冷時代の前作は良く言えば元気がいい、悪く言えば騒々しい印象があったので、これは非常に好ましい進化と言えるだろう。
スロットルを徐々に開けて発進する。遠心クラッチがつながる瞬間だけわずかに駆動系から振動が伝わるが、それ以降は非常にスムーズで静かだ。スムーズに感じさせる要因として振動が少ないことはもちろんだが、それ以外にスロットルのオンオフにおけるリヤの上下動がほとんどないことも挙げられる。これはユニットスイングのマウントの設計が優秀な証拠だ。
およそ50km/h、6,000rpmに差し掛かるとメーターパネルの左上に「VVA」のアイコンが表示され、ローカムからハイカムへと切り替わる。とはいっても加速フィールは低速域から極めてシームレスで、上り勾配のきついワインディングロードも意外なほどストレスなく走ることができる。スロットルレスポンスは右手の動きに対して適度に忠実で、エンブレもコントロールしやすい。トラコンは非採用だが、その必要性を強く感じることはほとんどなかった。
ライダーの操縦に忠実なハンドリングでウェットも恐くない
このシグナス グリファス、アンダーボーン型のフレームは新設計で、タイヤは前後とも1サイズずつワイドになっている。ブレーキはフロントディスク径がφ245mm、リヤは30mm大径化してφ230mmに。生産国の台湾ではABS仕様も選べるが、日本仕様は左レバーで前後が連動するユニファイドブレーキシステムが標準となる。
前作のシグナスXは、12インチという小径ホイールと短いホイールベースによってクイックに曲がれるが、直立を保とうとする力が強くて若干クセがあるという印象が強く残っている。これに対して新型のシグナス グリファスは、ホイールベースが延長されてNMAXと同値になったものの、倒し込みや切り返しの手応えがスムーズになり、格段に扱いやすくなった。操縦に対してどこまでも忠実で、寝かせた分だけ素直に向きを変えるという性格はヤマハらしいハンドリングであり、あまりの楽しさに気が付けば都下の有名なワイディングロードまで足を伸ばしてしまったほど。
さて、そのワインディングは、折からの冷え込みに加えて日陰はウェットという、あまり好ましくないコンディションではあったが、車体から伝わる接地感が高いために恐怖心は少なかった。ステップスルーデザインのため、大きなギャップを通過するとステアリングヘッド付近が揺れる症状が出るが、とはいえシグナスX時代からはずいぶんと減った印象だ。ブレーキについては、路面が濡れている下り勾配などリヤだけ作動させたい場面でフロントも利いてしまうという恐さがあるのと、前後連動式なのでリヤディスク大径化の恩恵が分かりづらいのはネックだが、コントロール性に関しては好印象。将来的にはABSが選べるようになることを望む。
前後12インチホイールやステップスルーといったキーワードを受け継ぎつつも、時代のニーズに合わせて上質に進化したシグナス グリファス。今回は取り急ぎ駆け足で試乗インプレッションをお届けした。詳細については近日中に公開予定なのでお楽しみに。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
シグナス グリファス 主要諸元
認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEJ4J/E33UE 全長/全幅/全高 1,935mm/690mm/1,160mm シート高 785mm 軸間距離 1,340mm 最低地上高 125mm 車両重量 125kg 燃料消費率1 国土交通省届出値 定地燃費値2 48.6km/L(60km/h)2名乗車時 WMTCモード値*3 44.5km/L(クラス1)1名乗車時 原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ 気筒数配列 単気筒 総排気量 124cm3 内径×行程 52.0mm×58.7mm 圧縮比 11.2:1 最高出力 9.0kW(12ps)/8,000rpm 最大トルク 11N・m(1.1kgf・m)/6,000rpm 始動方式 セルフ式 潤滑方式 ウェットサンプ エンジンオイル容量 1.00L 燃料タンク容量 6.1L(無鉛レギュラーガソリン指定) 吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション 点火方式 TCI(トランジスタ式) バッテリー容量/型式 12V、6.5Ah(10HR)/GT7B-4 1次減速比/2次減速比 1.000/10.208 (56/16×35/12) クラッチ形式 乾式、遠心、シュー 変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック 変速比 2.384~0.749:無段変速 フレーム形式 アンダーボーン キャスター/トレール 26°30′/90mm タイヤサイズ(前/後) 120/70-12 51L(チューブレス)/130/70-12 56L(チューブレス) 制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ 懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED 乗車定員 2名