燃費は?積載性は? 実用性を細かく解説。┃Ninja ZX-25R SE 1000kmガチ試乗③

250cccクラスで82万5000/91万3000円は、率直に言うと安くはない。とはいえ、他機種からの流用がごくわずかで、ほとんどのパーツが新規設計されている事実を知れば、ZX-25Rの価格に異論を述べる人はいないだろう。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

※2020年12月19日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
Ninja ZX-25R SE

カワサキNinja ZX-25R SE KRT EDITION……91万3000円

Ninja ZX-25R SE
スチール製トリレスフレームは、既存のニンジャ250とはまったく異なるレイアウト。ステアリングヘッドパイプとスイングアームピボットを4本のパイプで直線的に結ぶ構造は、ミドル以上のスーパースポーツで一般的なツインスパーを思わせる。

ライディングポジション ★★★★★

Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
ライポイジは見方によっては中途半端。スーパースポーツ的な視点で見るなら、ハンドルはもっと低く、シートはもっと高くしたいし、日常域を重視するなら、ハンドルはもう少し高くていいいのだが、現状の構成だからこそ、いろいろな場面でツブシが利くのだろう。なお足つき性に関しては、既存のニンジャ250よりわずかに良好で、身長が160cmのライダーなら不安は感じないようだ。ただし大柄な筆者(身長182cm・体重74kg)の場合は、膝や足首に痛みを感じることはなかったものの、下半身にもう少しゆとりが欲しくなった。
Ninja ZX-25R SE

タンデムライディング ★★★☆☆

Ninja ZX-25R SE
第2回目で述べたリアショックの問題があるので、あまり期待はしていなかったのだが、タンデムライディングは意外に快適で、ハンドリングへの悪影響もわずかしかなかった。以下はタンデムライダーを務めた、富樫カメラマンの感想。「座面がコンパクトなわりに落ち着きは良好で、乗り心地も悪くなかったよ。ただし、メインライダーの上半身が適度に前傾して、前後の距離が開きやすいから、タンデムライダーは距離を詰める意識は必要かもね。個人的には、タンデムベルトの握り心地が心許なかったけど、この種のバイクはそれが普通かな」

取り回し ★★★★☆

Ninja ZX-25R SE
サイドスタンドを払って車体を起こすときは、既存の250cc並列2気筒車より重さを感じるけれど、装備重量は183/184kgだから、一般的な成人男性であれば、取り回しに苦労することはないはず。倒立フォークを採用しているにも関わらず、ハンドル切れ角がニンジャ250と同じ左右35度に設定されていることと(ZX-10Rと6Rは左右27度)、両手を添えるグリップ位置があまり低くないことも、押し引きをする際には有利な条件。

ハンドル/メーターまわり ★★★★★

Ninja ZX-25R SE
やや開き気味の角度でトップブリッジ下にクランプされたセパレートハンドルや、ステーが短めのバックミラーからは、スーパースポーツ的な雰囲気を感じる。とはいえ、これまでに何度か述べたように、ZX-25Rの上半身の前傾度はスーパースポーツほど強くないので、市街地の移動やツーリングも快適にこなせる。アナログ式回転計と液晶パネルを組み合わせたメーターのデザインは、ZX-6Rと共通だが(基本構成はニンジャ250/400も同じ)、17000rpmからレッドゾーンが始まる文字盤は専用設計。
Ninja ZX-25R SE

左右スイッチ/レバー ★★★★☆

Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
左側スイッチボックスは、ZX-6Rや10Rなどと共通。右上のマルチファンクションボタンを使って、パワーモードの切り替え、クイックシフターのオンオフ、トラコンのレベル調整、多種多様な表示情報の変更を行う。右側に備わるセルスターター兼キルスイッチはスライド式。
Ninja ZX-25R SE
左右レバーには5段階のアジャスターを装備。カワサキは昔からこの機構に熱心で、他メーカーとは異なり、ワイヤ式クラッチでも採用車が少なくない。グリップラバーは同社のオンロードスポーツの定番品で、フロントブレーキマスターはオーソドックスなピストン横置き式。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
ノーマルのステップ位置だと、内股で挟むのはガソリンタンクではなく、フレームカバー+サイドフェアリングになるけれど、ニーグリップ感はなかなか良好。バー位置が高くなるステップを装着すれば、ガソリンタンク側面の張り出しがコーナリングで有効に使えそうだ。シートは快適性重視という雰囲気ではないものの、乗車中は手や足に適度に体重が分散するからだろうか、長距離を走っても尻や腰に痛みは感じなかった。なおカワサキでは純正アクセサリーとして、ウレタンの硬度を高くしたスポーツシートを販売している。
Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
ステップは現代のスポーツバイクの標準的な構成だが、専用設計と思われるヒールガードや肉抜きが施されたマウントプレートからは、開発陣のこだわりを感じる。なお第1回目では、クイックシフターの操作感はZX-10Rと同等と記したものの、実はコーナー進入時のシフトダウンで、“オートブリッパーが作動していない?”と感じることが数回あった。

積載性 ★★★☆☆

Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
タンデムステッププレートとリアフェンダーには荷かけフックを装備。ただしタンデムシート面積が小さいので、大きめのシートバックの積載は難しい(前側のフックを使うと、テールカウルにキズが付きそう)。アフターマーケット製リアキャリアの追加という手法もあるけれど、本来のスタイルを維持したいなら、純正アクセサリーのスマートバッグのような、コンパクトな製品を選ぶべきだろう。なお近年のカワサキではETCが標準装備の車両が増えているが、試乗車のタンデムシート下に収まるETCユニットは純正アクセサリー。

ブレーキ ★★★★☆

Ninja ZX-25R SE
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フロント:φ310mm/リヤ:φ220mmのブレーキディスクはオーソドックスな円型で(ニンジャ250は一貫してペータルタイプ)、キャリパーはフロント:ラジアルマウント式4ピストン/リヤ:片押し式1ピストン。フロントの制動感は素晴らしかったものの、リアはマスターシリンダーのリターンスプリングが強すぎるのだろうか、低速走行時は利きがわかりづらかった。ABSの出来は秀逸で、サーキットでも有効なんじゃないかと言いたくなるフィーリング。

サスペンション ★★★☆☆

Ninja ZX-25R SE
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ブレーキと同様に、サスペンションの印象は前後で異なる。まずφ37mm SFF-BP:セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストンの動きは好感触で、あらゆる状況に臨機応変に対応してくれた。そしてホリゾンタルバック式リンクを採用したリアサスも、守備範囲は決して狭くはないのだが、大前提として乗車1Gの沈み込みが多すぎるうえに(僕の体格のせいかと思ったが、必ずしもそうではない模様)、低中速域のダンパーが強すぎのような気がした。

車載工具 ★☆☆☆☆

Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-25R SE
タンデムシート裏に収まる車載工具は、2本のL型六角棒レンチとプラスドライバーのみ。今どきのスポーツバイクのオーナーで、車載工具に期待する人はあんまりいないと思うけれど、個人的には、リアショックのプリロードを調整するフックレンチは入れて欲しかった。

燃費 ★★★☆☆

Ninja ZX-25R SE
20km/Lが難しいと言われたかつてのZXR250を比較対象とするなら、決して悪い数値ではない。とはいえ、並列2気筒のニンジャ250が、ツーリングペースで25km/h以上、場合によっては30km/h前後をマークすることを考えると、やっぱり並列4気筒の燃費はいまひとつ。
Ninja ZX-25R SE
近年バイクの通例に従い、燃料残量警告灯の点滅はかなり早い段階から始まるので、トリップメーターが200km前後になると、ガソリンスタンドの所在地が気になるのだが、その時点での給油量は10L前後(タンク容量は15L)。もし僕がこのバイクのオーナーになったら、ツーリングでの給油タイミングは250kmあたりに設定しそうである。

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…