後軸出力152馬力!「空冷Z」最強最速を目指した世界に1台のレーサー仕様【サンクチュアリー】

東京モーターサイクルショー2022に展示された「サンクチュアリー A16R Z RACERⅢ」は、筑波サーキットで開催されるレース「TOT(テイスト・オブ・ツクバ)」の出場に向け、空冷のカワサキZシリーズ最強・最速を目指して製作された、世界に1台しかないレース専用モデル。空冷Zにこだわった、4バルブではないKZ系の4気筒DOHC 2バルブのエンジンは、後軸出力で152馬力を発揮。吸気系はZX-10R純正スロットルボディを用いてフューエルインジェクション化するなど、新旧を織り交ぜたチューニングが施されている。
PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
サンクチュアリー(SANCTUARY) https://www.ac-sanctuary.co.jp/

サンクチュアリー A16R Z RACERⅢ

2020 テイスト・オブ・ツクバ スーパーモンスターエヴォリューションクラス 58秒071(コースレコード) ライダー:國川浩道

2020年に筑波サーキットで開催されたレース「2020 TOT(テイスト・オブ・ツクバ)」にて、サンクチュアリーの「A16R Z RACERⅢ」を駆る國川浩道選手。
前後ホイールはO・Zレーシング製マグネシウムホイールで17インチ化。
前後タイヤはピレリ製DIABLOスーパーコルサV3。サイズは前120/70-17、後200/55-17のワイドタイプを選択。

 空冷のカワサキZシリーズ最強・最速を目指し、バイクカスタムのエキスパート「サンクチュアリー」がプロデュースした生粋のレーサー仕様、A16R Z RACERⅢ(Zレーサー3号機)。17インチホイール化を完全適合させるため、アメリカのロスアンゼルスにサンクチュアリーの関連子会社「RCM USA inc」を設立し、バイクメーカーとしての認可を取得。オリジナルシャシーで限定生産された車両「A16」をベースに、レーシングマシンとして、サンクチュアリーの『RCM(※注1)』にて製作された。

 A16R Zレーサーの活躍の場は、茨城県の筑波サーキットで開催されるレース「TOT(テイスト・オブ・ツクバ)」。サンクチュアリーは2002年以降、TOTにA16R Zレーサーを投入。1号機→2号機→3号機と進化を遂げてきたA16R Zレーサーは、2020年、TOT最高峰のスーパーモンスターエボリューションクラスに出場。國川浩道選手のライディングにより、58秒071という空冷マシンのコースレコードを記録した。

※注1:サンクチュアリーの『RCM(Radical Construction Manufacture)』とは、サンクチュアリーが展開するフルオーダーメイドのコンプリートマシン製作システム。2000年よりスタート。RCMは基本的に国産オンロードスポーツモデルを対象に受付。これまでカワサキの空冷Z系、カワサキの旧型Ninja各種、カワサキのゼファー系、スズキのKATANAシリーズ、ホンダCB-Fシリーズなどの“お宝BIGバイク”を、現代版として復活させてきた。

エンジンは空冷Zにこだわり、KZ系の4気筒DOHC 2バルブを採用。クランクケースはKZ1000ST純正がベース。溶接で4本のエキパイに複雑なアールを付けたチタン製マフラーもカスタムポイント。
吸気系はキャブレターではなく、フューエルインジェクションを導入。ZX-10Rの純正スロットルボディを流用。

 空冷4ストローク4気筒DOHCエンジンは、“空冷Z”にこだわり、4バルブではないKZ系の2バルブ。クランクケースはKZ1000ST純正改、シリンダーヘッドは2バルブのGPz1100純正改、シリンダーはZ1100GP純正改、クランクシャフトはGPz1100純正改(ストローク長66mm)を使用。ピストンはアニーズ製Φ78鍛造を組み合わせ。

 クラッチはZ1000ポリス純正ハウジングにSTMスリッパークラッチを導入。ミッションは6速クロスが組み込まれている。吸気系はキャブレターではなく、フューエルインジェクションを採用し、ZX-10R純正スロットルボディを流用。マフラーはナイトロレーシング製チタンをチョイスしている。

 前後17インチのO・Zレーシング製マグネシウムホイール、倒立型フロントフォーク、前後ブレンボ製キャリパー、オーリンズ製リアショック、専用スイングアームなど、足周りも徹底強化済みだ。

ゼッケンはサンクチュアリーの歴代レーサーが継承してきた39。ゼッケン下にはナイトロレーシング&アールズの11インチ13Rowラウンドオイルクーラーを装着。
マフラーは外径Φ90&ロングタイプのサイレンサーを採用したナイトロレーシング製。スイングアームはSCULPTUR製ワイドタイプ。リアショックはリザーバータンク付きのオーリンズ製。
レーサーならではのシングルシートはTOMO-FRP製。外装ペイントは塗装のエキスパート・YFデザインが担当。

A16R Z RACERⅢ 主要スペック

フレームRCM USA製ツインスパー型ダブルクレードル鋼管オリジナルフレーム1R9S
ヘッドパイプ25mmバック&30mmローダウン/ステムシャフト大径化&現行SS車規格ベアリング
スイングアームピボットスイングアームピボットブラケット総削り出し/10mmローダウン&シャフト系Φ20へ大径化
エンジンマウントジェラルミン総削り出し アジャスト式ロアーマウント/ダイレクト式オフセット型リアマウント
ホイールO・Zレーシング製マグネシウムホイールCATTIVA
F3.50-17 R6.00-17
フロントフォークNOBLEST OHLINS E×Mパッケージ(倒立フロントフォーク FGRT207)
タイヤピレリ製DIABLOスーパーコルサV3
F120/70-17 R200/55-17
ディスクローターF:サンスター製RCMコンセプトワークスエキスバンドΦ320
R:サンスター製Φ230
ブレーキキャリパーF:ブレンボ製ラジアルマウント GP4-RX
R:ブレンボ製CNC 2P
マスターシリンダーブレーキ&クラッチ ブレンボ製CNCラジアルポンプ
ブレーキ&クラッチレバーダートフリーク製 ZETA RCMコンセプトフライトレバー
ブレーキ&クラッチホースAllegri製 ショルトシステム
ハンドルバーデイトナ製セパレートハンドル&RCMコンセプトグリップエンド
ステアリングステムSCULPTUR製 倒立E×Mパッケージ用ステム TYPE-Ⅲ
スイングアームSCULPTUR製 A16専用ワイドスイングアーム
リアショックオーリンズ製グランドツイン
ドライブチェーンエヌマチェーン製 EK520
エンジン出力152馬力(後軸出力)
シリンダーヘッドGPz1100純正 インテーク側ハイポート化+スロットルボディダイレクト固定構造/5.5mmステム径オリジナルバルブガイド/Dura-Bond製オーバーサイズシートリング
カムシャフトWEB製460ハイカムシャフト 中空加工
カムチェーンGPz1100純正ハイボチェーン
バルブ5.5mmステム径ビッグバルブ(INΦ40/EXΦ33)
バルブスプリングAPE製スプリングレートシム同調
バルブリテーナーサンクチュアリー オリジナル 5.5mmステム径用軽量リテーナー
タペットゼファー純正 圧抜き穴&軽量加工後、WPC処理
シリンダーZ1100GP純正 オーバーサイズリテーナー入れ替えボーリング後、WPC処理
ピストンアニーズ製Φ78鍛造ピストン/軽量化&重量バランス後、WPC処理
クランクケースKZ1000ST純正 ハイポカムチェーンスライダー式へ加工/APE製クランクベアリングホルダー&スタッド
クランクシャフトGPz1100純正66mm 組み立てクランク分解/ウェイト重量合わせ&鏡面加工/位相修正
コンロッドGPz1100純正 ウェイト重量合わせ&鏡面加工
クラッチZ1000POLICE純正ハウジング+STMスリッパークラッチ
ミッション6速クロスミッション+サンクチュアリーコウガ製EVOシステム(チェーンライン108mm)
オイルポンプサンクチュアリーメカブランド製トロコイドローター式ハイプレッシャーオイルポンプ
吸気系ZX-10R純正 スロットルボディ
排気系ナイトロレーシング製 ウェルドクラフト3DチタンEX ストレイトチタンV-1 外径Φ90サイレンサー
冷却系ナイトロレーシング&アールズ 11インチ13Row ラウンドオイルクーラー
油圧クラッチリレーズプレートナイトロレーシング製 TYPE-Ⅱ
ボディパーツオリジナルワンオフアルミタンク/TOMO-FRP製シングルシート/ナイトロレーシング製アンダーカウル
外装ペイントYFデザイン
電装系LINK製フルコン/ディマースイッチ式シフター/STACK製ステッピングメーター&オリジナルメーターパネル

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