【実走燃費15.1km/L】その加速、放たれた矢の如く。 カワサキZX-10Rのパフォーマンスは尋常ではなかった。

レーサーレプリカ系の1000ccマシンと言うだけで、凄まじいハイパフォーマンスが想像できる。ZX-10Rはスーパーバイク世界選手権4連覇と言う偉業を成し遂げたカワサキを象徴する一台である。2019シーズンの世界耐久選手権第二戦ル・マン24時間耐久で、最後までスプリントレースの様なつばぜり合いを制し、SRCカワサキ・フランスが優勝!輝かしい栄冠はZX-10Rの魅力と価値をさらに高めたのである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2019年05月07日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

カワサキ・Ninja ZX-10R KRT EDITION……2,062,800円

カラーは写真の1タイプで、ライムグリーン×エボニー。
SEは、メタリックカーボングレー×メタリックフラットプラチナグレー。2,656,800円
RRは、ライムグリーン。世界で500台の限定生産車だ。2,926,800円

 スーパーバイク世界選手権レースで圧倒的な強さを誇るカワサキ。そこで活躍するマシンの市販バージョンがこのZX-10Rである。今回試乗したKRT EDITIONを標準モデルとし、先進の電子制御サスペンション(KECS)を備えマルケジーニ製鍛造ホイールを採用したZX-10R SE。

 そしてチタニウム製コンロッドの採用を始めサスペンションもファインチューニングを徹底。タイヤはピレリ製ディアブロ・スーパーコルサSPを履く。シングルシーターとし、世界で500台という限定生産でプレミアム性が追求されたZX-10RRの3機種がリリースされている。

 プレスリリースによれば、「サーキットにおいて誰が乗っても扱いやすく乗りやすいということを追求していけば、結果として速いマシンが出来上がる」と言う開発者のコメントが記載されていた。そんな想いで開発される、カワサキスポーツバイクの頂点に君臨するモデルが、まさにZX-10Rなのである。

 シート高は835mm。少し高めだが、ライダーの股下に触れる車体は細くスマートに感じられる。タンクやフレーム等、あらゆる所で色々な方向から受ける動きやライダーが加える力が、実にスムーズに意思疎通できる感じの仕上がり具合は、レーシングマシンそのものと言っても過言ではないだろう。
 
 コンパクトな水冷ツインカム16バルブの4気筒エンジンは、ボア・ストロ-クが75×55mmというショートストロークタイプの998ccで最高出力はなんと203ps/13,500rpm。高速時の吸気過給(ラムエア加圧時)が加わると212psまで出力が増すのだから凄い。

 2018年型の同モデルと比較すると、全回転域に渡ってトルク&出力ともに向上。しかも旋回から立ち上がり等の過渡領域でも扱いやすい出力特性が徹底追求されている。

試乗直後の素直な感想は『スゴ過ぎ』!!

 走行チェックは、都内からサクッと行ける宮ヶ瀬までまでを別ルートで往復。撮影も含めて200km足らずの距離だったが、峠道や高速と都内渋滞路も含めて多彩なテストができた。

 アイドリングは1000rpm。といってもデジタル表示の回転計は3000rpm以下が500rpm毎の刻みでなんとも大雑把。正確に言うと1000以上1500rpm未満が正しい。トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は4500rpm弱、80km/hでちょうど3500rpmという感じ。

 なお、レッドゾーンは14,000rpmから。仮にそこまで回したとすれば、ゆうに300km/hオーバーの世界が待っているわけだ。
 
 パワーの出方は3段階、トラクションコントロールは5段階の調節が利く。フルパワーで走ったがその実力を存分に楽しめる場所なんて、公道上には存在しない。
 
 ウイリーをおさえる制御もあって、ライダーは無造作にスロットルをワイドオープンしても車体の姿勢は平然と保たれ、巧みに電子制御が働いていることがわかるのだ。
 
 7000rpmからはそれはもう凄まじいばかりの強烈な吹き上がりを発揮し矢のようにダッシュする。身体が置いていかれないように全身の筋力を活用してもまだ足りない。

 ブレーキも同様でそれなりの握力と踏力を発揮すると、股をタンクに打ちつける程に強力な減速度が発揮できる。しかもそんな鋭いブレーキングからの急旋回、そして素早い立ち上がりへといとも簡単に決められるのだからスポーツ好きのライダーは興奮させられる事間違いなしである。
 
 最も公道を走るとポテンシャルの半分も発揮できないし、サスペンションがハードなセッティングで乗り心地の上でもストレスが溜まるかもしれない。

 しかし、例えば富士スピードウェイの様な高速サーキットを走る機会をもてるライダーなら、超高速域でも安定性に優れ確かなロードホールディングを発揮するサスペンションに助けられ、楽しく気持ちの良い汗がかける。頂点クラスの過激なスポーツモデルとして、まさに価値ある選択になるだろう。

足つきチェック(ライダー身長170cm/52kg)

ご覧の通り両足の踵は数cm地面から離れてしまう。シート高は835mm。足つき性が良いとは言えないが、扱いに大きな不安は感じられなかった。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…