ヤマハXフォース試乗レポ|6000rpmから走りが変わる、VVA効果を体感!

125cc超250cc以下の軽二輪スクーターに注力しているヤマハが、このクラスのラインナップをさらに拡充した。生産国の台湾では「フォース2.0」という車名で2021年10月から販売されているモデルが日本にも導入されることになり、フレームなどシャシーのベースとなっているのは原付二種のシグナス グリファスだ。エンジンはNMAX155系のVVA付き水冷ブルーコアで、ホイールは前後12インチのシグナス グリファスに対して前後13インチを採用する。果たしてその実力は?

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ X-FORCE ABS……396,000円(2022年6月28日発売)

車体色は写真のブルーイッシュホワイトパール1のほかに、マットダークグレーイッシュリーフグリーンメタリック2、マットダークパープリッシュブルーメタリック1、ブラックメタリックXを設定。なお、NMAX155の車両価格は40万7000円なので、差額は1万1000円だ。
台湾で人気のフォースシリーズがついに日本の正規ラインナップに加わった。軽量高剛性な鋼管フレームはシグナス グリファスをベースとし、155ccのエンジンを搭載するにあたり剛性バランスを見直している。前後オーバーハングを短くしたスタイリングが特徴だ。
2021年12月に発売された原付二種のシグナス グリファス。124ccのVVA付き水冷単気筒は12psを発生。ホイールは前後12インチで、ブレーキは前後連動式。1,340mmのホイールベースや6.1ℓの燃料タンク容量などはX-FORCEと共通で、こちらはLEDヘッドライトを採用する。

NMAX155と共通のエンジンに加速重視の変速比を組み合わせる

NMAX155、トリシティ155、マジェスティSという3種類の155ccスクーターをラインナップするヤマハが、さらにこのカテゴリーにニューモデルを投入した。X-FORCEと名付けられたこの新型車は、台湾ではFORCE 2.0と呼ばれており、2021年10月にフルモデルチェンジしたばかり。前後13インチのホイール径はそのままに、軸間距離は先代比で65mm短くなり、車重は11kgもダウン。原付二種スクーターのシグナス グリファスをベースとした鋼管フレームは、27%(約4.8kg)も軽くなっているなど、フォースという名前を引き継ぎながら完全に別物となっている。

パワーユニットは、155cc水冷SOHC4バルブ単気筒の新世代ブルーコアで、SMG(スマートモータージェネレーター)を採用するなど、基本的にはNMAX155と共通だ。6,000rpm付近を境に吸気カムをローとハイに切り替えるVVA(可変バルブ機構)を採用し、最高出力は15psを公称する。なお、コストダウンのためか、NMAX155に導入されているアイドリングストップ機構は非採用だ。

エンジンを始動する。SMGのおかげでキュルルルッという一般的なセルモーターの作動音は皆無であり、すぐにストトトトッと水冷シングルが目覚める。アイドリング時の吸排気音やメカノイズは非常に静かで、アグレッシブなスタイリングから受ける印象とは対照的だ。

スロットルを徐々に開けて発進する。開け方にもよるが、遠心クラッチは低回転域ですぐにつながり、そのままグングンと加速する。わずか30cc差とはいえ、125ccの原付二種スクーターよりも全域で力強く、交通の流れを余裕でリードできる。6,000rpm付近、およそ50km/hで吸気カムがローからハイへと切り替わり、それを知らせるVVAアイコンがメーターに表示される。だが、加速感の変化はシームレスであり、そこからさらに速度を上げていく。80km/h付近から速度の上昇カーブはやや穏やかになるものの、スロットルを開け続ければ100km/hに到達する。

高速道路での100km/h巡航が余裕かと問われたら首を横に振るが、とはいえ軽二輪スクーターなので自動車専用道路を走れるという法的メリットは大きい。ただし、同時に乗り比べていないので断言はできないが、もし高速走行がメインという人なら、同じブルーコアエンジンで変速比を最高速重視としたNMAX155の方が用途に合う可能性は大きい。


ライダーの操縦に従順なハンドリング、バンク角も十分以上だ

815mmというやや高めのシート高に、幅広かつ絞り角の少ないバーハンドル。床面の高いステップボードで構成されるライディングポジションは、スクーターとしてはスポーティと言えるだろう。座面はフラットで着座位置の自由度が高く、モタード的にリーンアウトで乗っても違和感が少ない。

ハンドリングは、車体への入力や体重移動などライダーの操縦に対して従順に反応するタイプで、寝かせた分だけ旋回力が高まるという性格は、フレームの基本設計が共通のシグナス グリファスに通じる。反対に、濡れた路面に萎縮するなどして、車体を倒せないでいると思うように曲がってくれないが、それも含めて乗り手に忠実なハンドリングと言えるだろう。

サスペンションの作動性は、荒れたアスファルトでは特にフロントがバタつく傾向にあるものの、乗り心地としてはこのクラスのスクーターの平均的レベルだ。ブレーキについては、フロントのディスク径が先代のφ245mmからφ267mmに拡大されるなど(リヤはφ230mmを継続)、しっかり強化されている。初期からガツンと利くタイプではないが、レバーに入力した分だけ制動力が比例して立ち上がるので、ハンドリングと同様にライダーの操縦に対して従順だ。

さて、ユーティリティについて。シート下のトランクは、フルフェイスのヘルメット+αが入る程度のサイズで、庫内照明やダンパーは設けられていない。容量が大きいことに越したことはないが、これを通勤通学で使うライダーの多くはトップケースを増設するだろうし、これでも十分だろう。フロントにレイアウトされた給油口は、シートに座ったまま給油できるので便利だが、集中キーでキャップのロックが解除されるタイプではなく、いちいちキーを差し替えて開く必要がある。これは少し面倒に感じた。

このX-FORCE、NMAX155と同様にCCU(コミュニケーションコントロールユニット)を搭載しており、専用アプリのY-Connectを介してスマホと連携できる。エンジンオイルやバッテリーの状態確認、燃費管理、最終駐車位置の記録、故障通知、タコメーター/スロットル開度/加速度表示、各種着信通知のアイコン表示などの機能を持っており、特に着信表示は現代人にとって非常に便利だろう。

NMAX155との車重差はわずか1kgで、ホイールベースは1,340mmで同じ。変速比の違いが影響しているのか、WMTCモードでの燃費はNMAX155の44.6km/ℓに対して40.9km/ℓとやや開きがあるが、キビキビとした走りを求めるライダーにはX-FORCEが合うだろう。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

スタイリングの特徴となっているのが、モタード風の幅広なバーハンドル。フラットなフロアボードは床面が高く、膝の曲がりがやや窮屈。とはいえ乗降車のしやすさは美点だ。
シート高は815mmで、NMAX155よりも50mm、またシグナスグリファスよりも30mm高く、足着きはやや厳しめ。だが、この腰高感が積極的な操縦のしやすさを生んでいるのは確かだ。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…