目次
Dr.モペット……14,300円(税込)
若いころはシートの善し悪しに頓着するなんていうことはありませんでした。バイクで走れればとにかく楽しかったので、長距離ツーリングに出かけてもお尻に痛みを感じた記憶がありません。だいたい快適性というものをバイクに求めてなかったんだと思います。しかし歳を重ねて体力が衰えてくると、可能な限り疲労は軽減したいと感じるようになりました。なのでついついバイクにも快適性を要求してしまいます。
仕事でもプライベートでもツーリングする機会が多い僕にとって、バイクで旅をすることは日常であり至福の時間です。ところがいまは同時に苦痛に耐える時間でもあるのです。その理由は、バイクのシートというのは「快適」とはほど遠い座り心地だからです。歳を重ねるととくに、お尻の痛みに耐えにくくなってしまいました。ひとたび痛みが出だすと連鎖して腰まで痛くなり、苦痛のあまり走るための集中力が欠如してしまいます。お尻の痛み程度ではなく、安全性にも影響を及ぼしてしまう結果になります。シートの座り心地とか快適性はツーリングを安心して楽しむために侮れない要素なのです。
低反発じゃなく正反発という素材が優れたクッション性を発揮
お尻の痛みを誘発しないためには座圧を分散してやる必要があります。バイクのシートは車体の構造上あまり大きくワイドな形状にできない。そのため座圧が集中してしまいがちなのです。そうした限られた条件の中で、お尻の痛みを少しでも緩和するためのシートクッションが数多く販売されています。中でも広く出回っているのが低反発のゲルクッションです。実際に僕も使ってみたりしましたが、期待していたほどの効果は感じられなかったというのが正直なところでした。
スーパーカブ110を旅仕様にカスタムしていくうえで、快適性を高めるのは必須です。シートの座り心地をアップさせるのもそのひとつ。そこで白羽の矢を当てたのが、低反発ではなく正反発という特性があるボディドクターのラテックスフォームを使用したバイク座シートDr.モペットという商品です。スーパーカブをはじめとしたカブシリーズに適合する商品がラインナップされていて、その中からもちろん、スーパーカブ110に合うDr.モペットをチョイスしました。
Dr.モペットはカバータイプになっているので、シートにしっかりかぶせて裏側で取り付け紐を結ぶだけで装着完了。白×黒のツートーンで見た目の印象はちょっぴり変わりますが、座った感触がふわりとしていて心地よい感じです。座面は20mmほど高くなりますが、もともとが735mmと低いので755mmになったところで足つき性を著しく悪化させることはありませんでした。
300kmのツーリングでも痛みはほぼ無し!
Dr.モペット装着早々300kmほどのツーリングに出てみました。するとどうでしょう、クッション性が良くて座り心地がいいだけじゃなく、未舗装路を走っても衝撃をしっかり吸収してくれたので、お尻の痛みはほとんど感じませんでした。感覚的にはサスペンションのグレードがアップしてクッション性、減衰性が良くなったようなイメージです。以前スタンダードで200km程度のツーリングをしたときには、後半はお尻に痛みが出てしまいましたが、Dr.モペット装着でそれはまったくなくなりました。結果的に疲労が少なく済み、そのぶんツーリングを満喫することができました。一度この快適性を知ってしまうと、もう元には戻れません。
バイク座シートDr.モペットは、毎日の業務などで何度も乗り降りする際のズレ等を考慮してカバー式を採用している。装着に際しては、シートをすっぽりと覆うようにかぶせ、裏側でヒモを結んで固定する。ラテックスフォームのヘタリ保証は3年となっている
栗栖国安 業界歴40年のバイクジャーナリスト。専門誌から一般誌まで幅広く執筆活動するが、得意分野はツーリング紀行。また鉄道にも造詣が深く、『旅と鉄道』でバイクで廃線めぐりの旅を連載中。著書に『男のバイク旅』『バイクで行く廃線・廃駅めぐり』などがある