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PCX、いざ東海道へ!
毎度ぐだぐだの出遅れが恒例となりきったガス欠チャレンジだが、今回こそは早朝に出発し、できるだけ初日に距離を稼ごうと思っていた。でも朝寝坊のタカハシにはやはり無理だった。いつもとたいして変わらない正午過ぎ、ようやく日本橋を走り出した。
人気のマシンにはワケがある
今回タカハシと共に京都をめざす相棒は、ホンダPCX125。どこかしらホンダ四輪の香り漂うラグジュアリーなスタイルが人気のマシンだ。
ゼロ発進で60km/h到達にかかる時間は、タカハシの脳内時計で測るとだいたい6秒。充分な加速力がある反面で、それほどの速さは感じない。知らないうちにするするスピードが上がるエンジンだ。
どんなポジションで乗っても、どんな速度域からでも安定してナチュラルに曲がれる操縦性とあいまって、海原をゆくプレジャーボートのようなゆったり大らかな走りっぷりだ。
フロントブレーキは、ニュートラルでクセのない効き味。ABS付きだが、作動時もブーンとかすかな音がする程度で、目立ったキックバックはない。ABS非装備のリアは、レバーを強く握ると、わりとすぐロックするが、ロックの挙動が安定していて怖くない。
見ればすぐにわかる上質なデザインと、乗ればすぐにわかる走りの良さ。そのへんの明快なわかりやすさがPCXのイイところだ。
大都会のオアシスへ
国道1号は、日本橋からしばらくの間、何から何まで退屈なだけの都会の道だ。それでも東京都を抜け出すと、少しずつだが風景が変わりだす。横浜市鶴見区を抜けるあたりで、道端に小さな湧き水があらわれた。
バイクをとめて近づいてみると、湧き水のそばには「生水では飲むな」と注意書きがある。近くをうろついている間にも、何人か水を汲みにくる人が現れた。たぶん連中は、この水を家に持ち帰り、わざわざ沸かしてコーヒーでも飲むんだろう。
沸かさないと飲めない点にやや不満は残るものの、埃まみれの顔さえ洗えれば、ライダーにとってはまあまあ立派なオアシスだ。じゃぶじゃぶ顔を洗って楽しんだ。
フューエルメーターが動かない!
国道1号が戸塚にさしかかる頃、時刻は17時半をまわった。じりじりと夕暮れが忍び寄る。そして恐ろしいことに、トリップメーターが50kmに達しても、全部で9目盛りあるフューエルメーターは、まだ1目盛りも減らず満タン表示のまま……。
たかが小型スクーター、どうせ瞬時にガス欠するだろうと見くびりきって気安く日本橋を走り出したが、コイツはいったいどこまで走る気なのか。もしかして、そーとーヤバい奴に乗ってしまったんじゃないかと、今さらながら不安になってきたが、乗りかかったバイクからは降りられない。このまま京都をめざすしかないだろう。
湘南海岸あたりから、東海道はまっすぐ西に進んでいる。いつもならどんどん西に進むところだが、今回は北へとルートをとった。
あいにく今は観光シーズン真っ只中で、ふだん泊まっている安ホテルですら超強気になって、平常期の数倍ものとんでもない宿泊料金をつけている。やむなく東海道を大きくはずれた秦野市の激安カプセルホテルに転がり込んだ。パーキングにPCXを入れた瞬間、ちょうどフューエルメーターが動き、残7目盛りになったのを確認して走行を終えた。(続く)