ただの街乗りバイクじゃない! 安心パフォーマンスのスクーターのホンダフォルツァ。寒い日はトラコン&電動スクリーンが大活躍でした。

2022年12月のモデルチェンジで、ヘッドライトなどのカバー類のデザインを変更し、よりスタイリッシュに生まれ変わった新型フォルツァ。デビューから早23年、スポーツ→ラグジュアリー→スポーツと時代に合わせてその姿を変えてきたモデルの歴史と今を考える。

REPORT●MCシモ(WADA Teppei )
PHOTO●山田俊輔’(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・フォルツァ……691,900円

『ビッグスクーター』というカテゴリーが強烈なブームを巻き起こし始める2000年に発売された初代、MF06フォルツァ。そのルックスは他のモデルとは一線を画す、スポーツマインドを強く感じるものだった。RVFを彷彿とさせるデュアルヘッドライトに鋭いボディライン。四輪のS2000をベースとして作られたデザインとコンパクトで軽量な車体はスポーツバイクがお好みなライダーたちもビッグスクーターのカテゴリーへと誘った。二代目となるMF08からはホイールベースや全長こそ大きく変わらないものの、ボディサイズは大柄になり快適性を重視した設計に変わっていく。2004のMF08から2013のMF12までは同様のテーマを感じるモデルだった。
大きく変化をしたのは2018年のMF13型。快適性を維持しつつ、初代を思い起こすスポーティーなデザインになる。ホイールベースが短くなり、前モデルから8kg軽量化。確実に走りを意識した内容へと変わっていった。歴史を積み重ねながらも時代に合わせて変化を恐れなかった今のフォルツァを試乗してみた。

ノーストレス! 回転数を気にせず走れる高次元のパワーバランス

アイドリングからほんの少しアクセルを開けて動き出す瞬間にまずは驚いた。シングルエンジン特有の振動がとても少なく、CVTの変速機構でありがちなショックも無く、実に静かにそしてスムーズに発進。ノーマル状態でも閑静な住宅街の早朝出発は気を使う。そんなケースも経験したことがあるが、その心配は全くないように思える。
前作から搭載されているエンジン「eSP+」はとても厳しい排ガス規制をクリアしながら扱いやすさ、鋭い加速、伸びやかな高回転を持つ。更にはバランサーシャフトが振動を軽減し、油圧式カムチェーンテンショナーリフターがメカニカル騒音を抑える。こういった数多くの最新技術の恩恵を、先にもお伝えした通り発進の瞬間から感じることができる。
eSP+の魅力はその性能だけに留まらない。エンジン自体もとてもコンパクトに設計されている。特にシリンダーヘッドは小さく出来ており、エンジン全長の短縮によるスペース確保に貢献。実際にeSP+が搭載されたMF13型からホイールベースが短くなっている。スロットルボディについても低く、シリンダーと可能な限り平行にすることでメットインスペースの確保に一役を買っている。

市街地での低速走行やストップ&ゴーでの快適性を満喫しながら、交通量の少ないワインディング道へと進んでいく。中高速でも市街地で体感した扱いやすさや快適性はそのまま維持される。アクセルをワイドオープンして5000rpmから8000rpm辺りまでスーッと滞りなく加速していく。あまりに回転の一時落ち込みやバランスを崩すことがないため、体感速度が鈍りそうなほどスムーズなのだ。走行中のアクセルの開け直しも先に回転が上昇しすぎることはなく自然なフィーリングで再加速をしていく。

不安定な路面状況でのリスクを軽減するHondaセレクタブルトルクコントロール

この日は気温がとても低く路肩には雪が残り、その雪解け水が路面を濡らすという絶好のBADコンディション。そのおかげでHondaセレクタブルトルクコントロールの恩恵を余すことなく拝受することとなった。
このシステムは前後輪の車速センサーが算出した後輪のスリップ率がライダーの選択した所定のレベル以上となった場合、ECUが後輪のタイヤがスリップしたと判断し、燃料噴射量を最適にコントロール。エンジントルクを最適化し、加速時やスリップしやすい路面での安心感をもたらすというもの。左のハンドルスイッチでON/OFFを選択するとその差は歴然だった。OFF状態ではタイヤの接地感が弱く、フワフワと路面を舐めているような感覚。ONにすると重心が下がったかのようにドッシリとしたイメージになり路面への張り付き感を感じる。カーブの進入時もバンクをさせようとすると少し重さを感じ、ゆっくりバンキング。そこからピタッと安定する。ONとOFFの差を知ってしまうとOFFにする気にならないほど、この日の路面状況での安心感は大きかった。

ディテール解説

専用設計のフロント15インチ、リア14インチの軽量アルミホイール。ブレーキにはフロント256mm大径ディスク。リアディスクは240mm、もちろんABSも標準装備。

スマートキーを携帯していればイグニッションのON/OFFはもちろん、ハンドルロックやシート開閉、ガソリンタンクへのアクセスが可能。更にスマートキーのボタン操作でウィンカーを点滅させるアンサーバック機能を装備。駐輪場に同型同色のフォルツァが100台いても自車を見つけられる。

メーター外周に導光リングを採用したアナログ二眼メーター。自発光式のメモリと針に加え、中央の液晶パネルを大型化することで視認性を高めている。配置のバランスの良さが美しい。

ETC車載機が収納できる十分なスペース。セパレーターで収納スペースを仕切ることも可能。奥にはUSBソケットtype-cを標準装備。

電動式可動スクリーンは走行中でも操作可能。可動域は180mmを確保。左ハンドルスイッチで無段階調整ができる。どの位置で設定しても最適な空気の流れになるよう空力分析も行っている。

メットイン

 ラゲッジスペースは大容量48L。フルフェイスヘルメットはサイズにより最大2個収納が可能。別体のセパレートプレートを使うことで雨具とカバンなどを仕切って収納できるところは大きなメリット。

新デザインのLEDヘッドライトとテールランプ。急ブレーキ時を感知すると左右のウィンカーランプを高速点滅させ、後続車へ素早く注意を促すエマージェンシーストップシグナルを装備。

足つき&ポジション/163.5cm/55kg

主要諸元

車名・型式:ホンダ・8BK-MF17
全長(mm):2,145
全幅(mm):750
全高(mm):1,360
軸距(mm):1,510
最低地上高(mm):145
シート高(mm):780
車両重量(kg):186
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L)国土交通省届出値:定地燃費値 (km/h) 41.5(60)〈2名乗車時〉
最小回転半径(m):2.4
エンジン型式:MF17E
エンジン種類:水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒
総排気量(㎤):249
内径×行程(mm):67.0×70.7
圧縮比:10.2
最高出力(kW[PS]/rpm):17[23]/7,750
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):24[2.4]/6,250
始動方式:セルフ式
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
燃料タンク容量(L):11
変速機形式:無段変速式(Vマチック)
タイヤ(前)120/70-15M/C 56P
   (後)140/70-14M/C 62P
ブレーキ形式:
(前)油圧式ディスク(ABS)
(後)油圧式ディスク(ABS)
懸架方式:
(前)テレスコピック式
(後)ユニットスイング式
フレーム形式:アンダーボーン

インプレライダー:MCシモ

鈴鹿8耐を始め、国内外のレースを実況。アナウンサーやイベントMCとして活動中。
喋って走れるレーシングアナウンサーの異名を持ち、160cmほどしかない小さな体でオンロード/オフロード、原チャリから大排気量まで分野を問わず何でも乗りまわす。所有台数はレーサーを中心に10台以上。街乗りメインバイクは1290SUPER DUKE Rとガンナー100と電動キックボード。メットインがない頃の旧型スクーターを見るとすぐに欲しくなる持病がある。

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