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2023年で会社創立100年を迎える、キャブレターやフューエルインジェクション用スロットルボディでお馴染みの機器メーカー「ミクニ」。同社のブースには、貴重なビンテージモデルの純正キャブレターに加え、最新モデルの純正スロットルボディが展示された。年代順にチェックしてみよう。
キャブレター編
年代:1971年~ 名称:BS38 採用モデル:ヤマハ XS1/XS650
ヤマハ初の4ストロークエンジン搭載車・XS1に2連装で装着されたキャブレター「BS38」。「BS38」はミクニ初となる二輪向けのBS型キャブレター。起源は四輪向けのBSWキャブレター。
ヤマハXS1はスリムなダブルクレードルフレームに、バーチカルツインの空冷4ストロークSOHC 2バルブ653ccエンジンを搭載。1970年9月にXS1はマイナーチェンジされ、XS650として新登場。その後はディスクブレーキなどを採用したXS650Eもリリースされた。
年代:1976年~ 名称:VM29 適応モデル:カワサキZⅡ/ホンダ他
1973年~1976年まで製造されたカワサキの名車「Z750RS」、通称ZⅡ(ゼッツー)。空冷4ストローク直列4気筒DOHC 2バルブ746ccを搭載。
初期型のZⅡにはVM26を採用。レース向けに開発されたVM29は、ZⅡやホンダの多気筒車のチューニングパーツとして多用された。アマルスタンダードと同じジェットブロックを装備し、スムーズな吸気を実現。4気筒のZⅡには、4連装で装着。
年代:1979年~ 名称:BSW32 採用モデル:カワサキZ1300
カワサキZ1300は1978年に発売された、水冷4ストローク直列6気筒DOHC 2バルブ1286ccエンジン搭載モデル。6気筒ユニットはエンジン幅が広がることを避けるため、超ロングストローク仕様に設定。日本メーカーの車両では、当時最大の排気量を誇った。最高出力は当時の市販国産車最強の120馬力(後期型は10psアップの130馬力)。車両重量は超ヘビーな297kg。
同車に採用されたキャブレター「BSW32」は、6気筒エンジン向けの3連装型で、コンパクトな2ボア1ボディの“ツインボア仕様(2バレル構造)”に設計。このキャブレターは四輪向けのBSWがベースとなっている。なお1984年式以降のZ1300は、キャブレターからフューエルインジェクションにされた。
年代:1985年~ 名称:TM29 採用モデル:スズキGSX-R750
スズキGSX-R750は1985年に発売されたレーサーレプリカモデル。油冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ749ccエンジンを搭載。
同車に採用された「TM29」は、ミクニ初のフラットスライドバルブを導入した連装キャブレター。スロットルを捻ると“水鉄砲”のようにエンジン内へガソリンが噴射され、“ドッカンパワー”を発揮する、レーシーな加速ポンプも装備されている。
年代:1985年~ 名称:BDS35 採用モデル:ヤマハVMAX
1985年に登場したヤマハVMAXは、「ストリートドラッガー」という独自のカテゴリーを形成したマッチョスタイルのネイキッドモデル。「Vブースト」という独自機構を備えたエンジンは、水冷4ストロークV型4気筒DOHC 4バルブ1198cc。
VMAXは「スーパースポーツ」と呼ばれた、フルカウル付きのモデルも到達できなかった145馬力という、当時としては常識外れのモンスターパワーを発揮。走行性能も驚異的で、0-400mの加速は10秒台前半という市販車離れの強烈な加速力を発揮した。
外観面では、驚愕の150mm幅の超極太リアタイヤをチョイスし(今では150サイズ以上は当たり前だが、当時は常識を超えた太さだった)、外観面でもユーザーの度肝を抜いた。
速いバイク=軽量さを競っていた当時のバイク事情とは裏腹に、外観は横綱級のマッチョなもの。263kg(初期型)という超ヘビーな重量も、「軽量が当たり前」だったレーサーレプリカブーム時の常識を覆し、走り&外観とも、レーサーレプリカモデルを超越した、“モンスターマシン”と呼ばれた。
大パワーを生み出すため、VMAXは「Vブースト」という機構を導入。VMAXの代名詞ともなる「Vブースト」とは、ヤマハ独自の過給機システム。通常は1気筒あたり、1個のキャブレターから燃料(混合気)が送り込まれる。一方、Vブーストは、6000回転を越えたあたりから、隣の気筒用のキャブレターからも混合気が送り込まれるよう、フラップバルブが開き始め、8000回転で1気筒に対し、2個のキャブレターから混合気が送り込まれ、爆発的なパワーを獲得するのが大きなポイント。
VMAXには吸気孔を直下向きにレイアウトできるBS型の「BDS35キャブレター」を採用。同キャブレターは高精度な樹脂製ピストンバルブ、専用フロート系を採用。なお、独自の吸気機構である「Vブースト」に採用の各バルブもミクニ製。
年代:1997年~ 名称:TMW35 対象モデル:GP500レース車
GP500レース用に開発された4気筒・2連装のキャブレター。小型&軽量化を具現化し、無駄を省いたデザインが特徴。ミクニが開発したキャブレターの最終モデルとなった。
電子制御フューエルインジェクション用スロットルボディ編
年代:1997年~ 名称:52EIS 採用モデル:スズキTL1000S
スズキTS1000Sは1997年に登場したモデル。水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ995ccエンジンを搭載。最高出力は135馬力を発揮する。
TS1000Sは二輪車の中では、いち早くフューエルインジェクションを採用した先頭的なモデル。「52EIS」は大排気量のV型エンジン向けに設計された、2連装型のビッグボアスロットルボディ。写真は2003年モデルのSV1000用。
年代:2022年~ 採用モデル:スズキGSX-8S
スズキGSX-8Sは2022年に登場。毎日の移動からツーリングまでの利便性を両立した、軽量で扱いやすい800ccクラスの新型モデルとして開発された。エンジンは水冷4サイクル並列2気筒DOHC 4バルブ775ccで、最高出力は80馬力を発揮。
スズキGSX-8Sに採用の電子制御スロットルボディは、バタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを持たない、シンプルな2連装タイプ。
年代:2017年~ 採用モデル:カワサキZ900RS
カワサキZ1(900スーパー4)を復刻させたかのようなレトロスポーツネイキッドとして、2017年10月の東京モーターショーにて発表され、同年12月から発売開始されたZ900RS。水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ948ccエンジンは111馬力を発揮。
Z900RSに採用の電子制御スロットルボディは、バタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを持たない、コストパフォーマンスに優れたワイヤー操作式の4連装タイプ。
ミクニによれば、ワイヤー操作式よりも、電動モーター操作式は適格な空燃比性能を発揮しやすいのが特徴(とはいえ、両者の走行フィールの違いは素人には判断できないレベル)。そのため性能を追求したレーシーな超高性能モデルには、高額だがハイパフォーマンスな電動モーター操作式を採用する傾向にある。
年代:2020年~ 採用モデル:カワサキZ H2 SE
Z H2(ゼット・エイチツー)は2020年から発売されたスーパーネイキッドモデル。エンジンは水冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ998ccを搭載。Zシリーズとしては初めて過給機(スーパーチャージャー)が導入された。2020年に海外向けに電子制御サスペンションを採用した「SE」が発表され、2021年より国内発売を開始。
年代:2016年~ 採用モデル:ヤマハNMAX
欧州や日本で人気の「TMAX」や、欧州向け「XMAX」など、MAXシリーズのスタイルと走りの良さを原付二種スクーターとして具現化したヤマハNMAX。走りの楽しさと燃費・環境性能の両立を高次元で実現した「BLUE CORE」エンジンを、国内モデルとして初搭載。VVA(可変バルブ)機構も標準装備。エンジンは水冷4ストローク単気筒SOHC 4バルブ124cc。
年代:2020年~ 採用モデル:ヤマハYZF-R1M ABS/YZF-R1 ABS
サーキットを征する走行性能を追求したヤマハのスーパースポーツ・フラッグシップモデル「YZF-R1M ABS」と「YZF-R1 ABS」。クロスプレーン型クランクシャフトを採用した、水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ997ccエンジンを搭載。最高出力は200馬力を発揮する。上級モデルの「YZF-R1M ABS」は、オーリンズ社製電子制御サスペンションや、アルミにバフがけを施したタンクやリアアームに加え、カーボン素材の軽量カウルを採用。
スロットルボディの中央部には、コンピューターからの指示によりバタフライバルブ(スロットルバルブ/金色の部分)を動作・開閉するための電動モーターを内蔵。他車用に比べ、大型の電動モーターを採用しているのが特徴だ。
年代:2018年~ 採用モデル:ドゥカティ パニガーレ V4
イタリアの名門であるドゥカティがリリースする「パニガーレ V4」は2018年に登場したスーパースポーツモデル。ドゥカティ独自の「デスモセディチストラダーレ90°」を採用したエンジンは、水冷4ストロークV型(L型)4気筒DOHC 4バルブ1103cc。最高出力は215.5馬力を発揮する。
吸気孔を直下向きにレイアウトした、V型(L型)エンジン用のスロットルボディは、左2気筒・右2気筒に分割。左右にはそれぞれ、コンピューターからの指示によりバタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを内蔵。電動モーターは大型タイプを採用している。
また、空気を吸い込む吸気孔とバタフライバルブ(スロットルバルブ/金色の部分)は、他車のような真円タイプではなく、楕円タイプを採用。これは超高性能なデスモエンジンに合わせ、理想的な吸気効率と、さらなる性能向上を狙ったもの。
年代:2021年~ 採用モデル:スズキ ハヤブサ
2021年に3代目としてフルモデルチェンジされたスズキのスーパースポーツツアラー「ハヤブサ(隼)」。スズキインテリジェントライドシステム (S.I.R.S.)、双方向クイックシフトシステム、エンジンブレーキコントロールシステム、モーショントラックトラクションコントロールシステム、アンチリフトコントロールシステム、パワーモードセレクター等々、あらゆる最新機能を導入。
エンジンは水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ1339ccを搭載。最高出力は188馬力を発揮する。コンピューターからの指令で理想的な量の空気を吸入する4つのバタフライバルブ(スロットルバルブ/金色の部分)は、大型の電動モーターを用い、センター部で動作・開閉するしくみ。