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乗車積載方法違反の可能性
道路交通法第55条第2項には、以下のような規定がある。
「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない」
これを読むと、「ハンドルその他の装置の操作を妨げ」「車両の安定を害し」といったことが明記されており、これらがハンドルに荷物などをかけて走行する行為にも該当する可能性がある。とっさにハンドル操作がしにくくなるし、バイクの重心が傾くなどで安定性が悪くなり、転倒のリスクが大きくなるからだ。
そして、もしこの法規に違反すると「乗車積載方法違反」に問われる可能性がある。また、違反が適用されると、
・違反点数:1点
・反則金:2輪車6000円 原付5000円
を科せられる。
安全運転義務違反の可能性もある
また、「安全運転義務違反」に該当する可能性もある。これは、道路交通法第70条に規定されているもので、以下のような明記がある。
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」
つまり、この規定は、周囲のクルマや歩行者に何らかの害を及ぼすような運転は、違反となって取り締まりの対象になるということだ。ハンドルにレジ袋などの荷物をぶら下げた状態で走行することも、ハンドル操作が確実にできない運転と判断されてしまう可能性があり、安全運転義務違反を科せられることも考えられる。
そして、この場合は、
・違反点数:2点
・反則金:2輪車7000円 原付6000円
となる。
ちなみに、バイクを片手運転した場合も、同じく安全運転義務違反になるだろう。片方のハンドルを握らずに走ることも、安定した走行や確実な操作をできない運転とみなされ、転倒や事故などにより他人に危害を及ぼす危険性があるからだ。
スクーターの足元へ荷物を置いて運転する行為は?
ほかにも、例えば、スクーターの足元に、ちょっとした荷物などを置いて走る光景もたまに見るが、これもバランスが取りづらくて危険なだけでなく、違反行為とされる可能性がある。
このケースでも、適用される可能性があるのは安全運転義務違反。また、道路交通法第55条では、
「車両の運転者は、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させ、又は乗車若しくは積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない(以下略)」
と明記されている。スクーターの足元スペースは、フラットで広いボード状になっているモデルも多いが、荷物を置く場所として設計されていない。そのため、「積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない」という法律に反する。そうみなされた場合、問われるのは乗車積載方法違反で、前述のような違反点数や反則金を科せられる。
また、もし、走行中にバランスを崩し、足元に置いていた荷物を道路上にまき散らしてしまうと、「転落積載物等危険防止措置義務違反」が適用され、
・違反点数:1点
・反則金:2輪車6000円、原付5000円
が科せられる可能性もある。さらに、もし、荷物を散乱したことが原因で死傷事故が起こると、「過失運転致死傷罪」に該当し、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金という重い罪に問われる可能性がある。
前述の通り、バイクは、バランスを取って走らないとスムーズに走れない乗り物で、安全かつ安定した運転にはある程度のスキルも必要だ。だからこそ、思うように走れたときには爽快な気分も味わえるのだが、そのためには、ハンドルはもちろん、アクセルやブレーキなど、運転操作に必要な各パーツは、使いやすく、とっさのときにも対応できるようにしておく必要がある。
荷物などをハンドルにひっかけたり、スクーターの足元に置いて走る行為は、そうしたバイクの繊細な操作を阻害しやすく、場合によっては転倒したり、周囲のクルマや歩行者にも迷惑や被害を及ぼす危険性が高い。法律的にも違反だが、そもそものマナーとしてやらないことが重要だ。
特に、スクーターには、コンビニのレジ袋など、ちょっとした荷物をひっかけることができる専用フック(コンビニフック)が設けられているモデルもある。また、シート下の収納スペースがかなり大容量なタイプも多い。せっかくそうした装備があるのであれば、ぜひ活用し、安全な走行を心掛けて頂きたい。