ヤマハ XSR125はガソリン満タンでどこまでイケる? 東京・日本橋から京都をめざす東海道ガス欠チャレンジ第7弾![2日目]

ヤマハ XSR125を駆って、東京・日本橋から京都をめざし、満タンきっちり使い切りの東海道ワンウェイ・アタックに挑む。箱根の超有名激坂「ハードライス・ダウンヒル」を抜けて駿河へ!

REPORT●AFO RIDER タカハシ(AFO RIDER Takahashi)
PHOTO●高橋克也(KATSUYA Takahashi)
ILLUSTRATION●高橋克也(KATSUYA Takahashi)

雨の箱根へ

AFORIDER ヤマハ XSR125 東海道 ガス欠 高橋克也
朝になって雨が降り出した。装備を整え直して宿を発つ。

目をさましたのは東海道からだいぶ外れた伊勢原市内だ。コロナのバカ騒ぎが終わってインバウンド客が増えてから、安上がりな東海道沿いの宿は激減した。旅館業の儲けにさほど貢献しない低予算AFOライダー・タカハシが遠い町に追いやられたとしても、それが社会情勢というものだから無理もない。
まずは国道256号を西に進み、秦野市から海沿いの国道1号へ南下、約15kmのムダ足をふんで東海道に戻った。西へ進んで小田原へ。小田原城は遅い桜と花見客にまみれて華やいでいた。

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箱根の登り口にあたる小田原城。堀端からはもう飽きるほど眺めたが、まだ足を踏み入れたことはない。

ガチガチの雨装備で走り出したものの、雨は強くなく、時おり晴れ間も覗いている。とはいえ山の天気は不安定だ。箱根でいきなりドシャられると面倒だから、雨装備のままで国道1号をたどる。一気に走り抜ければ、小田原から芦ノ湖までは、あっという間だ。

AFORIDER ヤマハ XSR125 東海道 ガス欠 高橋克也 イラスト
江戸時代に歌川広重が描いた「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」はこんな感じ。山のデフォルメのやりすぎ感がハンパない名作だ。

XSR125は、細かいセッティングやライディングポジションはアレンジされているものの、兄弟車のMT125あたりとだいたい同じ仕様で作られている。が、トラクションコントロールを装備していない点は大きな違いだ。
つまり不用意にスロットルをガバ開けすれば、滑る路面でとっちらかる可能性だってゼロではないが、道交法でガチガチに縛り付けられた公道でそこまで飛ばしまくるのは、ヘルメット内に格納された臓器がだいぶイカれた奴くらいだろう。そもそも125クラスの4ストエンジンなら、多少スロットルワークが雑になっても、恐怖の激トルクが発生する心配はない。行儀よくおとなしく、可愛いイイ子で公道を走ってるぶんには、ABSとは違い、トラコンは(あっても別にいいけど)とくに必須の機能というほどでもない。路面はフルウエットでも「安全運転のためなら死んでもいい」という不退転の決意で日々運転に励んでいるタカハシならば、ぜんぜん普通にワインディングを楽しめた。

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雨のワインディング・ロードを芦ノ湖に向かう。
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芦ノ湖はどんよりと厚い雲に覆われ、灰色の湖面に幽霊船だか遊覧船だかがぷかぷか浮かんでいた。
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箱根関所の巨大看板。かっこいいけど、ちょっとピカピカしすぎ。歴史の重みが感じられないので、軽くエイジング加工しとくといいのでは。

せっかくなので、箱根関所で記念撮影。未熟なカメラマンなら、こんなものは一文の価値もないクソ平凡なクソ写真だと切り捨てることだろう。だが、じつは観光記念写真としては、たいへんよくできた名作だ。アマチュアカメラマン諸君がツーリング先で写真を撮るときには、タカハシ直伝の、この秘技をぜひ参考にしてほしい。そのポイントは、できるだけデカデカ場所の名を写し込むことだ。どこで何を撮ったか一目瞭然なので、あとで見たとき何の写真かわからないという残念な事態だけは避けられる。

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箱根関(はこねのせき)は、1619年(元和元年)に江戸幕府が作った関所。当たり前だが明治になったら廃止された。2007年に復元工事を終えて一般公開され、今は人気の観光スポットとなっている。

箱根旧街道は今も激坂

芦ノ湖を後にして、西の三島市へと向かった。空模様はゆらゆらと行き来して、日が差したかと思うとまた曇り、ときには冷たいものがぱらつく。箱根を降りる前にちょっと寄り道して「こわめし坂」に立ち寄ることにした。箱根旧東海道の中でも、とりわけ激坂として名高いセクションだ。

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西の空はしだいに雲が切れ、晴れ間をのぞかせはじめた。

こわめし坂は、漢字では「強飯」坂と書く。ふつうの炊飯ではなく、蒸して作った硬いごはんをいう。一説には、この坂があまりにもキツかったため、登ってゆく旅人が背中に担いでいた米が、汗と熱でこわめしになったというのが、地名の由来だともいう。

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今は舗装されているが、それでも重装備で登るのはキツい。箱根をゆく現代の車道の勾配は最大12%。対して江戸期の旧街道の勾配は平均20%、最大40%もの激坂だったといわれる。
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かつて東海道を旅したタカハシが登ったこわめし坂付近のリアル旧街道。何度も道を見失いながら藪をかき分けてムリヤリ進んだ。よく遭難しなかったものだ。ネットの地図を丹念に探してみたが、草に埋もれて消えたのか、整備されたのか、今ではもうこんな道はどこにも見当たらなかった。

雨上がりの駿河湾めぐり

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箱根から三島へ降りる国道1号きっての絶景ワインディング。眺めはいいが、法定速度いっぱいのスピードで走っていてもビタビタ背後に張り付くせっかちなクルマが多く、あおり倒される。ミラーをガン見しつついちいち路肩に寄せて道を譲りまくるハメになる。
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三島市と沼津市にはさまれた駿東郡内、柿田川公園付近。フューエルメーターは減3、残3目盛りを記録した。トリップは165.0kmだ。

沼津市をこえたあたりで、フューエルメーターを撮影。いちおうここで残りは3目盛りとなった。
早くも日暮れが迫り、太陽が黄色くなってくる。のんびりしてはいられない。手持ちのパンをひとつ、ペットボトルの水で胃に流し込んで昼メシがわりにすると、西を目指してまたスロットルを開いた。

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沼津市内で富士と記念撮影。白い雪をいただく霊峰に日の丸っぽい赤いタンクが鮮やかに映え、生まれてこのかた、ほぼ持ち合わせてなかったハズの愛国心なんかがめらめら燃え上がってきたりこなかったり。
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まもなく落日をむかえる富士由比バイパス。

富士由比バイパスで駿河湾をぐるりとまわる。混雑する静岡市街を避けて南にそれると、国道150号でさらに西へ。すっかり陽が落ちてから藤枝市の宿にたどりついた。

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宿へ入らんとするタカハシ。まるで極悪ライダーが誰かをコ●シにきたようなおどろおどろしいビジュアルだが、実際には、極貧ライダーが惰眠をむさぼりにきただけだ。

宿のパーキングにバイクを停めようと車体を傾けると、それまで残2目盛り表示だったフューエルメーターが、いきなりガス欠寸前のピコピコ点滅でアラートを発し始めた。それはいいとして、トリップメーターまで0kmになったのには驚いた。
これは、ピコピコが始まるとトリップメータが自動的に「TRIP F」モードに切り替わり、ピコピコ地点からの走行距離をカウントしてライダーに給油を促す親切機能だ。でもこれ、なんぼなんでもちょっとピコピコアラートが早すぎないか? まだめっちゃガス残ってるのに。もうちょっとフューエルメーターの精度を上げたほうがいいような気もするが、これもガソリンが減ったらすぐガソスタに駆け込めばすむ普通のライダーにとっては、まあどうだっていいことなのだろう。

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あいかわらずフラフラしすぎのフューエルメーター。走り終わりの記録は、いちおう残2目盛りとした。日本橋からの走行距離は248.8km、本日の走行距離166.2km。
AFORIDER ヤマハ XSR125 東海道 ガス欠 高橋克也 イラストマップ
【MAP】東海道ガス欠チャレンジ#7 ヤマハXSR125 [日本橋~藤枝]

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AFO RIDER タカハシ

イラストレーター、カメラマン、ライター、ムービークリエイターなど、世間をあざむく幾つもの顔をもつが…