サーキットに軸足を移してから4年目の大改良、CBR1000RR-Rは乗り手を選ぶ崇高な存在だ

2020年のフルモデルチェンジの際、車名にもう一つ「R」を追加したCBR1000RR-Rファイアーブレード。4年目となる今年はエンジン各部の熟成を図って中回転域の加速性能を向上させたり、メインフレームの剛性バランスを見直すなど、大掛かりなマイナーチェンジを実施した。街中からタイトな峠道、そして高速道路において、そのパフォーマンスの片鱗に触れてみた。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ディテール解説

SPの前後ショックは、電子制御式のオーリンズ製φ43mm NPXとTTX36(どちらもスマートEC3.0)の組み合わせで、メーター内で細かくセッティングが可能だ。ブレーキキャリパーは前後ともブレンボで、フロントには最新のSTYLEMA Rを採用。スポーツモデル専用ABSは、リヤをキャンセルするレースモードが新たに追加された。
スイングアームはアルミプレス製で、部位ごとに肉厚を変えている。アンダーカウルは新設計で、後端に段差を設けることで整流効果を高め、タイヤの接地感を向上させている。
リヤサスはプロリンクで、ショック上部のマウントはブラケットを介してクランクケース背面としている。2024年モデルのSPはオーリンズのスマートECシステムが第3世代となり、ライダーの体重をメーターに入力することで、前後の推奨プリロード値が表示される機能を追加した。
999cc(φ81×48.5mm)水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、令和2年排ガス規制に適合しつつ最高出力218psを発生。2024年モデルではクランクケースやクランクシャフト、コンロッドを新設計とし、エンジン単体で720gもの軽量化を達成。アルミ鍛造ピストンは頭部の形状を変更し、圧縮比を13.4から13.6:1に引き上げている。また、吸排気カムはタイミングおよびリフト量を変更。吸気ポートの形状やミッションのギヤ比の変更など、改良点は多岐にわたる。
純正アクセサリーでクイックシフター(2万6950円)を用意。なお、SPには標準装備されており、シフトロッドにストロークセンサーが確認できる。
チタン製のサイレンサーおよび排気バルブはアクラポヴィッチ社と共同開発。エキパイは入口を長円断面とし、排気ポートからの断面形状をスムーズに変化させることで排気効率を高めている。
コックピットは基本的に変更なし。ボッシュ製6軸IMUからの情報に基づき減衰特性を電子制御する、ショーワ(日立アステモ)製のロッド式ステアリングダンパーを装備する。減衰特性レベルは3段階から選択可能だ。
スマートキーを採用しており、メインスイッチはメーターの左下に設けられている。ハンドルロックもここで操作可能だ。
5インチフルカラーTFT液晶メーターを採用。2024年モデルでは、水温が上がるまでレッドゾーンを低く制限した「ロー・テンプ・モード」(写真)と、推奨プリロード値を表示する「デジタル・スプリング・プリロード・ガイド」(SPのみ)などの機能を追加した。
ライダーシートはボルト2本を緩めることで取り外すことができる。その下にはリチウムイオンバッテリーがあり、取扱説明書には推奨の充電器を使用するように明記されている。
タンデムシートはキーロックの解除で取り外し可能で、裏面の左右にはヘルメットホルダーを設置。シートの下には携帯工具と書類が収納されている。なお、純正アクセサリーでETC車載器キットは用意されていない。
LEDデュアルヘッドライトは、ハイビーム/ロービームとも常時左右点灯する。ウイングレットは、より小さな翼面積で効果的にダウンフォースを発生させる形状へ。センターのラムエアダクトは、入口の左右および上辺に設けたリブ状のタービュレーターにより、走行風の導入効率を高めている。
コンパクトながら十分な光量を確保したLEDテールランプ。前後ウインカーもLEDで、便利なオートキャンセル機能やエマージェンシーストップシグナルを搭載。

ホンダ CBR1000RR-R FIREBLADE SP 主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BL-SC82
全長(mm) 2,105
全幅(mm) 750
全高(mm) 1,140
軸距(mm) 1,455
最低地上高(mm) 130
シート高(mm) 830
車両重量(kg) 201
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 22.0(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス) 15.4(クラス 3-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 3.8
エンジン型式 SC82E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量(cm³) 999
内径×行程(mm) 81.0×48.5
圧縮比 13.6:1
最高出力(kW [PS] /rpm) 160[218]/14,000
最大トルク(N・m [kgf・m] /rpm) 113[11.5]/12,000
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-DSFI)〉
使用燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 16
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
 1速 2.461
 2速 1.947
 3速 1.650
 4速 1.454
 5速 1.291
 6速 1.160
減速比(1次/2次) 1.687/2.750
キャスター角(度) 24゜07′
トレール量(mm) 102
タイヤ
 前 120/70ZR17M/C(58W)
 後 200/55ZR17M/C(78W)
ブレーキ形式
 前 油圧式ダブルディスク
 後 油圧式ディスク
懸架方式
 前 テレスコピック式(倒立サス/ÖHLINS φ43 NPXSmart-EC 3.0)
 後 スイングアーム式(プロリンク/ÖHLINS TTX36Smart-EC 3.0)
フレーム形式 ダイヤモンド

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…