目次
2016年にヤマハからトリシティ125/155が発売された時の衝撃は今も変わらない。フロント2輪・リヤ1輪によるLMW(リーニング・マルチ・ホイール)技術により、抜群の安定性と独創的なスタイルを実現していた。そのトリシティが2023年にフルモデルチェンジして2代目へ進化を遂げた。モトチャンプ本誌ではすでに紹介しているが、動画を無料で公開しているユーチューブチャンネル「モトチャンプTV」でも新たに試乗インプレッションを公開している。
今回も例によって「モトチャンプTV」にアップされた「【試乗ヤマハ・トリシティ155】進化したフロント二輪の実力、やっぱり凄かった!」という回をダイジェストにまとめている。今回取り上げたのはトリシティ155だけだが、どのように進化しているのだろう。
この回でも編集長のチャボが司会を務め、解説と試乗をジャーナリストのケニー佐川が担当している。毎度オープニングで新たな境地を見せてくれるケニー佐川だが、今回も振り切った姿を披露しているので、ぜひ動画もご覧いただきたい。
新型トリシティ155のポイント
新型となったトリシティ155の大きなポイントが、まずエンジン。最新BLUE COREエンジンを採用してあり、鍛造ピストンの採用やシリンダーヘッドの見直しで圧縮比を10.5:1から11.6:1へと高めている。さらに吸気バルブを大型化してあり優れたレスポンスとパワー感が得られるようになった。だが、最高出力自体は15ps/8000rpmで従来型から変わっていない。さらにSMG(スマート・モーター・ジェネレーター)を採用したことで静かなエンジンスタートを可能としている。さらにSMGを採用したことでアイドリングストップも盛り込まれた。
今回から新たにN-NAXなどと同じスマートキーが採用された。キーを抜き差しする手間がなくなり、現代らしいスマートな乗降性を実現している。
もう一つ大きなポイントがフロント2輪となるLMWへ、4輪ではお馴染みのアッカーマンジオメトリーが採用されたこと。簡単に紹介すると、フロントタイヤが傾いた時に従来型は内外輪とも同じ傾き具合だったところ、外輪より内輪の向きを大きくして曲がりやすくしているのだ。ヤマハでもトリシティ300には採用済みだった技術で、低速時の旋回性が大きく向上している。
フレームも大きく変更され、より剛性を高めるとともにホイールベースを60mm延長している。これにより従来から採用しているフラットフロアの長さを20mm延長できた。従来型だと足の置き場を変えるのが難しいサイズだったが、今回からは足の自由度が高まった。同時にリヤサスペンションも延長されている。
最新モデルらしく、メーターの情報をスマホへ連動させることが可能になった。専用アプリである「Y-CONNECT」をスマホにダウンロードすれば、マシンの情報をスマホ画面に表示させることができるのだ。
シート下スペースは23.5リットルを確保しているが、今回新たに155だけLED照明が標準装備された。チャボとしては125にも装備して欲しかったようだが、ここはやはり差別化が図られている。
フロントが大きく感じるトリシティだからパッと見た印象では足つき性が悪そうに思える。ケニー佐川が179cm、チャボも175cmあるため小柄なライダーの参考にはなりづらいが、それでも足つき性は良好な部類。シート前方が絞られた形状であることも関係しているようで、フラットフロアの採用とともにスクーターらしい日常性を備えているといえる。また男性二人がタンデムしたとしても窮屈さはあまり感じない。シート形状やサイズがタンデムにも適しているといえるところだ。
試乗インプレッション!
では、ケニー佐川がミニサーキットを試乗した様子をお伝えしよう。まずテスト日は気温が低くタイヤが温まるまでは本来なら慎重に走り出すところだが、トリシティ155はいきなり普通に走行することができる。やはりフロント2輪の安定感は抜群で、一般的な2輪車と大きく異なる。さらに周回を重ねマシンをフルバンクさせていくも、マシンは破綻することなく何事もなかったかのようにコーナーをクリアする。
抜群の安定性を誇るトリシティだから、コーナリング中に強めのブレーキングを行なっても破綻することのない懐の深さを備えている。実際にタイトコーナーでマシンをバンクさせながらフロントブレーキを強めに掛けているが、妙な挙動を示すこともなくスムーズにコーナリングをこなしてしまう。また直線時にフルブレーキングを試みABSを介入させてみても結果は同じ。2輪車でABSを効かせるとどうしても車体が不安定になるものだしライダーに恐怖感を覚えさせてしまうが、トリシティ155にはそのような不安が一切ない。
アッカーマンジオメトリーを採用したことによる違いは特にタイトコーナーで感じられる。従来型だとどうしてもアンダーステアのようにコーナーの外へ膨らむイメージがあるのだが、新型は鋭い旋回性を披露してくれる。車両重量が172kgあるため、もちろん軽快な動きとは呼び難い。だが、ターンインが非常に楽に感じられ、より小回りの効くサスペンションになっている。さらにコーナーであえて縁石に乗り上げてみているが、その際の衝撃も最小限でライダーにショックが伝わりにくい。縁石に乗り上げて車体が不安定になることなく、スマートに走り抜けてしまうのだ。加えて従来型に感じられた「バタバタ感」がなくなり高級感ある走りとなっている。
最後にトリシティ155 ABSの価格は56万6500円(税込)。安価というわけではないが、クラスを超えた安定感と高級感さえ漂う走りに相応しい設定だといえる。125は49万5000円(税込)だが、普通のスクーターとは別の乗り物と呼べる存在なので、チャボはもっと高くてもいいんじゃない?というほど。ぜひ乗っていただきたいマシンなのだ。