コレ、249ccのバイクです。|往年のレーシングマシンをイメージさせるスタイリングがライダーを魅了するF.Bモンディアル・パガーニ300

F.Bモンディアルはイタリアの老舗メーカーです。しかし倒産などもあって日本での知名度は高くありません。というより、ほとんど知られていないメーカーのひとつです。ですが1940年代から50年代にかけて世界GP125㏄クラスで優勝するなど華々しい活躍を見せました。現在は小排気量モデルを中心に数機種が生産されていて、日本国内にも正規輸入元である(株)アイビーエスを通じて、北海道から九州までのディーラーで販売されています。今回試乗したPagani1948(Sport Classic 300)は、1949年にベルギーのオステンドで開催された最初の125cc世界選手権で優勝したNello Pganiの名を冠したモデルです。

写真:徳永茂
協力:(株)アイビーエス https://fbmondial.jp/index.html
金城IVY RACING https://ivyracing.jp/

レーシーな雰囲気を味わいながらストリートライディングできるのが楽しい

F.B.モンディアル・スポーツクラシック300(Pagani1948)……580,800円(消費税込)

カウルを身にまとったフォルムは実にスポーティでかっこいい。しかもこのスポーツスタイリングは現代的なものではなく、どことなく80年代のカフェレーサーのようなデザインになっています。個人的な話で恐縮ですが、1980年式の125㏄シングルスポーツバイクをカフェレーサー風にカスタムしたモデルを所有している僕としては、このF.Bモンディアル パガーニ300を目の前にしたとき、初対面にもかかわらず親近感を覚えたのです。
そんなパガーニ300ですが、ヘッドライトはハロゲンタイプとしているし、ホイールもワイヤースポーク式です。しかし単に懐古趣味に走っているわけじゃありません。リアにはインナーフェンダーとスイングアームマウントのナンバープレートホルダーを装備。丸型の単眼メーターも液晶のフルデジタルを採用しています。このように往年のカフェレーサーを彷彿とさせながらも、現代技術を随所に導入して、今日的なスポーツモデルへと仕上げているのです。
低い位置にセットされたセパハンにより、上体が前傾するスポーティなポジションとなる。ステップ位置とのバランスはいい
シート高は804㎜で、このクラスのスポーツバイクとしては標準的。平均的な体格のライダーなら両足が着けられる
スリムでコンパクトなボディは軽量でもあるので取り回しはラク
足つき性は悪くないが、セミアップマフラーが右足に干渉して少しばかり煩わしい
300と付いていますが、エンジン排気量は249㏄、つまり軽二輪モデルなので車検の必要はありません。250と考えればボディはコンパクトな部類です。車重も153㎏に収められているので、日常的な取り回しはまったく問題ありません。ただしセパハンを装備しているためステアリングをフルロック状態まで持っていくとタンクとの間に手が挟まれてしまうのが気になりました。またハンドル切れ角も大きくありません。
シングルシーターに仕立てられたシートに跨り、セパハンに手を添えると、コンパクトボディながら上体がわずかに前傾し、なかなか好戦的なポジションになります。しかし全体に窮屈なところはなく、街中を走るのに不都合な点はありませんでした。ひとつ気になったのは、右側に取り回されたセミアップの2本出しマフラーが足を下ろしたときに干渉することです。小柄なライダーだと足つきのときにちょっとあせるかもしれません。ちなみに、足つき性に関しては問題ないと感じました。

振動は多めだが低中速でピックアップの良いシングルエンジン

搭載しているエンジンは249㏄水冷SOHC4バルブ単気筒で、最高出力17.0 kW / 8,500 rpm、最大トルク22.5 Nm / 6,500 rpmというスペック。カテゴリー的にライバルとなるスズキ・ジグサーSF250と比較して最高出力はやや劣っています。といってもその差はわずかなので性能面ではほぼ互角といえます。ただし全体に中低速寄りになっていて、結果的にそれがストリートユースでは奏功することになります。
セルで始動すると、セミアップマフラーからやや大きめのシングルサウンドを放ちます。早朝の暖機にはちょっと気を遣いそうです。
スタートして交通の流れに乗るため加速していくと、忙しない感じでエンジンは吹け上がり、あまり引っ張らずに3速に入れたあたりで50㎞/hに達しました。細かな振動がありエンジンの回り方もややガサツな感じでスムーズさに欠けますが、低回転域からしっかりトルクが出ているので、扱いにくさというものはありません。また中回転域である5000回転前後ではレスポンスが良くメリハリのあるパワーフィーリングを見せてくれます。高回転まで無理やり引っ張るよりも、低中回転を使った走りのほうが、このエンジンの良さというか特色が発揮できると感じます。
いずれにしても、市街地を中心としたストリートで走りを楽しむには十分な性能で、タイトな峠道が多い日本のワインディングにも合っているんじゃないかと思いました。もちろん高速道路の巡航も問題なくこなすでしょうが、振動面でいえばあまり快適性は望めないかもしれません。

必要十分な足回りでストリートを軽快に駆ける

クラシカルなカフェレーサースタイルのボディは車重153㎏と軽量なので、不安なく走りだすことができます。低めにセットされたセパレートハンドルのためハンドル切れ角はあまり大きくなく、フルロックさせるとタンクとの間に手が挟まるので、その辺りは少しばかり気を付けないといけませんが、取り回しに関しては非常にいいと思いました。
走行性に関しても、とにかく軽くて向きを変えやすいと感じました。市街地では交差点などの右左折が頻繁なのですが、向きを90度変えるそんな動作が軽快にできます。今回の試乗ではワインディング走行をしていませんが、パガーニ300ならタイトなワインディングも苦にしないのは確実です。
サスペンションはフロントにΦ40㎜倒立フォーク、リアはサブタンク付き2本ショックの組み合わせで、とくに高性能というわけじゃありませんが、ギャップを通過した際にバタついてしまうようなことはありません。前後17インチのワイヤースポークホイールも衝撃を緩和する役割を果たしていると思います。さらにブレーキもラジアルマウントキャリパー装備のΦ280㎜フロントシングルディスク、そしてΦ220㎜リアシングルディスクともに制動力に関しては不足はありません。いずれにしても、一般道を走行するにはまったく問題ない足回りです。街中の移動から休日のツーリングまで気負わずに付き合える、そしてカフェスタイルを手軽に楽しめる、そんなバイクだと感じました。

ディテール解説

トップブリッジより下部にマウントされたセパレートハンドルがレーシーさを引き立てている
クラシカルなスタイルに合わせて丸型の単眼メーターを採用。だが現代的にフルデジタルとなっている
左スイッチにはヘッドライト上下切り替え、ホーン、ウインカーの各スイッチが並ぶ
右スイッチにはセル、キルの各スイッチが配置
カウルにマウントされた異型ヘッドライトが個性的。ランプはハロゲンを使用
シートカウル下にビルトインされたテールランプ
レーシーな形状の燃料タンクは容量9.5L。タンクキャップはエアプレーンタイプだ
シートカウル装備でシングルシーター風に表現。カウルは着脱式で、取り外せばタンデム仕様になる
ショートストロークながら低中速特性に優れた水冷SOHC4バルブ単気筒エンジン。車名は300だが排気量は249㏄
車体右側に取り回されたマフラーは、シングルながら2本出しとしている。セミアップタイプでレーシーな雰囲気を作り出している
Φ40㎜倒立フロントフォークを装備。ワイヤースポークホイールには100/80-17サイズのスポーツタイヤを装着
ピギーバック2本ショック式のリアサスはプリロード無段階調整。タイヤは130/70-17サイズ
徹底した軽量化が図られたディスクローターはΦ280㎜。対向4ピストンのラジアルマウントキャリパーを装備する。ABS装備

主要諸元

タイプ単気筒 / 4ストローク / SOHC / 4バルブ
排気量249 cc
ボア(内径)×ストローク(行程)77 × 53.6 mm
圧縮比11.5 : 1
最高出力17.0 kW / 8,500 rpm
最大トルク22.5 Nm / 6,500 rpm
潤滑方式ウェットサンプ
冷却システム水冷
吸気システムEFI
始動方式エレクトリックスターター
変速機形式6速リターン
燃料タンク9.5 L
リアブレーキにはΦ220㎜ディスクローターを採用
フロントサスペンション 40mm 倒立フォーク-97mm
リアサスペンションダブルショックアブソーバー(120mm)
車両重量153 kg 
乗車定員2
フロントブレーキ4ピストンラジアルキャリパー、280mm、ABS
リアブレーキ1ピストンフローティングキャリパー、220mm、ABS
フロントホイール2.50 x 17” 
リアホイール3.00 x 17” 
フロントタイヤ100/80 x 17” 
リアタイヤ130/70 x 17” 
カラーWHITE/RED
BLUE/SILVER
全長2,009 mm 
全幅800 mm 
全高1,146 mm 
ホイールベース1,360 mm 
最低地上高130 mm 
シート高804 mm

キーワードで検索する

著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…