【初心者対応】 バイクの「スペック表」から何が分かる? まず見るべき”基本7項目”とは?

カタログやWEBサイトでチェックできる「スペック(主要諸元)表」。エンジンや走りの性能、燃費はもちろん、車体の大きさや足着き性の善し悪しなど、そのバイクに関していろんなことが分かる表なのだが、項目はかなり多い。そのため、初心者などには、どこを見ればいいのか分からない人も多いだろう。そこで、ここでは、まず見るべき主要7項目をピックアップして解説する。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●写真AC、本田技研工業、平塚直樹、山田俊輔

*写真はイメージです

車両サイズ

まずは、車両サイズ。これは、バイクの大きさを数値化したもので、「全長(ぜんちょう)」「全幅(ぜんぷく)」「全高(ぜんこう)」の3つを見れば分かる。

なお、それぞれの意味は以下の通り。

全長=「タイヤも含むバイクの先端から最後尾までの長さ」
全幅=「車体の幅が最も広い部分の長さ(ミラーを除く)」
全高=「地面から車体の一番高いところまでの長さ(保安部品/ミラーを除く)」

なお、これらの数値は、基本的にミリ(mm)単位で表記されている。また、車両サイズにミラーを含めないことが一般的だ。

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車体サイズの例(ホンダ・CBR650R E-クラッチの場合)

シート高

シートの最も低い場所から地面までの長さが「シート高」だ。ライダーが乗車した際、足つき性の参考にできる数値だといえる。ただし、この数値はあくまで設計上のもの。実際には、乗車するライダーの体重などによりサスペンションの沈み込み量が変わるため、数値は変わってくる。

また、足着き性の善し悪しには、ほかにも、シートの形状や車体構造なども影響してくる。たとえば、シート高の数値が高めでも、シート形状が絞り込まれているなどで、意外に足を着きやすいといったケースだ。

そのため、シート高はあくまで参考値として考えた方がいいだろう。厳密には、実車にまたがってみることをオススメする。

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シート高は足着き性の参考になる

車両重量

バイク全体の重さを測った数値が「車両重量」だ。メーカーによっては「装備重量」という表記をする場合もあるが、基本的に国内4メーカーでは同じ意味で、ガソリンやオイル、冷却水、バッテリー液なども含む総重量を意味する。つまり、すぐに走行可能な状態にあるバイクの重さということだ。

余談だが、その昔は、ガソリンやオイルなど液体類などを除いた「乾燥重量」という重さで表記されていた時代もあった。そのため、当時のスペックでは、実際に走行する場合の重さよりも軽い数値だったことが一般的だった。

対して、現在の車両重量(=装備重量)の方が、現実に走行するバイクの重さにとても近い数値だといえる。そのため、スペックの数値をみれば、たとえば、駐車場などで押し歩きする際のやりやすさなどの参考になるといえる。

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車両重量は、押し歩き時のやりやすさなどの参考にもなる

エンジンの種類

エンジンの種類は、そのバイクのエンジンが、どんな仕組みや形式を採用しているのかを示したもの。ホンダやカワサキは「エンジン種類」、ヤマハは「原動機種類」、スズキは「エンジン型式/弁方式」といった項目にしているが、基本的に同じだ。

たとえば、ホンダ車の場合、

CBR650Rは「水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒」
GB350は「空冷4ストロークOHC単気筒」
CBR250RRは「水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒」

といった表記になっている。これらのうち、「水冷」や「空冷」はエンジンの冷却方式で、上記例ではCBR650RとCBR250RRは水冷エンジン、GB350は空冷エンジンを搭載していることになる。

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CBR650R E-クラッチは水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒を搭載
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GB350シリーズは、空冷4ストロークOHC単気筒を搭載(写真はGB350C)
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CBR250RRは水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒を搭載

また、「4ストローク」とは、エンジンの燃焼サイクルを意味し、現在、国産バイクのほとんどが4ストローク(4サイクルとも呼ぶ)を採用する。

DOHCやOHCは、吸排気弁機構のことで、DOHCは「Double Over Head Camshaft(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)」の略。OHCは「Over Head Camshaft(オーバー・ヘッド・カムシャフト)」の略。

さらに、CBR650RやCBR250RRにある「4バルブ」は、吸排気弁となるバルブの数だ。いずれも、1気筒あたり吸気バルブが2つ、排気バルブが2つの計4つのバルブがあるという意味だ。

そして「直列4気筒」「単気筒」「直列2気筒」といった表示。これらは、エンジン気筒数と、複数の気筒を持つエンジンの場合は「直列」などのように、気筒の配列形式も表示している。

ちなみに、DOHC4バルブの4気筒や2気筒を採用するCBR650RやCBR250RRは、高回転域での燃焼効率や作動性などがいいことで、より高いパワーの発生を狙ったエンジン形式であることが分かる。

対して、OHC単気筒を採用するGB350は、低い回転域でのドコドコ感など、シングルエンジンならではの鼓動を味わえるエンジンフィールを重視した仕様であるといえる。

最高出力・最大トルク

最高出力は、ざっくりいえば「そのエンジンは、最大限でどのくらいの力が出せるか」を現したもの。いわば「馬力」のことだ。たとえば、CBR650Rの場合、「70kW[95PS]/12,000rpm」といった表示となる。

kW(キロワット)は、馬力計算の元になる仕事率の国際単位で、現在世界中で使用されるもの。PS(ピーエス)は、日本やヨーロッパなどで使用されるメートル法に基づく馬力の単位。日本では、昔からおなじみの単位のため、日本メーカーでは、基本的にkWとPSの両方を表示している。

なお、rpmは、エンジン回転数(1分間のクランクシャフト回転数)で、この場合は最高出力が何回転で発生しているかを示している。この数値が多ければ多いほど、そのバイクは、高回転域でパワーを発揮する設定になっていることを意味する。

一方、最大トルクは、自転車にたとえると、ペダルを踏み込む最大の力のこと。自転車でいえば、トルクが大きいほど、踏み込む力も大きくなるため、より加速することになる。つまり、大まかにいえば、トルクは加速性能と関係が深く、最大トルクが大きいほど、加速もよくなることになる。

単位は、近年、これも国際基準となっている「N・m(ニュートンメーター)」で現す。だが、国内では、最高出力のPSと同様、kgf-mが今まで一般的だったため、日本メーカーでは基本的にN・mとkgf-mの両方で表示している。

また、rpmは、この場合もエンジン回転数のこと。例えば、同じ250ccバイクでも、

CBR250RRは「25N・m(2.5kgf-m)/10,750rpm」

レブル250は「22N・m(2.2kgf-m)/6,500rpm」

トルク自体はCBR250RRの方がやや大きいが、レブル250は、CBR250RRの約半分の回転数で最大トルクを発揮する。そのぶん、例えば、発進時など、低速走行時のスムーズな加速では、レブル250の方が上だということが分かる。

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レブル250は、低速走行時のスムーズな加速が魅力

燃料タンク容量

燃料タンクにガソリンを満タンに入れた場合、どれくらいの容量が入るのかが「燃料タンク容量」だ。

バイクの場合、燃料タンクはデザイン面での重要度も高いため、車種によってかなり形状が異なる。そのため、見た目よりも容量が多かったり、逆に意外と少ない場合もある。

とくに、ツーリングなどでは「1回の満タン給油で、どれくらいの距離を走れるのか」といった航続距離はとても重要。その参考とするためにも、自分が乗るバイクは、ガソリンがどれくらい入るのかは、ぜひ覚えておきたい。

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愛車の燃料タンク容量はぜひ知っておきたい

燃料消費率

ツーリングなど長距離走行では、「燃費」も重要なファクターとなる。スペック表では「燃料消費率」の項目にあり、ガソリン1リットルでどのくらいの距離を走行できるのかを表示している。

例えば、レブル250では、

国土交通省届出値:定地燃費値=47.0km/L<2名乗車時>
WMTCモード値=33.7km/L<1名乗車時>

といった表記になっている。

ここでいう定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率のこと。また、WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値を指す。より現実に近い数値として、近年使われている数値だ。

これら数値も、先述した自分が乗るバイクの航続距離を知るための参考値となる。たとえば、レブル250の場合、燃料タンク容量は11Lで、WMTCモード値は33.7km/L。これらの数値から、スペック上では、1回の満タン給油における航続距離は

「33.7km/L×11L=370.7km」

となる計算だ。

もちろん、実際の燃費や航続距離は、走行時の天候や道路状況、ライダーの乗り方などによっても変わってくる。そのため、あくまで参考値のひとつとしてだが、全く分からないよりいい。ツーリングなどに行く前に、あらかじめチェックしておくといいだろう。

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ツーリングでは、1回の満タン給油における航続距離を知ることも大切

このように、スペック表は、そのバイクの性格や性能を現したものだ。ここで紹介した7項目を手始めに、ほかの項目の意味も徐々に分かってくれば、自分の愛車や気になるバイクの特性がより分かるようになり、さらにバイクライフを充実できること間違いなしだ。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…