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ガス欠になると意外に大変!
ガス欠とは、ご存じの通り、燃料タンク内のガソリンが空となり、バイクやクルマが走行できなくなる状態のこと。さほど頻繁に起こるイメージはないものの、もし出先で起こるとかなり大変なことになる。
例えば、ガス欠で停まった場所が、運良くガソリンスタンドの前であればいいが、そんなケースはまれ。市街地などで、数百メートル先にある場合でも、いざバイクを押すとなると重く、かなり疲れる。
ましてや、郊外や地方の場合は、そもそもガソリンスタンドの数がかなり減少している。そのため、バイクを押して給油できる場所まで移動するには、相当な距離があり、現実的に不可能なケースもある。
もちろん、最悪は、JAFなどのロードサービスを呼ぶなどの方法もある。だが、郊外などでは、レッカー車などの到着まで何時間も待つ場合もある。そうなると、その日のスケジュールは台なしだ。スムーズなバイク旅を考えると、できるだけガス欠は避ける方がいいといえる。
スペック表で自分のバイクの航続可能距離を知る
では、ガス欠を防ぐにはどうすべきか? まず、知っておきたいのは、自分のバイクの「航続可能距離」。1回のガソリン満タンで、どれくらいの距離を走行できるかを知っておけば、出先で給油するタイミングの参考になるからだ。
航続可能距離を調べる方法は、主に2つある。まずは、カタログやメーカー公式WEBサイトにある愛車のスペック(主要諸元)表を見て、「燃料消費率」と「燃料タンク容量」で算出する方法だ。
ここでいう燃料消費率とは、いわゆる燃費のこと。スペック表の燃料消費率の欄には、「定地燃費値」と「WMTCモード値」が載っているが、より現実に近いといわれているのはWMTCモード値の方なので、この値と燃料タンク容量で計算する。
計算式は以下の通りだ。
燃料消費効率(WMTCモード値)×燃料タンク容量=航続可能距離
たとえば、カワサキの250ccスーパースポーツ「ニンジャZX-25R SE」を例に挙げると、WMTCモード値は18.7km/Lで、燃料タンク容量は15L。
これら数値を上の計算式に当てはめると
18.7km/L×15L=280.5km
つまり、約280.5kmの航続距離があることが分かる。
実際の燃費を計測して計算してみる
ただし、上記はあくまで、スペック上の数値だ。
そもそも、燃費や航続距離は、ライダーがどんなアクセルの使い方をするのかはもちろん、タイヤ空気圧やオイルなど車両の整備状態でも変わってくる。さらに、走行する路面の起伏といった道路状況、晴天か雨かといった天候など、さまざまな要因が影響することも多い。実際の燃費は、WMTCモード値より低いこともあれば、良くなる場合もありうる。
そこで、初心者などが初めて乗るバイクの場合は、まずは、事前にスペック上の数値で参考値として航続距離を算出。
その後は、それを参考に、早めの給油を心掛けながら実際に何度かツーリングを実施。実際に走行した際の燃費をその都度記録しておき、平均燃費や航続距離を出してみるといい。そうすれば、自分の運転スキルや乗り方、路面や天候状況などに応じた燃費や航続距離が分かってくるはずだ。
ちなみに、実際に、カタログ上の数値と自分が乗った時の数値には、どれくらいの差が生じるのだろうか。あくまで例だが、当サイトで以前紹介した、ジャーナリスト中村友彦氏によるホンダ「NX400」の「1000km実走テスト」におけるデータを紹介しよう。
【参考記事】
ルックスはアドベンチャーツアラー。でも本質はオンロード指向のベーシックモデル? ホンダNX400 1000kmガチ試乗【3/3】
ホンダのNX400は、399cc・直列2気筒エンジンを搭載するミドルサイズのツアラーモデル。スペック上の燃費はWMTCモード値28.1km/Lで、燃料タンク容量17Lだ。
これらの数値により、1回の満タン給油で走行できるスペック上の航続距離は
28.1km/L×17L=477.7km
となる。
一方、中村氏が行った実走テストでは、ツーリングや高速道路のみの走行、日常の足など、6回に分けてさまざまなシーンを走行(総走行距離1843.4km)。各給油時に走行距離と給油量、燃費を計算し記録した。
そして、これらにデータにより、今回のテストにおける平均燃費を26.3km/Lと算出。前述の通り、NX400の燃料タンク容量は17L。これら数値により、1回の満タン給油で可能な航続距離は、今回のテストでは
26.3km/L×17L=447.1km
となることが判明した。先に述べた通り、スペック上の計算では、航続可能距離は477.7km。対して、実走は約30kmほど距離が短かったことが分かる。
燃費や航続距離は、まずは、カタログ上で計算した後、実際のツーリングにおける記録と比較してみると面白い。
例えば、どんなアクセルワークや走り方をすれば、実走データがカタログ上のデータに近くなるのかなどの参考になるのだ。
最近は、ガソリン代も高値が続いている。そのため、ガス欠を予防するだけでなく、できるだけ燃費のいい走りをするためにも、燃費や航続距離のデータは十分に役立つのだ。
愛車のリザーブ燃料を知っておく
以上のように、愛車の航続可能距離が分かれば、出先でだいたいの給油タイミングが分かる。だが、それでも、出先の場所によっては、なかなかガソリンスタンドが見つからないなどで、ガソリンが実際にどれくらい燃料タンクのなかに残っているのかが気になる場合もあるだろう。
そんなときのために、知っておきたいのが、自分のバイクの「リザーブ燃料の量」だ。リザーブとは予備という意味。つまり、メイン燃料が空になった時のための予備燃料を意味する。
リザーブ燃料の量は、取り扱い説明書にあるのでチェック可能だ。例えば、ホンダの「CBR650R E-クラッチ」や兄弟車「CB650R E-クラッチ」の場合。
これらモデルでは、燃料計(FUEL)のマークが1つになると、表示が橙色の走行可能距離(RANGE)に切り替わるが、そのときの燃料(リザーブ燃料)残量は約3.0Lとなる。
なお、CBR650R E-クラッチやCB650R E-クラッチでは、カタログ上の燃費はWMTCモード値21.3km/L。そこで、リザーブになった場合、計算上の走行可能距離は
21.3km/L×3.0L=63.9km/L
となる。つまり、燃料計のメモリが1つになったら、約63.9km/Lくらいは走行できそうだということ。そして、こうしたリザーブになったときの燃料残量や航続距離も、できればツーリングに出かける前に調べておくと、いざというときの参考となる。
もちろん、CBR650R E-クラッチやCB650R E-クラッチでは、前述の通り、燃料計(FUEL)のマークが1つになると、走行可能距離(RANGE)を表示する。そのため、それを頼りにすることはできる。だが、そうした機能のないバイクもあるし、機能があっても、事前に知っておくことで、より心に余裕を生みやすくなるといえる。
なお、リザーブ燃料の量は、バイクの種類やメーカーによって違うので注意したい。例えば、同じホンダ車で、同様のスタイルのバイクでも、
レブル250は、燃料計のマークが1つ(E)だけ点滅したときの燃料残量は約2.2L
レブル1100は、燃料計のマークが1つ(E)だけ点滅したときの燃料残量は約4.0L
となっている。そのため、調べる場合は、各バイク用の取り扱い説明書などを確認することをおすすめする。また、実際の残量は、そのときの状況などによっても変わるため、あまり過信せずに、早めに給油することも重要だ。
事前に行き先のガススタの位置などを確認など
ガス欠を防ぐ方法としては、ほかにも、可能であれば、目的地や出先にあるガソリンスタンドの位置や営業状況を確認しておくといい。
とくに、郊外のガソリンスタンドでは、定休日があるところも多く、休日に営業していないケースもある。また、古い情報を信じて行ってみたら「廃業で閉店していた」ということもある。いざ給油をしようとしたら、「ガソリンスタンドが開いていない」なんてことも多々あるので、十分に注意しよう。
いずれにしろ、ガス欠を気にして走っていると、集中力を欠き危ないし、十分にバイク旅を楽しめないものだ。くれぐれも、出先では、早め早めの給油を心掛け、安心・快適なツーリングを満喫しよう。