足まわりを自分好みの仕様にカスタムしたくなる、カワサキ・ニンジャ400 1000kmガチ試乗【3/3】

約1200kmを走ってかなりの好感触を抱いたものの、気になる点が無かったわけではない。とはいえ、ライポジや足まわりなどに手を加えて自分好みのキャラクターが構築できれば、このバイクは長く付き合える相棒になってくれそうだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

カワサキ・ニンジャ400……770.000円

現行ニンジャ400の167kgという装備重量は、カワサキの歴代水冷400ccパラレルツインシリーズで最軽量。ご先祖様の数字は、1986年型GPZ400S:190kg、1994年型EX-4:198kg、2011年型ニンジャ400R:203kg、2014年型ニンジャ400:209kgだった。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg) ★★★★☆

ライディングポジションはスポーツツアラー的で、同じ排気量で運動性重視の感が強いZX-4Rと比較すると、ハンドルグリップ位置は高くて近く、着座位置は低い。だから街乗りやロングランに最適……と言いたいところだが、体格が大柄な筆者は下半身にタイトさを感じたので、自分がこのバイクのオーナーになったら、座面高が785→815mmに上がる純正アクセサリーパーツのハイシート(価格は1万8480円)を装着すると思う。

下半身のタイトさはさておき、足つき性は非常に良好で、身長160cmのライダーでも両足の1/3~1/2が接地するようだ(170cmのライダーなら両足がベッタリ)。余談だが、市場でライバルとなる400ccクラスのフルカウルスポーツのシート高は、ホンダCBR400Rがニンジャ400と同じ785mm、ヤマハYZF-R3は5mm低い780mmで、KTM RC390は男気溢れる824mm。

タンデムライディング ★★★★☆

前後シート座面の段差が大きいので、何らかの違和感を抱きそうな気がしたものの、タンデムライディングは意外に快適。その印象は、後部座席に座った富樫カメラマン(身長172cm・体重52kg)も同様だった。「まずステップ位置が絶妙なおかげで、加減速にしっかり対応できるし、タンデムベルトはすごく握りやすい。シートのウレタンの適度な硬さも好感触。あえて難点を挙げるなら、シートと車体の固定の甘さが気になったけど、この問題はツメ周辺にウレタンやゴムを入れて“遊び”を減らせば解決するんじゃないかな。もちろんグラブバーがあったらさらに嬉しいけど、予想以上に快適で感心した」

取り回し ★★★★★

近年の400ccフルカウルスポーツの基準で考えれば、取り回しは楽々。基本設計をニンジャ250と共有しているのだから、それはまあ当然なのだが、押し引きでは軽さと小ささとスリムさをしみじみ実感した。なおライバルのCBR400RとYZF-R3のハンドル切れ角・最小回転半径が32度・2.9mであるのに対して、ニンジャ400は35度・2.5m。そしてZX-4Rが35度・2.6m、ニンジャ650が32度・2.8mという事実を考えると、カワサキは取り回しにかなりのこだわりがあるようだ。

ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

パッと見はスーパースポーツ風でも、セパハンのクランプ位置はトップブリッジ上で、ハンドル基部は上方にオフセットしている。バックミラーの視認性は良好で、適正位置にカチッとしたクリックが設定されているので、駐車時などに折りたたむ行為が面倒にならない。スクリーンの防風性能はいまひとつ。メーターは指針式タコメーター+液晶モニターで、TFTメーターの普及が急速に進んでいる昨今の事情を考えると、この構成は逆に新鮮な気がしないでもない。速度の上はオド/トリップ×2で、下には瞬間・平均燃費・航続可能距離を表示。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

シンプルな構成の左右スイッチボックスとグリップラバーは、大昔からカワサキがいろいろなオンロードモデルに採用してきた定番品。振動対策用のバーエンドウェイトはニンジャ250と共通。

アンダー400ccの世界でもブレーキ・クラッチレバーの位置調整ダイヤルを採用することが多いカワサキだが、コストダウンを重視したようで、ニンジャ400/250はナシ(ZX-4Rと25Rはアリ)。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

ガソリンタンクとサイドカバーは並列2気筒車ならではの美点が実感できるスリムさで、第2回目で述べた減速時のフロントまわりの絶妙な接地感は、この部分とハンドルを通して得られた。シートの印象は特に悪くなかったものの、厳密に言うならウレタンは薄くて座面は前下がり。

ステップはスーパースポーツ的なデザインで、バーの上面にラバーは装備しない。ただしスーパースポーツを基準にして考えると、設置場所は前方かつ下方。ヒールプレートはコンパクトだが、ホールド感は至って良好。

積載性 ★★★☆☆

タンデムステップ用ブラケットとテールランプ下部には荷かけフックが備わるが、積載性能は微妙なところ。筆者の私物であるタナックスのダブルデッキシートバッグを装着してみたところ、安定感は良好とは言えなかった。タンデムシート下のスペースは2層構造になっていて、ETCユニットに加えて、ちょっとした小物が収納可能。メインシートの固定はボルトではなく、タンデムシートと同様のキャッチロック式で、取り外し時はタンデムシート下に設置されたワイヤーを引っ張る。

ブレーキ ★★★☆☆

前:φ310mm・後:φ220mmのブレーキディスクはペータルタイプで、キャリパーは前後とも片押し式2ピストン。ニンジャ650の弟分だった先代はフロントにダブルディスクを採用していたので、物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、制動力は必要にして十分という印象だったし、シングルディスクは車重の軽さに貢献しているので、個人的には現状の構成に異論を述べるつもりはない。

サスペンション ★★★☆☆

φ41mm正立式フロントフォーク、リンク式リアサスペンションの動きは至って自然なのだが、峠道でスポーツライディングを楽しんでいるときは、前後共にもう少しダンパーが利いてくれたら……と、感じる場面に何度か遭遇した(調整機構は5段階のリアのプリロードのみ)。ちなみに前後サスを含めて、兄弟車として開発されたニンジャ400/250の足まわりパーツのほとんどが共通で、相違点はタイヤのみ(400:ラジアル、250;バイアス)。

車載工具 ★★☆☆☆

2018年から発売が始まった現行ニンジャ400の車載工具は、当初は豪華な8点だったのだが、残念ながら2022年型以降は、両口スパナ×2(10/12mm・14/17mm)、24mmボックスエンドレンチ、プライヤーの4点を省略。リアショックのプリロード調整用フックレンチ+エクステンションバー、、差し替え式ドライバー、L型六角棒レンチ×2(4mm・5mm)の4点となった。

実測燃費 ★★★★★

普段はネットにアップされた数値(ニンジャ400は25~27km/ℓ近辺という意見が多い)を下回ることが多い当記事の実測燃費だが、今回は自分でもビックリの好燃費をマーク。省エネ走行はしていないので、僕のスロットル操作とよっぽど相性が良かったのだろうか……。タンク容量は14ℓなので、平均燃費から割り出せる航続可能距離は29×14=406km。③④の走行距離が短いのは、一緒にツーリングする仲間とタイミングを合わせたため。残量2.9ℓで点滅する燃料警告灯は、今回は⑤でしか見てない。

2023年までのカワサキは、日本仕様とほぼ同じニンジャ400を世界中で販売していたが、2024年からはエリミネーターの技術を転用する形で、排気量を拡大したニンジャ500(実際の排気量は451cc)を投入。最高出力・最大トルクは、北米仕様が51ps・43Nmで、A2ライセンスが前提の欧州仕様は45.4ps・42.6Nm。

主要諸元

車名:ニンジャ400
型式:8BL-EX400L
全長×全幅×全高:1990mm×710mm×1120mm
軸間距離:1370mm
最低地上高:140mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.7°/92mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:398cc
内径×行程:70.0mm×51.8mm
圧縮比:11.5
最高出力:35kW(48ps)/10000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/8000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.830
 2速:1.930
 3速:1.420
 4速:1.140
 5速:0.960
 6速:0.840
1・2次減速比:2.218・2.928
フレーム形式:トレリス(ダイヤモンドタイプ)
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:ボトムリンク式モノショック
タイヤサイズ前:100/70R17
タイヤサイズ後:150/60R17
ブレーキ形式前:油圧シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:167kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:31.1km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:25.7km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…