ZX-4Rより守備範囲は広い、先代とは別物の運動性能が実感できる。カワサキ・ニンジャ400 1000kmガチ試乗【2/3】

単純な速さやならZX-4Rのほうが上だし、快適性では2017年以前の先代に軍配が上がりそうな気がする。とはいえ、スポーツライディングとツーリングの両方が過不足なく楽しめるという視点で見るなら、ニンジャ400はZX-4Rと先代を凌駕する資質を備えているのだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

カワサキ・ニンジャ400……770.000円

試乗車は2023年以前のワークスZX-10RRを再現したKRTエディション。ノーマルのカラーは、パールアイボリー×メタリックマットダークグレーと、メタリックマグネティックダークグレー×メタリックスパークブラックの2種。

並列4気筒のZX-4Rとは異なる美点

第1回目で延べたように、2010年から定期的にサーキットに通うようになった僕は(ただし、最近は財政難で休憩中)、自分の技量でギリギリ何とか潜在能力を引き出せる現行車として、並列2気筒のニンジャ400にかなりの魅力を感じている。もっとも周囲の友人知人にその話をすると、“並列4気筒のニンジャZX-4Rのほうがよくない?”という答えが返ってくることが意外に多いのだが、僕としてはZX-4Rの実力を認めつつも、自分に適しているのはやっぱりニンジャ400だと思う。

と言うのもZX-4Rの190kgという車重は、ニンジャ400より23kgも重いのである。ただしその一方でZX-4Rの最高出力は、ニンジャ400より29ps(ラムエア加圧時は32ps)も高い77/80psなのだが、サーキットを走り込んで軽さの重要性を心の底から実感した身としては、やっぱりニンジャ400のほうに惹かれる。

それに加えてニンジャ400には、ロングランが過不足なく楽しめるという美点も備わっていた。超高回転指向の並列4気筒を搭載するZX-4R(最高出力・最大トルクの発生回転数は14500・13000rpm。ニンジャ400は10000・8000rpm)をツーリングに使うと、エンジンのオイシイ部分がなかなか味わえない、一緒に走る仲間とペースを合わせづらい、などというストレスを感じる場面が少なくないのだが、今回の試乗期間の後半に、3人の友人と一般道主体の約700kmのツーリング(一泊二日で東京都西部⇔新潟県上越市)に出かけた僕が、そういった問題に直面する機会はほとんどなかったのだ。

フロントまわりの接地感と安心感

ところで、約700kmのツーリングでさまざまな場面を走る中で、僕がなるほど……と感心したのは、減速時のフロントまわりの接地感である。以前から薄々気づいていたものの、ニンジャ400はフロントブレーキをかける、あるいは、適度に開けていたスロットルを閉じた際に、フロントまわりにいい塩梅で自然に荷重が乗り、速度域や路面状況に関わらず、その荷重がなかなか抜けない。だから、峠道でコーナーに進入するときは絶大な安心感が得られるし、そこから車体を倒し込むのもイージー。第1回目の続き的な話になるけれど、こういう資質を備えているからこそ、僕はニンジャ400が好きになったのだろう。

ただしその一方で、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けたときのリアまわりのフィーリングは、最高とは言い難かった。エンジン回転数が高ければ明確なトラクションが伝わってくるのだけれど、6000rpm以下だと何だかモワッしている。この件については、高品質なアフターマーケット製リアショック、あるいは、エンジンの主張を強くする社外マフラーの導入で解決しそうな気がするが、もしかしたらハイグリップスポーツタイヤ(純正指定はダンロップGPR-300)の導入や、ファイナルレシオのショート化で好印象が得られるのかもしれない。

それに加えてもうひとつ、ニンジャ400で僕がちょっと気になったのはロングラン後の肉体の疲労。と言っても、身体のどこかに露骨な痛みを感じたわけではないし、一般道主体で約700kmを走れば、どんなバイクだってある程度は疲れるのだが、改めて振り返ると、ニンジャ650と基本設計を共有していた2017年以前のニンジャ400は、シートが分厚くてスクリーンが高く(シート高・全高は、2017年型以前:805・1180mm、2018年型以降:785・1120mm)、乗り味に大らかなところがあったので、スポーツツアラーとしての資質は2018年以降の現行ニンジャ400より上だった気がする。

まあでも、僕はそもそも運動性能に惹かれて現行ニンジャ400が好きになったのだから、そういう見方でこのバイクに異論を述べるのはどうかと思わなくもない。また、車格の差を考えれば(装備重量・軸間距離は、2017年型以前:211kg・1410mm、2018年型以降:167kg・1370mm)、今回の試乗で押し引きやチマチマした県道・農道・舗装林道の走行が気軽にこなせたのは、軽くて小さな現行ニンジャ400だったからだろう。

いずれにしても今回の試乗を通して、僕はニンジャ400が今まで以上に好きになったのだが、自分がこのバイクのオーナーになったら、運動性と快適性に磨きをかけるカスタムを行うと思う。などと書くと、ノーマルを否定するかのような印象を持たれそうだが、試乗中にカスタム意欲が湧いてくるのはカワサキ車の特徴と言えなくはないし、ノーマルが優れた資質を備えているからこそ、僕としては自分好みに仕上げてみたいのである。

偶然にも、理想のカスタムに遭遇?

などということを考えていたら、偶然にも自宅近くのコンビニでその好例に遭遇することになった。小松原さんという現行ニンジャ400オーナーと出会って、愛車を見せてもらったところ、カスタムの方向性が僕の好みにかなり近かったのだ。中でも僕が好感を抱いたのは、スポーツライディングとツーリングの両方が楽しめそうな、絶妙のライディングポジションが得られるアフターマーケット製のハイシートとバックステップだが(あつかましくもシートに跨って、乗車姿勢を確認させてもらった)、走行風の低減が期待できるハイスクリーンと、一発一発の爆発力が明確な排気音を聞かせてくれるヨシムラのマフラーも、個人的にはかなりのツボ。

僕がスマホで撮影した写真がヘタクソで心苦しいのだが、小松原さんの愛車はニンジャ400をカスタムするうえで参考になる要素が満載だった。タンデムシート部にはトップケース用のステーを設置。

ちなみに、ニンジャ400はアフターマーケットパーツが豊富で、インターネットを検索すれば各人各様のカスタム仕様がたくさんヒットする。小松原さんの愛車のテーマはツーリングを快適にこなせることで、現在の仕様に落ち着いてからは、どんどん走行距離が伸び、どんどん愛着が増しているとのこと。そしてその話を聞いた僕は、ますますニンジャ400が好きになったのだった。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1200kmを走っての実測燃費を紹介します。

現行ニンジャの軽快な乗り味には、F:3.00×17・R:4.00×17のホイールサイズ、F:100/70R17・R:150/60R17のタイヤサイズも大いに貢献している。ちなみに2017年以前のニンジャ400は、F:3.50×17・R:4.50×17、F:120/70ZR17・R:160/60ZR17で、この数値は並列4気筒を搭載するZX-4Rも同じ。

主要諸元

車名:ニンジャ400
型式:8BL-EX400L
全長×全幅×全高:1990mm×710mm×1120mm
軸間距離:1370mm
最低地上高:140mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.7°/92mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:398cc
内径×行程:70.0mm×51.8mm
圧縮比:11.5
最高出力:35kW(48ps)/10000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/8000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.830
 2速:1.930
 3速:1.420
 4速:1.140
 5速:0.960
 6速:0.840
1・2次減速比:2.218・2.928
フレーム形式:トレリス(ダイヤモンドタイプ)
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:ボトムリンク式モノショック
タイヤサイズ前:100/70R17
タイヤサイズ後:150/60R17
ブレーキ形式前:油圧シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:167kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:31.1km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:25.7km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…