トライアンフ・ボンネビル ボバー……1,999,000円(2025年12月販売開始)




クランクシャフトの躍動感が伝わる圧倒的なトルク

2017年に登場したトライアンフ・ボンネビル ボバー。メーカーズカスタムの域を超えたミニマルなスタイリングが特徴で、2021年のモデルチェンジでフロントブレーキをダブルディスク化し、フロントホイールを19インチから16インチへ。合わせて燃料タンクを一回り大きなものへ変更している。そして最新の2026年モデルでは、再び燃料タンクの容量を拡大し、最新の電子制御システムを搭載した。初期型が有していたミニマル感はやや薄らいだものの、今なお十分以上に個性的なスタイリングであり、トライアンフに興味がなかった人が惹かれるというのも分かろうというものだ。

まずはエンジンから。ラジエーターが巧みに隠されていることから誤解されがちだが、搭載されているのは水冷パラツインで、排気量は1200ccとかなり大きい。クランクケースの左右には「BONNEVILLE 1200 HT(High-Torqueの意)」のバッジが輝いており、キャブレター風のツインスロットルボディも含め、エンジンを眺めているだけでも所有欲を満たしてくれそうだ。

270度位相クランクを採用したこのパワーユニットは、アイドリング付近から圧倒的なトルクを発揮し、スロットルの開け方次第では振り落とされそうなほどの突進力を見せる。レブリミットは7000rpm付近だが、上り勾配のきつい峠道ですら3000rpm以下で事足りるほど低~中回転域に潤沢な力を秘めている。
怒濤のトルクに圧倒されがちだが、いわゆるメカノイズや微振動といった雑味はていねいに取り除かれており、ライダーは燃焼一発ごとの蹴り出し感だけを味わうことができる。クランクシャフトの躍動が体に伝わり、クルージング中はその力強くもスムーズな回転フィールに上品さすら感じてしまうのだ。
ライディングモードはロードとレインの2種類。レインモードに切り替えると、スロットルレスポンスがCVキャブのように穏やかになる。市街地なら路面がドライであっても、ロードモードよりこちらの方が扱いやすいと感じた。
トランスミッションは6段で、シフトチェンジのたびに重い歯車をコクッと噛み合わせているような感触が伝わるのが心地良い。昨今、自動変速システムや電子制御クラッチが注目を集めているが、ていねいに設計されたトランスミッションに宿る「変速する喜び」も捨てがたいとあらためて思う。なお、クラッチはスリップアシスト付きなので、排気量が1200ccもあるとは思えないほどレバーの操作力は軽い。よって、総じてエンジンは扱いやすいと言っていいだろう。
バンク角こそ浅いが、ハンドリング自体に難しさはない

続いてはハンドリングだ。いざ走らせてみると、フロントタイヤの存在感が手応えとしても大きく、右へゴロン、左へゴロンと、切っ先を向けた方向へグイグイと曲がっていくことが分かる。積極的な体重移動がしにくい乗車姿勢なので、ハンドルの押し引きやステップへの荷重主体で車体を傾けることになるが、これに慣れてさえしまえば意外なほどスイスイと操れることに気付く。前後のサスペンションは短いストロークの中でしっとりとスムーズに動いてくれ、これもハンドリングの良さにつながっていよう。
ただし、これに気を良くしてペースを上げると、あっという間にステップの先にあるバンクセンサーを磨り減らしてしまうのでご注意を。ちなみにオーナーズマニュアルには、これの長さが5mm未満になったら交換するようにと記載されている。
スラロームのような連続するタイトな切り返しでは、フロントタイヤの舵角の入りが遅れがちに。だが、そういうときは腕の力で「切り増し」をしてやるとスムーズに旋回できることが判明。そうしたボバーならではコツというか走らせ方を見つけるのも楽しみの一つだろう。

ブレーキは、ブレンボ製キャリパーを採用したフロントが実にコントローラブルで、特にリリース方向の扱いやすさはコーナーへのアプローチの際に好印象だった。一方、ニッシン製のキャリパーを採用したリヤも同様で、250kgの車体をていねいに減速させることができる。なお、最新世代のリーン角検知式最適化ABS(いわゆるコーナリングABS)については、その効果を試す機会こそなかったが、バンク中でも危険を察知したら迷わずブレーキをかけられるという安心感は大きい。
排気量と価格が近しいことから、ハーレーダビッドソンのスポーツスターS(1252cc、199万8800円)がライバルに挙げられるが、スタイリングの方向性が全く異なることから、この2台のどちらかを迷う人はほとんどいないだろう。なお、ボンネビル系エンジンに共通するネックは足元の熱さであり、これは最新のボバーでも少なからず感じられた。スタイリングに惚れて購入を検討されている方は、その辺りも含めて試乗時に確認してほしい。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
シート高は690mmで、原付一種スクーターと同等、もしくはそれ以上に低い。よって、足着き性はご覧のとおり良好だが、250kgという車重とファットなタイヤによる転がり抵抗もあってか、取り回しは非常に重いので覚悟を。ハンドルのグリップ位置はやや遠く、上半身はわずかに前傾。これにミッドコントロールを組み合わせたライポジは実に個性的だ。
ディテール解説











ボンネビル ボバー(2026年モデル)主要諸元
●エンジン、トランスミッション
エンジン 水冷並列2気筒 SOHC 8バルブ、270°クランク
排気量 1200 cc
ボア 97.6 mm
ストローク 80 mm
圧縮比 10:1
最高出力 78 PS / 77 bhp (57.5 kW) @ 6,100 rpm
最大トルク 106 Nm @ 4,000 rpm
システム 電子スロットル制御付き電子燃料噴射
エグゾーストシステム ブラッシュ仕上げステンレス製2-into-2エキゾーストシステム(ツインブラッシュ仕上げステンレス製サイレンサー付き)
駆動方式 Xリングチェーン
クラッチ 湿式多板、スリップアシストクラッチ
トランスミッション 6速
●シャシー
フレーム チューブラースチールとスチールクレードル
スイングアーム 両持ち式
フロントホイール 32ワイヤースポーク、アルミニウムリム16 x 2.5インチ
リアホイール 32ワイヤースポーク、アルミニウムリム16 x 3.5インチ
フロントタイヤ 130/90-16
リアタイヤ 150/80-16
フロントサスペンション ショーワ製 47 mm カートリッジフォーク
リアサスペンション ショーワ製 モノショック(RSU)、リンク機構およびプリロード調整機能付き
フロントブレーキ ツイン310 mm固定ディスク、Brembo、2ピストンフローティングキャリパー、OCABS
リアブレーキ シングル 255 mm ディスク、Nissin 製 1 ピストンフローティングキャリパー、OCABS
インストルメントディスプレイとファンクション アナログスピードメーター(LCD 多機能ディスプレイ付き)
●寸法、重量
ハンドルを含む横幅 800 mm
全高(ミラーを含まない) 1055 mm
シート高 690 mm
ホイールベース 1500 mm
キャスターアングル 25.4 °
トレール 92 mm
車体重量 250 kg
燃料タンク容量 14 L




