トライアンフ・ボンネビル ボバー……1,999,000円(2025年12月販売開始)

英語の「BOB(短く切る)」が語源とされるボバースタイル。装飾を排したミニマルなスタイリングが特徴で、1940年代に発生したカスタマイズの一種とも言われている。2017年にデビューした際の燃料タンクは9.1Lと小ぶりだったが、ユーロ5に適合した2021年モデルで12Lに。そして最新の2026年モデルでは14Lへと拡大した。
試乗車に装着されていたタイヤはメッツラー・ロードテック01で、指定空気圧はフロント:2.28bar、リヤ:2.62barだ。ワックスコットンパニアは純正アクセサリーで用意されている。
2026年モデルでは最新世代のリーン角検知式最適化ABSとトラクションコントロールが採用されている。これはIMUをベースとしたものだ。車体色はInterstellar Blue、Jet black、Satin mineral greyの3種類。

クランクシャフトの躍動感が伝わる圧倒的なトルク

2017年に登場したトライアンフ・ボンネビル ボバー。メーカーズカスタムの域を超えたミニマルなスタイリングが特徴で、2021年のモデルチェンジでフロントブレーキをダブルディスク化し、フロントホイールを19インチから16インチへ。合わせて燃料タンクを一回り大きなものへ変更している。そして最新の2026年モデルでは、再び燃料タンクの容量を拡大し、最新の電子制御システムを搭載した。初期型が有していたミニマル感はやや薄らいだものの、今なお十分以上に個性的なスタイリングであり、トライアンフに興味がなかった人が惹かれるというのも分かろうというものだ。

純正アクセサリーの追加によって積載性をプラスすることは可能だが、せっかくのミニマルなスタイリングが崩れてしまうというジレンマも。

まずはエンジンから。ラジエーターが巧みに隠されていることから誤解されがちだが、搭載されているのは水冷パラツインで、排気量は1200ccとかなり大きい。クランクケースの左右には「BONNEVILLE 1200 HT(High-Torqueの意)」のバッジが輝いており、キャブレター風のツインスロットルボディも含め、エンジンを眺めているだけでも所有欲を満たしてくれそうだ。

エンジンはボンネビルT120らと同系の1200cc水冷並列2気筒SOHC4バルブで、270度位相クランクを採用。加速力を重視した専用チューニングにより、最高出力はT120の80PSから78PSへとわずかに抑えられているものの、最大トルクは105Nmから106Nmへと微増している。クラッチはスリップアシスト付きで、トランスミッションは6段だ。

270度位相クランクを採用したこのパワーユニットは、アイドリング付近から圧倒的なトルクを発揮し、スロットルの開け方次第では振り落とされそうなほどの突進力を見せる。レブリミットは7000rpm付近だが、上り勾配のきつい峠道ですら3000rpm以下で事足りるほど低~中回転域に潤沢な力を秘めている。

怒濤のトルクに圧倒されがちだが、いわゆるメカノイズや微振動といった雑味はていねいに取り除かれており、ライダーは燃焼一発ごとの蹴り出し感だけを味わうことができる。クランクシャフトの躍動が体に伝わり、クルージング中はその力強くもスムーズな回転フィールに上品さすら感じてしまうのだ。

ライディングモードはロードとレインの2種類。レインモードに切り替えると、スロットルレスポンスがCVキャブのように穏やかになる。市街地なら路面がドライであっても、ロードモードよりこちらの方が扱いやすいと感じた。

トランスミッションは6段で、シフトチェンジのたびに重い歯車をコクッと噛み合わせているような感触が伝わるのが心地良い。昨今、自動変速システムや電子制御クラッチが注目を集めているが、ていねいに設計されたトランスミッションに宿る「変速する喜び」も捨てがたいとあらためて思う。なお、クラッチはスリップアシスト付きなので、排気量が1200ccもあるとは思えないほどレバーの操作力は軽い。よって、総じてエンジンは扱いやすいと言っていいだろう。

バンク角こそ浅いが、ハンドリング自体に難しさはない

続いてはハンドリングだ。いざ走らせてみると、フロントタイヤの存在感が手応えとしても大きく、右へゴロン、左へゴロンと、切っ先を向けた方向へグイグイと曲がっていくことが分かる。積極的な体重移動がしにくい乗車姿勢なので、ハンドルの押し引きやステップへの荷重主体で車体を傾けることになるが、これに慣れてさえしまえば意外なほどスイスイと操れることに気付く。前後のサスペンションは短いストロークの中でしっとりとスムーズに動いてくれ、これもハンドリングの良さにつながっていよう。

ただし、これに気を良くしてペースを上げると、あっという間にステップの先にあるバンクセンサーを磨り減らしてしまうのでご注意を。ちなみにオーナーズマニュアルには、これの長さが5mm未満になったら交換するようにと記載されている。

スラロームのような連続するタイトな切り返しでは、フロントタイヤの舵角の入りが遅れがちに。だが、そういうときは腕の力で「切り増し」をしてやるとスムーズに旋回できることが判明。そうしたボバーならではコツというか走らせ方を見つけるのも楽しみの一つだろう。

ホイールは前後とも16インチで、32本のワイヤースポークとアルミリムで構成される。φ47mmの正立式フロントフォークはショーワ製のカートリッジタイプだ。フロントブレーキはブレンボ製ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーとφ310mmディスクの組み合わせだ。

ブレーキは、ブレンボ製キャリパーを採用したフロントが実にコントローラブルで、特にリリース方向の扱いやすさはコーナーへのアプローチの際に好印象だった。一方、ニッシン製のキャリパーを採用したリヤも同様で、250kgの車体をていねいに減速させることができる。なお、最新世代のリーン角検知式最適化ABS(いわゆるコーナリングABS)については、その効果を試す機会こそなかったが、バンク中でも危険を察知したら迷わずブレーキをかけられるという安心感は大きい。

排気量と価格が近しいことから、ハーレーダビッドソンのスポーツスターS(1252cc、199万8800円)がライバルに挙げられるが、スタイリングの方向性が全く異なることから、この2台のどちらかを迷う人はほとんどいないだろう。なお、ボンネビル系エンジンに共通するネックは足元の熱さであり、これは最新のボバーでも少なからず感じられた。スタイリングに惚れて購入を検討されている方は、その辺りも含めて試乗時に確認してほしい。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)

シート高は690mmで、原付一種スクーターと同等、もしくはそれ以上に低い。よって、足着き性はご覧のとおり良好だが、250kgという車重とファットなタイヤによる転がり抵抗もあってか、取り回しは非常に重いので覚悟を。ハンドルのグリップ位置はやや遠く、上半身はわずかに前傾。これにミッドコントロールを組み合わせたライポジは実に個性的だ。

ディテール解説

まるでキャブレターのようなデザインのFIツインスロットルボディ。この下にイグニッションキーがレイアウトされており、ハンドルロックは別体式となっている。
マフラーは左右2本出し。スラッシュカットサイレンサーはブラシ仕上げのステンレス製で、ここから吐き出されるエキゾーストノートはワイルドに満ちている。ドライブチェーンが右側にあるのは、ボンネビル系エンジン搭載車に共通する特徴だ。
リヤブレーキはニッシン製のピンスライド片押し式シングルピストンキャリパーとφ255mmディスクを組み合わせる。
リヤサスペンションはリンク式モノショックで、スイングアームはその形状から「スイングケージ」と名付けられている。
ミニマルかつ開放的なコックピット。電子制御スロットルなのでスロットルワイヤーがないこともシンプルさに拍車をかけている。
左右ともシンプルなスイッチボックス。右側にライディングモードの切り替え、左側にクルーズコントロールのボタンが配置されている。
指針式の速度計とLCDを組み合わせたシンプルなメーターパネル。LCDの表示は手元のボタンで切り替える仕組みだ。ライディングモードはロードとレインの2種類で、ワンタッチクルーズコントロールが追加されている。メーターハウジングの左面にはUSB-Cソケットを設置。
ボンネビル ボバーのアイコンであるフローティングシートは、2026年モデルでワイドかつ立体的なデザインとなり、居住性が大幅に向上。なお、純正アクセサリーにリヤシートは用意されておらず、このモデルでのタンデムは事実上不可とのこと。
ステップはやや前寄りのミッドコントロール。純正アクセサリーでフォワードコントロール化するキットも用意されている。
シグネチャーDRLを備えたフルLEDヘッドライト。コンパクトだが照射範囲は広い。
車名の「BOB(短く切る)」の由来となっているのが、必要最小限にデザインされた前後のスチールフェンダーで、センターリッジとリターンエッジが採用されている。テールランプも実にコンパクトだ。

ボンネビル ボバー(2026年モデル)主要諸元

●エンジン、トランスミッション
エンジン 水冷並列2気筒 SOHC 8バルブ、270°クランク
排気量 1200 cc
ボア 97.6 mm
ストローク 80 mm
圧縮比 10:1
最高出力 78 PS / 77 bhp (57.5 kW) @ 6,100 rpm
最大トルク 106 Nm @ 4,000 rpm
システム 電子スロットル制御付き電子燃料噴射
エグゾーストシステム ブラッシュ仕上げステンレス製2-into-2エキゾーストシステム(ツインブラッシュ仕上げステンレス製サイレンサー付き)
駆動方式 Xリングチェーン
クラッチ 湿式多板、スリップアシストクラッチ
トランスミッション 6速

●シャシー
フレーム チューブラースチールとスチールクレードル
スイングアーム 両持ち式
フロントホイール 32ワイヤースポーク、アルミニウムリム16 x 2.5インチ
リアホイール 32ワイヤースポーク、アルミニウムリム16 x 3.5インチ
フロントタイヤ 130/90-16
リアタイヤ 150/80-16
フロントサスペンション ショーワ製 47 mm カートリッジフォーク
リアサスペンション ショーワ製 モノショック(RSU)、リンク機構およびプリロード調整機能付き
フロントブレーキ ツイン310 mm固定ディスク、Brembo、2ピストンフローティングキャリパー、OCABS
リアブレーキ シングル 255 mm ディスク、Nissin 製 1 ピストンフローティングキャリパー、OCABS
インストルメントディスプレイとファンクション アナログスピードメーター(LCD 多機能ディスプレイ付き)

●寸法、重量
ハンドルを含む横幅 800 mm
全高(ミラーを含まない) 1055 mm
シート高 690 mm
ホイールベース 1500 mm
キャスターアングル 25.4 °
トレール 92 mm
車体重量 250 kg
燃料タンク容量 14 L