ホンダ・CB1000F……1,397,000円(2025年11月14日発売)

年間販売計画台数は、バリエーションモデルのCB1000F SE(159万5000円、2026年1月16日発売)と合わせて5000台と発表された。画像は、筆者が今年1月に走らせた個人車両で、慣らし運転を手伝うという名目でお借りした。
CB1000Fは、先に発売されたCB1000 ホーネット(134万2000円、同SPは158万4000円)とプラットフォームを共有している。ゆえに流用できるパーツが豊富にある。
CB1000F、CB1000 ホーネットともエンジンはCBR1000RR(SC77、2017年3月発売時の車両価格は201万4200円~)由来の999cc水冷並列4気筒で、最高出力は192PSから124PSへと引き下げられている(CB1000 ホーネットは152PS、同SPは158PS)。

始動時の音量とFIのフィーリングにやや難あり

7月に走らせた車両はホンダの広報車で、積算計は5100kmをオーバー。純正アクセサリーのクイックシフター(3万3880円、SEは標準装備)がすでに装着されていた。

ほぼ1年に及ぶ長いプロモーション期間を経て、昨年11月に発売されたホンダ・CB1000F。ずいぶん待たされたという人も多かっただろう。小型二輪市場で8年連続販売台数トップを誇るカワサキ・Z900RSの対抗馬であり、昭和の「Z vs CB」が令和に復活したともいえる存在だ。

筆者は今年1月と7月、さらに短時間の試乗を含めると計3回、合計約500kmにわたってCB1000Fを走らせた。各専門メディアで高い評価が並ぶこともあり、期待値はかなり高かった。しかし距離を重ねるにつれ、「ここはもう少し煮詰められたのでは?」と感じる部分も少なくなかった。本稿では、その長距離試乗だからこそ見えてきた印象を率直にお伝えしたい。

まず驚かされたのは始動直後の排気音だ。エンジンに火が入ると「ガヴォーッ」と想像以上に大きなサウンドが響き渡る。しばらくすると(触媒が温まるためだろうか)落ち着くものの、それまでは住宅街で気兼ねなく始動するには少々気を遣う音量だ。この点は多くの二輪系YouTuberも指摘しており、気になる方は動画で確認してみるといいだろう。

専用設計の3室構造マフラー。

ライドモードはスタンダード、スポーツ、レインに加え、P(エンジン出力)、EB(エンジンブレーキ)、T(トラクションコントロール)を自由に設定できるユーザー1・2を備える。専用ボタンで切り替えられる操作性は優秀だが、スクロールが一方向のみなのは惜しい。例えばスポーツからスタンダードへ、レインからスポーツへ戻る場合でも、必ずユーザー1・2を経由しなければならず、計4回ボタンを押す必要がある。ユーザーモードをスキップできる設定があれば、さらに使いやすくなったはずだ。

スタンダードモードで走り出すと、低回転域からのトルクは実に力強い。街中での扱いやすさはもちろん、純粋な加速力ではCB1300SFを大きくしのぐ印象だ。214kgという車重に対し最高出力は124PS。266kg・113PSのCB1300SFとはパワーウエイトレシオで約26%もの差があり、285ccの排気量差を感じさせないどころか、それ以上の速さを実感できる。

興味深いのは、そのエンジンフィールだ。最高出力を追求したスーパースポーツ由来の水冷直4でありながら、燃焼一発ごとの粒立ちが感じられ、わずかにザラついた感触を伝えてくる。このフィーリングは特定の回転域だけでなく、高回転域まで一貫して続く。その理由は、あえてバルブタイミングをずらしたことにあるという。

一般的にバルブタイミングはすべての気筒で統一されるが、CB1000Fではあえて左右2気筒ごとに異なるバルタイを採用。さらに新設計のエアファンネルも右2気筒と左2気筒で入口径を変えており、キャブレター車のようなフィーリングや鼓動感のある重厚な排気音を目指したという。

空冷直4のCB1100を彷彿させる鼓動感を、水冷エンジンで再現しようとした開発陣の挑戦は素直に称賛したい。ただ、その質感がどの回転域でも、どんな開け方でもほぼ一定で変化に乏しいため、100km単位で走り込むうちに、やや作為的というか外連味のような印象も受けた。

キャブレター車なら、ある回転域では荒々しく、燃調が整うにつれて滑らかになるなど、スロットル操作によっても表情が変化し、そこにはまるで内燃機関と対話しているかのような面白さがあった。そうした古き良き時代を知る身としては、CB1000Fはもう少しフィーリングに抑揚があっても良かったのでは、などと感じてしまう。

2010年3月11日に<タイプⅠ>、同年6月4日に<タイプⅡ>が発売されたホンダ・CB1100。エンジンの基本的なベースはCB1300SFで、これを空冷化しつつ吸気側に位相バルブタイミングを採用した。画像はCB1100<タイプⅠ>ABSで、発売時の価格は107万1000円だった。

さらに言うと、かつて試乗したフルレストアのCB750FOUR(K0)は、丁寧なバランス取りが施されていたこともあり、当時所有していたGPZ900Rよりも微振動が少なく、吹け上がりも驚くほど上質で豊かさを感じさせるものだった。そんな経験があるだけに、CBシリーズの名を継ぐモデルであれば、もう少し洗練された方向性もあったのではないかと思う。

渋滞路で多用する微開域では、FIの制御も惜しい。スロットル全閉からわずかに開けた瞬間、「トンッ」と車体が前へ出るような反応があり、どんなにていねいに操作しても完全には消せない。スタンダードとスポーツでは特に顕著で、レインモードでは多少穏やかになるものの、根本的な改善には至らない。そのため、渋滞路での微速走行は快適とは言い難いのだ。一方で、猛暑日の市街地でもエンジンからの熱気が比較的穏やかな点は評価できる。

また、ローから2速へのシフトアップでは、スロットル操作とエンジンの反応がわずかに噛み合わず、車体がギクシャクしやすい。クイックシフター装着時(純正アクセサリー、社外品の両方を試している)には気にならなかったので、結果的にはこれとの組み合わせを前提にしたFIセッティングゆえなのかもしれない。

1月に走らせた個人車両は、借りた時点ではフルノーマルだった。のちに寺本自動車商会のクイックシフターを装着したと聞き、その状態でも試乗させてもらっている。

燃費も気になるポイントだ。慣らし中だった1月はなるべく5000rpm以上を使わないように意識して走り、実燃費は17.0km/L。一方、猛暑日の7月はワインディングロードでの快走と渋滞路の移動を繰り返した結果、メーター上の平均燃費は一時11km/L台まで低下し、省燃費走行へ切り替えても最終的には13km/L台にとどまった。

1月は中央自動車道をメインに183.1kmを移動。10.79Lを給油したので、実燃費は17.0km/Lとなった。

CB1000FのWMTCモード値は17.9km/Lで、Z900RSの20.5km/Lを下回るうえ、燃料タンク容量も16Lと1L少ない。さらにガソリンがハイオク指定であることを考えると、経済性という面ではあまり良いとはいえないだろう。

高速コーナーではやや後ろ下がりに、ブレーキは初期制動が強め

ハンドリングは、ライダーの着座位置がリヤタイヤ寄りにあり、ワイドなハンドルを使ってバンク角主体で旋回していくタイプだ。214kgという車重を感じさせない軽快さがあり、重心位置の絶妙な設定やピッチングしやすいサスペンションも相まって、倒し込みや切り返しは750ccクラスを思わせるほどの軽さを見せる。

フロントから積極的に向きを変えていくCB1000Rのようなハイパーネイキッドとは対照的で、CB1000Fはリヤタイヤを軸にゆったりと旋回していく性格だ。その穏やかなハンドリングは、大型ビギナーでも安心感を抱きやすいだろう。

1月に借りた個人車両、7月に借りた広報車とも、タイヤはブリヂストン・バトラックス ハイパースポーツ S22が装着されていた。トラクションコントロールが適切に作動していることもあってか、猛暑日に峠道を走ったにもかかわらずトレッド面の荒れは穏やかだ。このほかにダンロップ・ロードスポーツ2も標準装着指定となっている。

サスペンションは快適性を重視したセッティングで、市街地はもちろん、高速道路でもストローク感を十分に伝えながら路面からの突き上げを穏やかに吸収してくれる。

さらに、デザイン面では賛否が分かれる5インチTFTメーターも、実際には適度な防風効果を発揮する。100km/h程度までなら胸元に当たる走行風をうまく軽減し、長距離ツーリングでの疲労軽減にもひと役買っていた。

一方で、ペースを上げるとソフト気味なサスペンションの性格が顔を出す。特に高速コーナーではリヤが沈み込みやすく、車体を寝かせても思ったほど旋回力が高まらない場面があった。

フロントブレーキも初期制動がやや強めなのがネックで、コーナー進入時にフロントフォークが一気に沈み込みやすい。その結果、ライダー側が無意識に進入速度を抑えてしまう傾向にあり、スポーツライディングではもう少し穏やかな立ち上がりでも良かったのではないかと感じた。

2025年9月、HSR九州で開催されたイベントレース「鉄馬 with βTITANIUM」のアイアンスポーツクラスに出場。第1ヒート、第2ヒートの両方で勝ったのが、丸山浩さんが走らせたCB1000F コンセプトのレーサーだ。ノーマル然としているが、前後のサスペンションはCB1000 ホーネット用がベースとなっている。ちなみにバーハンドルやステップホルダーもCB1000 ホーネット用で、フロントキャリパーはCBR1000RR-Rの純正品だ。

もっとも、このキャラクターはネガティブに捉える必要はない。よりスポーツ性を求めるライダーにはCB1000 ホーネットという選択肢が用意されているからこそ、CB1000Fは扱いやすさやツーリング性能を重視した味付けへと大きく舵を切れたとも言える。

照射範囲の広いヘッドライト、スマホ連携機能も魅力

夜間走行で特に感心したのがヘッドライトの配光だ。丸型1灯ながらロービームの照射範囲は非常に広く、進行方向だけでなくその左右や手前までムラなく照らしてくれる。デザイン上、コーナリングランプの採用が難しいオーソドックスなネイキッドモデルではあるものの、この優れた配光性能なら夜間のワインディングロードでも不安を感じる場面は少ないだろう。

5インチTFTメーターは、本体サイズに対して表示エリアが一回り、いや二回りほど小さいのが惜しい。しかし、スマートフォンやヘッドセットと連携する「ホンダロードシンク」は完成度が高い。

左はCB1000F、右はヤマハ・トレーサー9 GT+ Y-AMTのメーターパネルだ。CB1000Fは本体サイズに対して表示エリアがだいぶ小さいことが分かるだろう。

ナビ機能はターンバイターン表示のみで、筆者のようにスマートライドモニターを使い慣れている身からすると、Android AutoやApple CarPlayが利用できない点には物足りなさも残る。それでも、電話やメッセージの着信をメーター上で確認でき、ハンドルスイッチや音声操作で対応できる利便性は高く評価したい。

ホンダロードシンクは、このようにスマホで走行ログを確認することも可能だ。

細かな装備では、スマートキーの使い勝手も良好だ。日常的に使うほど便利さを実感できる装備であり、ETC2.0車載器が標準装備される点もツーリング派にはうれしいポイントだろう。

一方、シートカウル下部の荷掛けフックは荷物を固定する際にベルトやロープが外装へ接触しやすく、擦り傷が付きやすい位置にある。このあたりは養生テープや保護フィルムを貼っておけば、ある程度防げそうだ。

今年3月には、「ピストンおよびトップリングを対策品へ交換。異音が認められる場合はエンジンASSYを交換する」というリコールが発表され、デビュー直後の話題性に水を差したことは否めない。それでも、CB750F、CB900F、CB1100Fに長年親しんできた筆者の目から見ても、CB1000Fのスタイリングは非常に完成度が高い。空冷CB-Fの雰囲気を現代的な解釈で見事にまとめ上げたデザインは、このモデル最大の魅力と言っていいだろう。

当面の措置として、ガソリン給油毎にエンジンオイル量を点検するように促すリコールステッカーが貼られた。CB1000Fのレベルゲージはスティック式なので、これを面倒に感じるオーナーも少なくないようだ。

もちろん、現状においても完成度は十分以上に高い。だからこそ、FIセッティングや足まわりなど細部の熟成によって、CB1300SFが円熟味を増していったように、長く愛されるネイキッドへと成長していくことを期待したい。

CB1000FはCB1000 ホーネットの開発中にプラットフォームの共有化が決まった。元ネタであるCB-Fシリーズの特徴がうまく表現されており、特にタンクからサイドカバー、シート、そしてシートカウルへとつながる面構成は素晴らしい都感じる。

ホンダ・CB1000F 主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BL-SC94
全長/全幅/全高(mm) 2,135/835/1,125【1,170】
軸距(mm) 1,455
最低地上高(mm) 135
シート高(mm) 795
車両重量(kg) 214【217】
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 26.0(60)〈2名乗車時〉
         WMTCモード値(クラス) 17.9(クラス 3-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.8
エンジン型式 SC94E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量(cm3) 999
内径×行程(mm) 76.0× 55.1
圧縮比 11.7:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 91[124]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 103[10.5]/8,000
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
使用燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 16
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.642
   2速 1.941
   3速 1.583
   4速 1.333
   5速 1.137
   6速 0.967
減速比(1次/2次) 1.717/2.812
キャスター角(度) 25°00′
トレール量(mm) 98
タイヤ 前 120/70ZR17M/C (58W)
   後 180/55ZR17M/C (73W)
ブレーキ形式 前 油圧式ダブルディスク
      後 油圧式ディスク
懸架方式 前 テレスコピック式(倒立サス/ビッグ・ピストン・フロントフォーク)
    後 スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 ダイヤモンド

※【 】内はSE

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