「大容量+急速充電」の次は「中容量+普通充電」を試す

日産リーフB5 X 車両本体価格:473万8800円

じつは日産リーフ、好きなクルマである。2009年の東京モーターショーで一般公開されたときも現場で見ていたし、2010年12月に初代が発売されたときには、予約リスト(というか、確か予約できるようにしてあげるよ的なリストだったような気がする)にも登録した(結局買わなかったけれど)。BEVの先駆者としての功績は色褪せることはないし、実際にこれまで積み重ねてきた膨大なデータは日産にとっての財産だろう。

初代(ZE0型2010-2018年)も二代目(ZE1型2017-2025年)も、何度か試乗させてもらってきた。

で、3代目(ZE2型)である。

全長×全幅×全高:4360mm×1810mm×1550mm ホイールベース:2690mm

今回はバッテリー容量が小さいB5のミドルグレードXを1週間借り出してみた。テーマは、「家庭用の普通充電だけで運用する」こと。急速充電は使わない。

少し前にバッテリー容量74.69kWh/一充電走行距離746kmのトヨタbZ4Xを試乗した。このときは、「急速充電だけで運用=自宅に充電設備がなくてもBEVを買っても大丈夫か」がテーマだった。

トヨタbZ4Xが突然「爆売れ」している! 480km乗ってわかった「マンション暮らし・自宅充電なし」でもBEVが現実解になる理由 | Motor Fan|自動車情報のモーターファン

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https://motor-fan.jp/article/1593263/

仮説としては、
A:大容量バッテリーのBEVなら急速充電だけでやっていける=bZ4Xで実証済み
B:中容量バッテリーのBEVなら自宅に充電設備があれば急速充電はなくてもいける。

で、今回のリーフB5XはBを検証した。

駆動モーター
形式:YM52型交流同期モーター
定格出力:70kW
最高出力:177ps(130kW)/3600-11700pm
最大トルク:345Nm/0-3500rpm

現行リーフはバッテリー容量違いでB5とB7がある
B5:55kWh
B7:78kWh
でWLTC一充電航続距離
B5 X 469km
B7 X 702km

価格は
B5 X 473万8800円
B7 X 518万8700円
差額は44万9900円

仮説Aに基づけば大容量バッテリーのB7なら急速充電だけでやっていける。今回の試乗車はB5だ。

ボディカラーはディープクリムゾン/スーパーブラック2トーン(7万7000円のオプションカラー)

横浜の日産グローバル本社地下の駐車場でリーフB5Xと対面した。初代二代目と違って(失礼)3代目はスタイリッシュだ。アリア譲りと言っていい上質なスタイルがいい。

二代目までのなんとなくバタバタする脚周りと乗り心地が3代目では完全に一新され走りも気持ちいい。特段スポーティなわけでも、驚くほど加速が鋭いわけでもない。だが、静かで、乗り心地がよく、扱いやすい。BEVであることをことさら意識せず、普通に使える。「BEVのど真ん中はこれでしょ」と思わせるクルマだ。

2日連続200km超でも余裕。550.5km走って電費は7.6km/kWh

借り出した時のバッテリーは99%で航続可能距離は362kmだった。ここから自宅まで26km走行してバッテリーは92%に減っていた。ここで3kWで普通充電した。

目的地設定すると、こういう画面が出る。目的地に着いた時のバッテリー残量も推定してくれる。

翌日は、御殿場で開催されていた日産エルグランドの試乗会だった。リーフに乗り込むともちろんバッテリーは100%。
往路は121.3kmで平均速度60km/hで電費は6.6km/kWh。バッテリー残量は74%.
帰路を含めると216.3kmで平均速度54km/hで電費は7.4km/kWh。バッテリー容量は55%だった。余裕である。
帰宅して充電。100%まで11時間55分と表示されていた。
翌朝、再び100%になったリーフで再び御殿場を目指す。

つまり二日連続で200kmオーバーのドライブをしたわけだ。
翌日は編集部まで往復30kmのドライブ。
翌々日は三浦半島まで往復100kmのドライブ。

1週間で550.5km走行して平均電費は7.6km/kWh 平均速度は50km/h

1週間で550.5km走行して平均電費は7.6km/kWh 平均速度は50km/h
高速道路主体だったにもかかわらず、なかなかの好電費だった。

B5Xのモード電費は
交流電力量消費率WLTCモード:131Wh/km
131Wh/km(1km走るのに131Wh使う)を別の単位に換算すると7.63km/kWh(1kWhで7.63km走行できる)

今回の試乗ではWLTC総合電費の131Wh/km=7.63km/kWhとほぼピッタリ。つまりモード電費通りの実力を発揮したわけだ。

100km走って約533円。家庭充電なら走行コストも安い

自宅には3kWの普通充電設備がある。BEVの試乗用だ。

今度はこの550.5kmでどれほどの電力を使ったか、である。
550.5km÷7.6km/kWh=約72.4kWh
つまり車両側で約72.4kWh相当を消費したことになる。

家庭の電気料金を仮に40.49円/kWhとして、まず車両表示ベースで計算すると、
40.49円/kWh ÷ 7.6km/kWh = 5.33円/km
550.5kmなら約2934円。100km走って約533円だ。

普通充電のリッドはここ。前型のようにフロント中央にあるよりずっといい。急速充電は左フロント側。

ただし充電ロスも考慮しなくてはならない。仮に10%とすれば、コンセントから必要な電力量は約80.5kWh。
80.5kWh × 40.49円 ≒ 3259円
したがって車両表示ベースでは5.3円、充電ロス10%を見込むと5.9円となる。

レギュラーガソリン170円/L(補助金がたくさん投入された上での価格だが)で、20km/Lの燃費のクルマだと8.5円/km。5.3円で揃えるなら31.9km/Lの燃費のガソリン車と同等のコストとなる。

年間走行距離が1万kmなら、車両表示電費ベースの電気代は約5万3000円。充電ロスを10%と仮定すれば約5万9000円となる。

3kWの普通充電。ケーブルが重い。これはなんとかならないものか。

急速充電ではなく普通充電のみで運用するメリットは、その日使った分を翌日までに回復できること。300km/日以上のドライブした日(年間何回ありますか?)以外は、翌日までにバッテリーは100%に戻っている。たとえば戻っていなくても翌日走る分以上になっていれば何の問題もない。

B7の78kWhという数字を見るとB5の55kWhはかなり小さく感じる。だが、そもそも毎日バッテリーを100%まで満たしておく必要があるのだろうか。重要なのはバッテリー容量そのものではなく、翌日必要になる走行距離を確保できているかどうかだ。

毎朝100%じゃなくていい。「満充電シンドローム」から抜け出そう

ここで、BEVに乗ると陥りがちな「満充電シンドローム」について考えてみたい。もちろん、そんな医学用語があるわけではなく、筆者が勝手にそう呼んでいるだけだ。

バッテリーが80%なら安心。でも50%になるとなんとなく不安になり、30%になると充電したくなる。そして翌朝は100%になっていてほしい。

でも、本当にそうだろうか。

ガソリン車ならガソリンスタンドまで出かけて給油するのだから、一度給油するなら満タンにするのは合理的だ。だが、自宅で充電できるBEVは事情が違う。帰宅してケーブルをつなぎ、その日使った電力を翌朝までに戻せればいい。

重要なのは「明日の朝、100%になっているか」ではない。「明日走る距離+αを走れるだけの電力があるか」なのだ。

今回、二日連続で200km以上走ってみて、そのことを強く感じた。300kmを超えるような長距離ドライブを毎日する人でなければ、55kWhのB5でも容量不足を感じる場面はそう多くないのではないか。

年に数回の遠出なら、月額0円の急速充電を使えばいい

オーバーヘッドコンソール+ルーフレール+調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付き)22万5500円。

とはいえ、「たまには片道350km、往復700kmのロングドライブにでかけることはあるよ」という声も当然あるだろう。

片道350kmといえば、東京駅基点で名古屋・仙台・新潟あたりまでいける距離だ。年に1~2回はこういう機会も考えられる。
そうなれば、当然急速充電を使わざるを得ない。
ここで毎月の固定費が発生する急速充電プランを使ったら、せっかく安い走行コストが台無しになってしまう。

筆者だったら、ここはトヨタの充電サービス、TEEMOを使う。

アンダーフロアはこうして見事にフラットになっている。空力性能も高いのだ。

トヨタ車以外でも加入できるTEEMO Liteなら月間の固定費はゼロ。50kW超~150kW未満の急速充電なら75円/分で利用できる(充電能力はB7が150kW、B5は105kW)。※ただし、TEEMOは10月1日に料金改定が予定されている。

たとえば年間1万km走った場合

家庭充電で95%、TEEMO Lite5%分で年間コストは約5万5217円。これなら1kmあたり5.52円でBEVのメリットを十分に享受できる。

筆者の自宅はだいぶ前に工事して(BEVを持っているわけじゃないのに)3kWの普通充電が引いてある。いまなら6kWの充電設備の方が現実的だろう。それなら、さらに「ほぼ普通充電だけで運用が楽」になる。

筆者がBEVを買うとしたら、リーフは最有力候補の一台だ。大きなクルマは好みではないし、SUVもパスしたい。BEVのゴルフ、あるいはカローラ的な存在を求めるとなると、リーフの良さが光る。

そして買うならB7ではなくB5。グレードも最上級のGではなくXを選ぶ。B5Xの車両価格は473万8800円
いまなら国の補助金(CEV補助金)が129万円。
これで、344万8800円。日産が示す東京都の補助金例は90万円。これが適用されれば、実質的な負担額は254万8800円まで下がる。

補助金ありきで考えてはいけないが、リーフなら停電時の電源としても機能する(メーカーオプションで2個の100V・AC電源 1500W)。

「BEVのスタンダード」になれるか? 筆者ならB7ではなくB5 Xを選ぶ

XとGの違いはGはヘッドライトがアデプティブ式になる。リヤランプが3Dホログラムタイプになる。回生ブレーキパドル、ヘッドアップディスプレイ、BOSEパーソナルサウンドシステム(10スピーカー)と装備されるのがGだ。

3代目日産リーフは、BEVのスタンダードとして、多くの人のショッピングリストに載れる実力がある。リストで検討するときには、バッテリー容量がどのくらい必要か? 装備はどこまで必要か? 運用は普通充電メインか急速充電もバンバン使うつもりか。そのあたりをぜひ検討したい。

結局は、「その日走る分+αの燃料・電力」があればいいし、翌日また「その日走る分+αの燃料・電力」があればいい。

リーフB5+普通充電(3kW)のみで1週間過ごしたが、まったく不自由することなく快適なカーライフが楽しめた。

ひとつ改良してほしいことといえば、充電ケーブルの重さ。もっと軽く取り回しのしやすいケーブルだとうれしい(これはBEV全般に言えることだが)。

日産リーフB5 X
全長×全幅×全高:4360mm×1810mm×1550mm
ホイールベース:2690mm
車重:1770kg
サスペンション:Fストラット式/Rマルチリンク式
駆動方式:FWD
駆動モーター
形式:YM52型交流同期モーター
定格出力:70kW
最高出力:177ps(130kW)/3600-11700pm
最大トルク:345Nm/0-3500rpm
バッテリー容量:55kWh
総電圧:372V
交流電力量消費率WLTCモード:131Wh/km
 市街地モード 115kW/km
 郊外モード 124kW/km
 高速道路モード 144kW/km
一充電走行距離(WLTCモード):469km
車両本体価格:473万8800円
試乗車はop付き
オプション:100V AC電源6万6000円/ディープクリムゾン/スーパーブラック2トーン7万7000円/オーバーヘッドコンソール+ルーフレール+調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付き)22万5500円/後席ヒーター付きシート+リヤヒーターダクト+バッテリーヒーター9万1300円 メーカーオプション合計価格45万9000円