モトグッツィ・V7スペシャル……1,595,000円(2026年1月より新価格へ)

2025年に新型車「V7スポルト」が加わったことで、V7シリーズはストーン、スペシャルと合わせて全3機種へ。試乗したのはワイヤースポークホイールのV7スペシャルで、オリジナルのV7(1960年代に登場)を彷彿させるグラフィックが特徴だ。
試乗車に装着されていたタイヤはミシュラン・ロードクラシック。サイズはフロント:100/90-18、リヤ:150/70-17だ。
車体色はエメラルドブラックと1969ホワイトの2種類。メッキ仕上げのミラーやグラブバーを標準装備するのはスペシャルのみ。クロームエンジンガード(3万1128円)やセンタースタンド(2万7669円)、タンクバッグ(3万5200円)、パニアケース(後述)はオプション品だ。
V7スペシャルの2021年モデル。排気量が853ccに拡大されたのがこの年で、最高出力は51.7PSから65.3PSへと約25%もアップした。なお、この年の価格は127万6000円だった。

燃焼一発ごとの蹴り出し感が明瞭に、特有の個性は健在だ

モトグッツィのV7は、筆者が「終のバイク」の候補に挙げている1台だ。昨今、ネオクラシックやネオレトロ、ヘリテイジなどと呼ばれるジャンルが人気を集めているが、V7シリーズは見た目だけでなく乗り味までもが「ガチ」なのだ。徐々に乗りやすく改良されてきたとはいえ、このイタリアンメーカーに初めて触れるライダーにとっては、今でも十分以上に歯応えがある。

その最大の理由は、車体に対してクランクを縦置きとした空冷90度Vツインと、後輪のシャフトドライブ駆動にある。ブリッピングすれば車体が左右に振られるほか、走行中はスロットルを急開するとリヤサスが伸び、戻すと下がる。こうしたトルクリアクションも含めてモトグッツィらしさであり、筆者はそうした挙動に愛おしさすら感じてしまうのだ。

さて、今回試乗したのは最新型の「V7スペシャル」だ。筆者は2021年に同モデルをテストしており、現在は最新の排ガス規制ユーロ5+に適合しながら、パワーとトルクは微増しているという。

筆者による2021年モデルの試乗インプレッションはこちら
853cc空冷90度V型2気筒OHV2バルブのエンジンを、車体に対して縦置きに搭載。トラベルエンデューロのV85TTと同系のパワーユニットだが、最高出力はV85TTの81.1PSに対して67.3PSに抑えられる。2025年モデルで最新のユーロ5+に適合しつつ、電子制御スロットルを新採用。クルーズコントロールが追加された。

2020年モデル以前、つまり744cc時代のV7シリーズは、パワーこそ控えめだったものの、まるで小太鼓を叩いているような小気味良いビート感と、軽快な吹け上がりが実に心地良かった。これに対して853ccとなった2021年モデルは、低回転域から明らかに力強くなり、燃焼一発ごとの蹴り出し感が向上。これをさらに推し進めたのが最新モデルで、もはやビッグツインと呼べるほどクルーザーのようなエンジンフィールとなった。

ライディングモードはロードとレインの2種類で、ロードモードでスロットルを大きく開けると、「これがV7スペシャル!?」などと感心するほどのダッシュ力を見せる。トラクションコントロールが付いているとはいえ、ウェット路面でそれを何度も試すのは躊躇するほどだ。一方、レインモードはレスポンスこそ若干穏やかになるものの、低回転域でのトルクが厚い分だけスロットル開け始めのテールリフトが強め。結果、Uターンのような小回りやスラロームでは、744cc時代よりもていねいな操作が求められるようになっている。

筆者が終のバイクとして望むV7像とは少し離れてしまったが、とはいえシフトチェンジのたびにダーン、ダーンと伝わる手応え(足応えか)や、乾式単板クラッチの分かりやすい節度感などは健在である。それに、クルーズコントロールが採用されたのは大きなプラス要素だ。ちなみにこのクルコン、設定後に速度の微調整ができないシンプルなタイプであり、スロットルのオーバークローズでキャンセルされないのでご注意を。

「これでいい」から「これがいい」へと変わる操安性

V7スペシャルのフレームは高張力鋼管ダブルクレードルで、フロントフォークは調整機構のないシンプルな正立式。フロントブレーキはシングルディスクで、タイヤはラジアルではなくバイアスだ。車両価格がホンダのCB1000F SEと同額とは思えないほどコストを抑えた車体構成ではある。だが、雨の中を市街地や高速道路、そして峠道を走ってみて、CB1000Fよりも緊張感が少なく、快適に移動できたのは事実だ。

ハンドリング自体は、フロントの舵角主体で旋回する昔ながらのタイプで、そこに縦置きクランクのジャイロ効果が生む直進安定性と、倒し込みの軽さが絶妙に溶け込んでいる。ミシュラン・ロードクラシックの排水性が優れているのか、ウェット路面において常に潤沢な接地感が体に伝わり、剛性の高すぎないフレームと相まって、しなやかにアスファルトを捉え続ける。ブレーキの効力も必要にして十分であり、10%を超える下り勾配の峠道でもコントロールしやすかった。

2026年1月に価格が改定され、V7スペシャルは159万5000円となった。これは水冷並列4気筒のホンダ・CB1000F(139万7000円~)やカワサキ・Z900RS(152万9000円~)、水冷並列3気筒のヤマハ・XSR900(132万円~)、水冷並列2気筒のスズキ・GSX-8T(129万8000円)などよりも高額である。先にも触れたが、いくら十分な性能を発揮しているとはいえ、足周りのグレードはこれらネオクラシック系の4車種には及ばない。それでもなおV7スペシャルを勧めるとすれば、縦置きVツインによる唯一無二の造型および走りであり、そこに魅了されたライダーなら、他のバイクなど候補にすらならないだろう。付け加えると、筆者も間違いなくその一人だ。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)

シート高は780mm。試乗車は純正アクセサリーのコンフォートシート(3万8500円)を装着していた。「00mmダウン」という具体的な数値の発表はないものの、足着き性はわずかに向上しているとのこと。ステップバーは前寄りで、バーハンドルは広め。一般的なネイキッドよりもリラックスした乗車姿勢となる。

ディテール解説

フロントフォークはφ40mm正立式で、調整機構はなし。フロントブレーキはシングルディスクで、φ320mmフローティングディスクとブレンボ製対向式4ピストンキャリパーの組み合わせだ。
リヤホイールの駆動方式はシャフトドライブで、BMWとは異なり左右のスイングアームで後輪を支える。ゆえにリヤショックは左右にある。リヤブレーキはφ260mmソリッドディスクと2ピストンキャリパーの組み合わせだ。
メッキ仕上げのバーハンドルおよびバーエンドで豪華な雰囲気を演出。特徴的なデザインの燃料タンクは容量21L(!)とかなり大きめだ。
左右ともシンプルなスイッチボックスだが、走行中に右側下部のボタンを長押しすればクルーズコントロールが呼び出せるなど、さまざまな機能が割り当てられている。
ヘッドライトと共通デザインのメーターパネル。バーグラフ式のタコメーターや時速、ギヤポジションインジケーターが常時表示されるので見やすかった。
試乗車には純正アクセサリーのコンフォートシートが装着されていた。V7スペシャルの標準装着シートは、タックロール調にデザインされたブラックの表皮が使われている。サーモフォームドパニアケース(6万3800円)や、それを装着するためのパニア用レール(6万7387円)はオプション扱いだ。
前後一体型のシートはキーロックを解除することで取り外し可能だ。収納スペースはほぼないと考えていいだろう。
モトグッツィのエンブレム「翼を広げた鷲」をモチーフとしたDRLを持つ特徴的なヘッドライト。灯火類はすべてLEDだ。
コンパクトかつシンプルなデザインのテールランプ。フェンダーは前後とも樹脂製だ。

V7ストーン/スペシャル/スポルト(2025年モデル)主要諸元

エンジン 4ストローク 空冷90°V型2気筒 OHV2バルブ
総排気量 853 cc
ボア×ストローク 84 ㎜×77 ㎜
最高出力 49.5 kW (67.3 HP) / 6,900 rpm
最大トルク 79 Nm / 4,400 rpm
燃料供給方式 電子制御燃料噴射システム
始動方式 セルフ式
トランスミッション 6 速リターン
クラッチ 乾式単板
フレーム 高張力鋼管ダブルクレードル
フロントサスペンション Stone/Special:φ40 ㎜ 油圧式テレスコピックフォーク
            Sport:φ41 ㎜ 油圧式倒立フォーク プリロード調整機能
リアサスペンション 油圧式ツインショックアブソーバー プリロード調整機能
フロントブレーキ Stone/Special:320 ㎜径ステンレスフローティングシングルディスク Brembo製 4 ピストンフローティングキャリパー
         Sport:320 ㎜径ステンレスフローティングダブルディスク Brembo 製 4 ピストンモノブロックラジアルマウントキャリパー
リアブレーキ 260 ㎜径ステンレスディスク フローティング 2 ピストンキャリパー
フロントタイヤ 100/90-18″
        Stone/Sport:軽量アルミキャストホイール 18”×2.5”
        Special:ワイヤースポークホイール 18”×2.5”
リアタイヤ 150/70-17″
        Stone/Sport:軽量アルミキャストホイール 17”×4.25”
        Special:ワイヤースポークホイール 17”×4.25”
シート高 780 ㎜
燃料タンク容量 21L
乾燥重量 Stone:198 kg / Special:203kg / Sport:200kg
車両重量 Stone:218 kg / Special:223kg / Sport:220kg
     ※走行可能状態(燃料は90 %搭載時)
製造国 イタリア