目次
カワサキ・ニンジャ400……770.000円
筑波サーキットに通う中で感じたこと
初っ端から私的な話で恐縮だが、今から14年前に40歳を迎えた僕は、突如として“人生で1度くらいはサーキットを本気で走ってみよう‼”と思い立ち、2010年型のトライアンフ・デイトナ675を購入した。あの頃のスーパースポーツは選択肢が豊富で価格が安く、その中からイギリス生まれの3気筒車を選んだ理由は、試乗仕事で親近感を抱いたからだが、残念ながら僕の技量では、デイトナ675の潜在能力は引き出せなかった。
当時の僕が熱心に通ったのは茨城県の筑波サーキットで、目標に設定したタイムは1分5秒台。なお筑波で1分5秒台は、エキスパートライダー+ミドル以上のスーパースポーツなら簡単に出せるし、近年の全日本/地方選手権JP250クラスの上位陣ではごく普通になっているものの、一般的なライダーの目線で考えれば、速いほう……と言って差し支えないタイムだと思う。
もっとも数年に渡って走り込んでも、僕のベストタイムは1分7秒フラットだった。ただし、後に車両を1985年型TZR250に変更して走り込みを続けたところ、サーキット通い10年目にして、ようやく1分5秒台をマーク。そういった経緯を経て、一般的なライダーがサーキットで潜在能力をきっちり引き出せるのは、最高出力が50ps前後で車重が150~160kg近辺の250ccまでじゃないか?……と、僕は感じたのだ(2010年型デイトナ675は、最高出力が128psで、装備重量は185kg)。
まあでも、近年の250ccフルカウルスポーツが自分にとって理想的なのかと言うと、必ずしもそうではない。何と言ってもTZR250の最高出力・装備重量が45ps・142kg、パワーウェイトレシオが3.15ps/kgだったのに対して、現代の250ccクラスで最も運動性能に優れるホンダCBR250RRは42ps・168kg・4ps/kgなのだから。そんなわけで、もう少しのパワーともう少しの軽さが実感できる現行車を探していた僕が、数年前の初試乗時に“コレだ‼”と感じたのが、48ps・167kg・3.48ps/kgの現行ニンジャ400なのである。
ライバル勢とは何が違うのか?
先代に対して4psのパワーアップも実現しているけれど、2018年から発売が始まった現行ニンジャ400の最大の注目要素は、ニンジャ650の排気量縮小版という従来の手法に替えて、ニンジャ250の排気量拡大版という路線に舵を切り、先代から44kgもの軽量化を果たしたことだろう。ただし、驚異のダイエットを実現していても、現行ニンジャ400はTZR250より20kg以上重いのだが、約40年前の旧車の維持に苦労している身としては、ある程度の重さは許容範囲と思えたのだ。
もっとも現代の400ccクラスには、ニンジャ400以外にもサーキットが楽しめるフルカウルスポーツが存在する。以下に記す最高出力・装備重量・軸間距離・キャスター角・トレールを見れば、各車の素性が理解できるだろう(最高出力を除く数値は、大雑把に表現するなら、小さければスポーツ指向で、大きければツアラー指向)。
●カワサキ・ニンジャ400……48ps・167kg・1370mm・24.7°・92mm
●ホンダCBR400R……………46ps・191kg・1410mm・25.3°・102mm
●ヤマハYZF-R3………………42ps・169kg・1380mm・25°・95mm
●KTM RC390…………………44ps・164kg・1343mm・23.5°・84mm
ん?、改めて数字を記してみると、CBR400Rの車重と軸間距離以外は微々たる差のような気がしないでもないし、RC390の数字からはクラス随一のヤル気が伝わって来るものの、僕はやっぱりニンジャ400に惹かれるのだ。その理由を明確にしたいという事情に加えて、これまでに経験していないロングランでどんな印象を抱くかを把握したかったので、今回のガチ1000kmではニンジャ400を取り上げることにした。
エンジン特性とライディングポジション
当記事の撮影兼ツーリングで久しぶりにニンジャ400を走らせた僕は、このバイクに好感を抱いた理由のひとつが、エンジンだったことを即座に認識。4スト400cc並列2気筒と言ったら、低中回転域からトルクフルで実直という印象を抱く人が多い気がするけれど(事実、CBR400RとYZF-R3はそういう特性で、4スト単気筒のRC390も味気は希薄だと思う)、ニンジャ400のエンジンは抑揚に富んでいて、低回転域では適度なドコドコ感、中~高回転域では左右気筒が力を合わせて駆け上っていくかのような爽快感が味わえるのだ。
ちなみに、2輪メディアがニンジャ400と兄弟車のニンジャ250を取り上げる際は、高回転域まで回す楽しさなら250、高回転域まで回さなくても十分に速いのが400、という言葉を使うのが通例になっている。各車の最高出力と最大トルクの発生回転数は、250:12500・10500rpm、400:10000・8000rpmだから、2台を同条件で比較したら誰だってそう思うだろう。
でも今回の試乗で僕は、高回転域まで回さなくても十分に速く、高回転域まで回す楽しさもしっかり味わえるのがニンジャ400……と感じた。そしてそういうエンジンを搭載しているからこそ、僕はこのバイクが好きになったのだ。
エンジン特性に続いて、僕が興味を惹かれたのはライディングポジション。と言っても現代の400ccフルカウルスポーツの中で、サーキットや峠道を重視した戦闘的な乗車姿勢を採用しているのはRC390のみで、レーシーなルックスとは裏腹に、ニンジャ400の乗車姿勢はスポーツツアラー然としている(CBR400Rも同様。YZF-R3はハンドルが低いけれど、戦闘的ではない)。
だから数年前にニンジャ400を初試乗したときは、そこはかとない物足りなさを感じたのだが、今回は意識が街乗りやロングランに向いていたため、むしろスポーツツアラー然とした乗車姿勢がありがたかった。そんなわけで、この件については安易な是非は語れないものの、僕がニンジャ400のオーナーになったら、少なくともシートに関しては、座面高がノーマル+30mm(785→815mm)となる純正アクセサリーのハイシートに変更すると思う。もちろんサーキットがメインなら、低めのハンドルやバックステップの導入を検討するだろう。
さて、前フリにかなりの文字数を使ってしまったため、今回のインプレは部分的な内容しか記せなかったので、近日中に掲載予定の第2回目では、一般道を主体にして一泊二日で東京都西部⇔新潟県上越市の約700kmを走った、ロングランでの印象を紹介したい。
主要諸元
車名:ニンジャ400
型式:8BL-EX400L
全長×全幅×全高:1990mm×710mm×1120mm
軸間距離:1370mm
最低地上高:140mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.7°/92mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:398cc
内径×行程:70.0mm×51.8mm
圧縮比:11.5
最高出力:35kW(48ps)/10000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/8000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
1速:2.830
2速:1.930
3速:1.420
4速:1.140
5速:0.960
6速:0.840
1・2次減速比:2.218・2.928
フレーム形式:トレリス(ダイヤモンドタイプ)
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:ボトムリンク式モノショック
タイヤサイズ前:100/70R17
タイヤサイズ後:150/60R17
ブレーキ形式前:油圧シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:167kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:31.1km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:25.7km/L(1名乗車時)