目次
ハーレーダビッドソン・スポーツスター S…….1,858,000円〜
ストーンウォッシュホワイトパール…….1,887,700円
これまで“クルーザー”にカテゴライズされていたスポーツスターとは全く別物。完全なブランニューモデルとして新規投入されたSPORTSTER Sに試乗した。
スポーツスターと言えば、1957年誕生以来親しまれて来た。ハーレーダビッドソンのバリエーションの中では、比較的フレンドリーな存在として、根強い人気を獲得してきている。トランスミッションが一体化されたレボリューションエンジンを搭載。同社製品のエントリーモデルとしても多くのユーザーに親しまれる見逃せない存在なのである。
しかし今回登場のSPORTSTER Sは、どこから見ても全てが新しい。斬新なデザインで身を包み、搭載エンジンはPan America 1250と同様の新型REVOLUTION MAX 1250Tを採用。
水冷のDOHCヘッドを持つ新世代エンジンだ。もちろん吸排気や制御系が異なり、それぞれに相応しい専用のチューニングが施されている。
スペックデータで比較すると、最大トルクデータが少し抑えられているが、その発生回転数は6,000rpm。Pan Americaより750rpm低く、実用域ではより太く柔軟な出力特性が期待できそう。
全体的なフォルムは、極太な前後タイヤの多くを露出させ、車体は低く長いワイルドな印象。基本はシングルシーターと割り切られ、全体からダイナミックな雰囲気が漂う。
既存モデルでは、FXDRやFat Bob 114 にどこか通じる感じもあるが、完全なる新作に相応しい斬新なスタイリング。同社の新たなスタンダードモデルにならんとするチャレンジングな意欲的新製品なのである。
エンジンも車体の剛性メンバーに加えた新開発フレームを採用。高剛性と低重心のデザインを誇っている。しかもスリムな特性を持つ横置きVツインエンジンの特性を活かし、90mmという低いロードクリアランスながら、34度のバンク角が確保されている点も見逃せない。
また専用のアクセサリーパーツやオリジナルグッズも豊富に取り揃えられ、オーナー好みのカスタマイズが楽しめる。タンデムライディングにも対応しているそう。
いずれにせよ同ブランドに新風を吹き込む注目のモデルであることは間違いない。
コーナーも遠慮する必要なし、スイスイと走れる。
さて、試乗車を目前にすると、低く長いフォルムが印象的。とても立派に見える。ただ車庫に入れてみるとサイズ的には意外とコンパクト。
サイドスタンドを跳ねて車体を起こす時もズッシリと重いが、シートに跨がると両足はベッタリと楽に地面を捉えることができるので、扱いに不安は感じられなかった。前方に投げ出すような感覚で両足をステップに乗せ、低い位置にあるワイドなハンドルに手を伸ばす。何とも独特なライディングポジションである。
グルリと前方の周囲に目をやると、ショートフェンダーの先端がギリギリ目視できる。見えるタイヤのトレッド面がフルに露出する剥き出し感覚。ついでに言うとヘッドランプの存在もライダーからはほとんど見えない。さらにバックミラーはバーエンドタイプだ。
ライダー目線からの景色は何とも普通ではないスッキリと新鮮な驚きに溢れている。これまでにないその魅力に、個性を主張できる独特の満足感が得られる事は請け合いだが、水(泥)跳ねは必至故、雨の日には乗りたくないと思えたのも正直な感想である。
前寄りなステップ位置はそれなりに高さもあって、腰から膝までの両股は水平に近い感覚。燃料タンクをキチンとニーグリップできるフィット感はこれまでの同社製品らしくない雰囲気を覚えたが、ライダーとしては好印象である。
それにしてもフロント160サイズの17インチ、リヤ180の16インチタイヤは共に70偏平で太く迫力がある。見るからにどっしりと立派に見える重要なファクターになっている事は間違いないだろう。
操縦性にはさぞや癖が強いのではないかと懸念されたが、実際に走り始めると、トレッドクラウン形状が絶妙なようで、素直に扱えてしまい、小回りUターンもし易かった。
コーナリングでは若干の切れ込みを伴うが当て舵ぎみでコーナーへ進入し、その操舵力を緩める動作によって寝ていた車体が自然と起きてくる。そんな操縦法に慣れると、ワイディングロードでもスムーズで快適。
いわゆる一般的スポーツバイクと比較すれば、車体(ロール)挙動はゆったりしているが、同社製品に定着していたこれまでのイメージを覆すほど程素直で軽快な走りが楽しめる。バンク角も不足無く、スポーツ性の発揮が心地よいのである。
エンジンの電子制御はレイン、ロード、スポーツの3モードに加えて自分好みのカスタム設定が2つプリセット可能。今回は3モードの比較を試みたが、通常はロードでフル適応できる感じ。スポーツを選べば、最もホットな加速性能を発揮し、右手ひとつの操作でおよそ周囲の誰にも負けないレベルのポテンシャルが簡単に楽しめてしまう。
レインを選べば、穏やかな走りになり、右手の操作に対する電子スロットルのレスポンスがゆるやか。滑りやすい路面でも失敗の少ない走りができるわけだ。
印象的なのは、市街地から高速迄、実用レベルで凄味のあるハイパフォーマンスが遺憾なく発揮される柔軟な出力特性である。
端的に言うとダイナミックな走りもジェントルな走りも自由自在になる。高速ツーリングではオートクルーズを利用しながら、前進に風を浴びる。バイクならではの乗り味を身をもって知る、あえて原点回帰的な走りもなかなか乙なものだと思えた。
前後サスペンションはストロークが小さく硬めだが、太いタイヤも相まって、初期の小さな衝撃吸収性はなかなかのレベル。舗装路を走る限り、ドッシリとした安定感と共に快適なクルージングが楽しめる。
今回試乗中、200Km弱の走行で燃料警告表示が出た。この時点でまだ4分の1(約3L)が残っているそう。
全走行232kmで実走行燃費を計測すると、ハイオクガソリン10.5Lの給油で燃料消費率は22.1km/Lという結果。
ちなみにローギヤで5,000rpm回した時のスピードは51km/h。6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は3,400rpm。120km/hでは4,000rpmになる。
試乗を終えてSPORTSTER S を眺めると、街のアチコチで注目を集めた存在感が改めて印象深い。
斬新なフォルムに加え、風を切り裂き、頭から爪先まで前進に走行風を浴びる乗り味もまた、新鮮かつバイクらしい魅力と感じられた。
足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)
ご覧の通り、両足はベッタリと地面を捉える事ができる。膝にもユトリがあり、200kgオーバーの車体を支えるのに不安は感じられない。