リトルカブ? いいえ、スーパーカブ50を12インチ化しました。| すたいるマスターさんによるカスタムカブ第2弾

所有するバイクのほとんどを自らカスタムして理想の姿に変身させてしまう「すたいるマスター」さん。前回はキャストホイール+ディスクブレーキ仕様のスーパーカブを紹介したが、今回はリトルカブ風にカスタムされた個体を紹介しよう。

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
店主として営む焼き鳥屋さんの屋号から「すたいるマスター」さんを名乗る。

前回は上写真左にあるブルーのスーパーカブを紹介した。その記事でも触れたように、製作者のすたいるマスターさんは東京都羽村市で焼き鳥屋「やきとりBarすたいる」を営んでいる。日々焼き鳥を焼いているわけだが、仕事と同じように情熱を傾けているのがバイクのカスタム。所有するバイクのほとんどを自分で作り出したパーツや加工技により別物と呼べる姿に変身させている。カスタム歴は30年以上というから筋金入りだ。

一見するとリトルカブをカスタムしたかのような印象。

すたいるマスターさんが2024年で最後になったカフェカブミーティングin青山へ持ち込んだのが前回紹介した前後ディスクブレーキとキャストホイール化されたスーパーカブ。最新作でのイベント参加だったが、それ以前にスーパーカブをカスタムした個体も保管してある。それが今回紹介するリトルカブのように見えるスーパーカブなのだ。

前後ホイールを12インチ化している。

フロントフェンダーや「かもめ」ハンドル、そして小径ホイールだからリトルカブをベースにしていると思い込んでしまうのだが、実は17インチのスーパーカブをベースに作り込まれたもの。しかもリトルカブの14インチより小径な12インチホイールを履かせている。このホイールはモダンワークス製のNSR50用なのだ。2.5J×12ホイールに履かせているタイヤは100-90/12のレインタイヤ。なんでもレインタイヤだとすり減ってきた状態でグリップ力が上がるので、レースで使用済みのタイヤを安価に再利用できるのだとか。

OVER Racing製マフラーを加工して装着する。

とはいえ、やはり見た目はリトルカブ風。12インチタイヤ&ホイールとしつつ、前後サスペンションを変更してローダウンしてホイールとフェンダーの隙間を調整してあるから違和感がないのだ。大変な作業だと想像できるが、その割に見た目は「リトルカブでしょ?」と言われてしまう完成度。長年カスタムを続けてきた人だと、見るからにカスタムバイク風では面白味がないのかもしれない。

テレスコピック式フォークに変更しつつディスクブレーキを装備。

変更したサスペンションだが、フロントフォークはカブ純正のボトムリンクを使うのではない。これも前回紹介した個体と同じようにDio用フロントフォークを移植してあるのだ。そのためには専用のステムが必要になる。でもそんなもの市販されているわけもない。そこでDIY製作が得意なすたいるマスターさんは素材から削り出してステムをワンオフしてしまう。さらにフォーク支持部を隠すため、JA07以降でテレスコピック化されたスーパーカブと似た形状のカバーまで作り出している。樹脂パーツの製作も得意なのだ。

Dio用フォークを加工しつつステムをワンオフ製作して取り付けた。

もちろんDio用フォークはそのまま使わず、12インチ化するタイヤ&ホイールに合わせてショート加工している。そこにキャストホイールを組み合わせているのだ。さらにフロントには4ポットキャリパーによるディスクブレーキへと変更している。これもDio用フォークに合わせるため、キャリパーサポートを削り出しでワンオフ製作したうえで装着している。あちこちで「ないものは作る」が当たり前のように行われているのだ。

リヤにも12インチホイールとディスクブレーキを装備。

リヤにも同じモダンワークス製12インチホイールを組み込んでいるが、よくよく見ればこちらもディスクブレーキ化されている。やはりキャリパーサポートを製作して、HRC製RS250用キャリパーを装着しているのだ。これも前回紹介した青いスーパーカブと同じ手法によるもの。普通ならスイングアームを変更してロングホイールベースにしたりするものだが、すたいるマスターさんは人と同じことを避けるため純正スイングアームをあえてそのまま使っている。ただし、リヤショックはOKD製のショートタイプに変更して車高を調整している。

「かもめ」ハンドルをショート加工してある。

リトルカブ風スタイルの決め手でもある「かもめ」ハンドルは、古いカブから移植したもの。ただし、そのまま使うことはせず左右ともハンドルパイプを途中で切断。再溶接により短く切り詰めているのだ。ブレーキをディスク化してあるため、フロントのマスターシリンダーはレバーごとCBR600用を移植。リヤも左レバーで操作するため、同じものを流用している。さらに「かもめ」ハンドルのメーターは使わずデジタルメーターとするため上面を鉄板と樹脂を組み合わせて平らに成形する。そこへSP武川製デジタルメーターとインジケーターを埋め込むように処理。イグニッションスイッチも12V化されて以降のカブと同じ位置へ変更している。

リヤキャリアは手で曲げたステンレス製にしてある。

これらカスタムは工作機器がなくてはできないことばかりなので、特殊な工具なしには難しい。ところが、一カ所だけ誰にでもできる(?)カスタムパーツが用いられている。それが小ぶりなリヤキャリア。ホームセンターでも買えるステンレスの丸棒を組み合わせたもので、溶接こそしなくてはならないが、それ以外はなんと手による加工。熱で少々炙った丸棒をエイヤッと力一杯曲げるのだ。これほど左右対称にするのは難しいかもしれないが、誰でも真似できそう。

ボアアップしたエンジンにPWK28キャブレターをセット。

もちろんエンジンにも手を加えてある。SP武川製のボアアップキットを組み込み排気量を拡大しているのだ。定番ではあるが効果的な手法で、それだけでも十分にパワフルになるが吸排気系を変更することで更なるパワーアップが見込める。そこで吸気にはPWK28キャブレターをセット。排気にはOVER Racing製マフラーを用いつつエキパイを加工して装着している。この状態でセッティングが決まると、もやはスーパーカブとは別物のエンジンに仕上がる。前後ディスクブレーキはパワーアップに対応させるためでもあったのだ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…