SHOWAの超高性能「大型車用ギアポンプ駆動・サスペンション・スプリングアジャスター」機能をフロントフォークにも搭載|EICMA2024

「ギアポンプ駆動サスペンションスプリングアジャスター」を倒立式SFFフロントフォークに内蔵。
「NISSIN」「KEIHIN」「SHOWA」の各製品ブランドを展開(2020年に経営統合)する、四輪車と二輪車の新技術・先進技術カンパニー「日立Astemo」は、2024年11月5日~11月10日にイタリアで開催されたモーターサイクルショー『ミラノショー(EICMA)2024』に出展。EICMA2023で発表したリアサスペンション用の「大型車用ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」機能をフロントフォークにも搭載したモデルを発表。これによりすでに市販車両への搭載実績がある同社独自の電子制御サスペンションシステム「 SHOWA EERA®(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」の追加機能「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス )」がさらに進化。高頻度&高速での動作が実現し、スプリングアジャスターを使った足着き性向上のための車高調整機能がさらに進化した。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

走行中は最適車高を維持しながら、車両停止時には自動的に車高を低下して足着き性を向上

2023年のEICMA2023で発表されたリアサスペンション用「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」は、停車や発進に合わせて自動で車高を調整する、SHOWA独自の電子制御サスペンションシステム「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」の追加機能「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」機能を大幅に進化させたシステム。

具体的には、自動車高調整機構である「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」に導入されたストロークセンサーが、走行中の車高を検知し、走行中は最適車高を維持しながら、車両停止時には自動的に車高を低下。また、足着き時(停車時)にも車高を検知。走行中は最適車高を維持し、車両停止時には自動的に車高を下げ、最適な足着き性を確保するしくみ。

リアサスペンション用「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」は、「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」の機能を継承しつつ、リアサスペンションユニットに油圧ポンプユニットを一体化。走行開始後に車高を上げる作動時間を約6秒とするなど、2022年のEICMA2022で発表した、ABSモジュレーターの油圧ポンプを転用したシステムの作動時間を、約半分まで短縮した。

「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」に採用の油圧式ギアポンプ。
「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」に採用の油圧ポンプユニット。
リアサスペンションユニットに油圧ポンプユニットを一体化させたモデル。

インナーチューブ径Φ43mm以上の「倒立式SFFフォーク」に搭載可能

ショーワの高性能フロントフォーク「倒立式SFF」に「ギアポンプ駆動サスペンションスプリングアジャスター」を内蔵。

今年のEICMA2024では、上記の「ギアポンプ駆動サスペンションスプリングアジャスター」をフロントフォークに内蔵。「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」はリアサスペンションのみの搭載でもその効果を十分に発揮するが、前後サスペンションに高速で作動する車高調整機能を装備することで、 「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」のメリットを最大化することができる。

このシステムは、インナーチューブ径Φ43mm以上の「倒立式SFF(Separate Function Front fork/セパレート・ファンクション ・フロントフォーク)」に搭載可能。EICMA2024で発表された二輪車用電子制御技術「SHOWA EERA® Gen2(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」のフロントフォーク用ユニットとの連携搭載も可能。

独自の第二世代電子制御サスペンションシステム「SHOWA EERA®(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment) Gen2」。写真はEICMA2024で発表されたフロントフォーク。
独自の第二世代電子制御サスペンションシステム「SHOWA EERA®(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment) Gen2」。写真右はEICMA2024で発表されたフロントフォーク。写真左はEICMA2023で発表されたリアショック。

「ギアポンプ駆動サスペンションスプリングアジャスター」はギアポンプ式に加え、市販車への採用実績があるセルフレベルポンプ式、また先に発表したABSモジュレーター式も同時にラインナップすることで、搭載車両のキャラクターに合わせ、 「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」の機能とパフォーマンスを選択することができる。

ギアポンプ駆動の最大のメリットは、高頻度および高速動作が実現できること。たとえば足着き性の改善を試みるなら、信号で止まるたびにサスペンションを強制的に上下させる必要あり。また信号間の距離が短い街中では、その作動時間を高速化する必要がある。ではどうするか?

高頻度・高速動作を実現するためには、耐久性のアップは必須。当機構は、同社が取り扱う大型船外機の跳ね上げ機構「パワーチルトトリム」で実績があるオイルポンプ技術を応用。機構の高効率を維持しつつ、二輪車用サスペンションの油圧スプリングアジャスターに最適なサイズへと変更。また耐久性向上のためにシ ール類の素材や形状を再検討し、ポンプのそのものの耐久性をアップ。

ショックユニット外側にセンサーやギアポンプユニットを搭載することができたリアサスペンションとは違い、フロントフォークへの搭載は、アウターチューブ内にすべてのアイテムを同軸で配置させる必要がある。それを実現するためには、すべてのアイテムをコンパクトにパッケージすることが不可欠。

またフロントフォークは構造上、上端面をトップブリッジにクランプすることが必要。加えて端面しか内部にアクセスできないことなどから、制約も多数発生。EICMA2024に展示されたフロントフォークは、これらの制約をすべてクリアした、技術者たちによる渾身の力作といえよう。

進化し続ける、今後の「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」と「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」に期待

EICMA2024では、前後サスペンションに「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」を搭載した車両を展示。乗車状態で車高を上下させ、その作動スピードとともに、車高調整機構のメリットを体感してもらう体験型の展示を実施。

走行を疑似体験しながら、その走行シーンに合わせて車高調整機能付サスペンションを動かし、その自然な上下動とギアポンプ式車高調整機構の特徴である上昇時のスピード、足着き性の改善という、“生の”「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」機能を披露した。

また二人乗りや荷物の積載などによる車体の姿勢変化を自動で調整する、「オート・ ロード・コンペンセーション機能」。さらには「リアのみ」「前後セット」など、車高調整機構付きサスペンションの装着バリエーションによる動きやメリットの違いも体験型展示された。

「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」は、数多くの独自技術の積み重ねによって実現し、それによって足着き改善機構のニーズを喚起。二輪市場に定着しつつある「ギアポンプ駆動 サスペンションスプリングアジャスター」と「HEIGHTFLEX®(ハイトフレックス)」は、バイクメーカーやユーザーにさらなるメリットを提供できる技術として、今後ともさらなる研究開発が行われる。

乗車状態で車高を上下させ、その作動スピードとともに、車高調整機構のメリットを体感してもらう体験型の展示を実施。緑の光線で車高の上下が分かりやすいように表示。

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