ABSモジュレーターの油圧ポンプを転用!電動式より低コストでスプリングアジャスター機能を実現|日立Astemo【EICMA2022】

前後サスペンションスプリングアジャスターのリアショック本体。
四輪車と二輪車の新技術・先進技術カンパニー「日立Astemo」は、「SHOWA」「NISSIN」「KEIHIN」の各製品ブランドも展開中(2020年に経営統合)。日立Astemoは2022年11月8日~11月13日にイタリア・ミラノで開催される世界最大のモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ)」において、様々な最新技術と新製品を紹介。ここではABSのモジュレーターの油圧ポンプを転用し、流路の切り替えバルブ構造を最適化することで、サスペンションの油圧スプリングアジャスター駆動を実現した「前後サスペンションスプリングアジャスター」をご紹介しよう。

REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

日立Astemo 前後サスペンションスプリングアジャスター

前後サスペンションスプリングアジャスターのフロントフォーク本体。

ディスクブレーキのロックを阻止するABS(アンチロックブレーキシステム)は、ブレーキ液圧の減圧後、ブレーキフルードをマスターシリンダーに掻き戻すため、モジュレーター内にポンプを設置している。

日立Astemoが開発中の「前後サスペンションスプリングアジャスター」は、ABSのモジュレーターの油圧ポンプを転用し、流路を切り替え。またバルブ構造を最適化することで、サスペンションの油圧スプリングアジャスターを駆動しているのがポイントだ。

ABSモジュレーターは現行の電動スプリングアジャスターよりも、シェアは圧倒的多数を占める。そのため、電動スプリングアジャスターに比べ、安価に電動車高調整機能を実現することが可能。

写真のフロントフォークはABS駆動用のモジュレーターに加え、サスペンション用の2chモジュレーターを設置。各チャンネルが、フロントとリアの油圧アジャスターを駆動。これにより、様々な機能の実現が可能となる。

例えば、ジャッキ位置センサーを取り付けることで、モード変更による車高調整を実現。さらにストロークセンサーを追加することで、積載に応じて自動でプリロードを調整し、車高を適正に保つ、自動荷重補正機能が実現できる。

同品のマスターシリンダーと油圧ポンプ本体。

同品は油圧ポンプを用いた構造により、ジャッキアップの時間は約15秒、ジャッキダウンの時間は約3秒(※注1)と、従来の製品と比較しても極めて速い速度での動作を実現。

そのため、車両を停車させるたびに車高を瞬時に下げて足着き性を改善。また、走行時は良好な性能・乗り心地が得られる車高まで、自動的にシート高を上昇させる「HEIGHTFLEX機能」も視野に入れた開発が進められている。

日立Astemoは2021年のEICMA出展時、小型車両向けに2chモジュレーターを用いて1chをサスペンション用ジャッキ駆動に使用。2022年は対象製品を広げ、大型車両まで適応する提案としている。

同商品はミニバイク用を皮切りに、ビッグバイク用までの製品展開を早急に進めるべく、現在開発が進行中だ。

※注1:スプリング荷重は900kgf、アジャスタ作動量は20mmの条件下

前後サスペンションスプリングアジャスターのフロントフォーク上部。
前後サスペンションスプリングアジャスターのリアショック上部。
前後サスペンションスプリングアジャスターのフロントフォーク上部。
前後サスペンションスプリングアジャスター装着車。

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