原付二種?いいえ、140ccだから高速道路も守備範囲。Nicot Moto KorakADV140とはどんなバイクなのか?|試乗記

Nicot Moto KorakADV140……360,000円(消費税込み)

最近、アジア圏から個性的かつ魅力的なバイクが次々と上陸してきている。今回紹介するNicot MotoのKorakADV140もそんな1台。140ccエンジンを搭載したミニ・アドベンチャーバイクである。その走りがいったいどんなものなのか。カートコースで試乗してみることにした。

140ccエンジンを搭載したミニバイク

Nicot Motoは2014年にスタートした中国の二輪メーカーだ。当初は部品やアクセサリーを製造していたが、欧州からエンジニアを招き入れて技術力を高めていった。現在ではエンジンから車体までを自社で開発するメーカーに急成長を遂げている。

今回紹介するKorakADV140はNicot Motoのミニ・アドベンチャーモデル。12インチの小さな車体に自社製の140ccエンジンを搭載している。このサイズで軽二輪の排気量というのがこのバイク最大のポイント。どれくらいパワフルな走りを見せてくれるか気になるところである。

車体は小さくても走りに関する機能については手抜きなし。倒立フォークやリアのシングルショック、前後油圧ディスクブレーキなど装備も充実したミニアドベンチャーモデルとなっている。

パワフルなエンジン

エンジンはセルで一発始動。温まってからレーシングしてみるとかなりエキサイティングなフィーリングだ。レスポンスが良く、排気音はレーシングマシンのよう(音量は若干大きめ)。走り出す前から元気な走りがイメージできて期待してしまう。

車体が軽いので回転を上げなくても発進加速は力強い。低回転はレスポンスがおだやかで扱いやすく、回転を落としてもギクシャクすることなく粘ってくれる。
しかし単に扱いやすいだけではなかった。4000rpmを過ぎたあたりから俄然元気になり、シャープに伸びていく。レブリミットである8500rpmを簡単に飛び越えて9000rpm位までは軽く回ってしまう。高回転でも振動が突然増えるようなこともなくスムーズだ。スペック上は6.8ps/7500rpm、最大トルク9.7Nm/5500rpmと控えめなのだが、それが信じられないくらい元気なフィーリングである。

ハイチューンエンジンのような過激なパワー感ではないけれど、アクセルを開けるとスーッと結構な勢いで加速していく。この感覚は独特で、小さな車体に排気量の大きなエンジンを搭載したKorakADV140ならではのフィーリングだろう。パワーバンドが広いことに加えてミッションもほどよくクロスしているのでカートコースはとても走りやすく、攻めるのが楽しくなるエンジンだった。

このエンジンの2面性がKorakADV140の魅力であることは間違いない。ストリートやツーリングでは扱いやすい低速域を使い(低回転でも小さな車体に対して十分なトルクがある)、ワインディングでは高回転のエキサイティングさを楽しむというような使い方をすることができる。今回の試乗では高速道路は走っていないが短時間の移動程度であれば十分にこなせそうな印象だった。

車体が小さいから生まれる可能性

車体や足回りもコースを走るのに問題ないくらいにしっかりしている。サスペンションのバネレートも適正でダンピングもほどよく効いている印象だ。ハンドリングが素直だからコースを攻めるのは楽しい。今回は新品のブロックタイヤであることに加え、路面温度が非常に低かったのでソコソコのペースにとどめておいたが、12インチのハイグリップタイヤを履いて走ってみたいと思った。本格的にコースを攻めたら物足りない点が出てくる可能性はあるが、カスタムすることで対策していくのもまた楽しいだろう。

走っていて一つ気になったのはブレーキの効き。特にフロントブレーキのタッチが硬すぎる。現状だとペースを上げると思いきりレバーを握る感じになるので細かいコントロールが難しい。新車でアタリが出ていないということもブレーキの効きには若干は関係しているかもしれないがタッチは別。もう少しマスターシリンダー径を小さくしてみたい。

多少気になるところはあったが、予想していた以上に完成度が高く、面白いバイクだった。しかしKorakADV140の一番の魅力はバイクのパフォーマンスや完成度ではなく、この小さな車体に140ccのエンジンを搭載したことで新しい楽しみ方の可能性が生まれている点だと思う。オフロードライダーだったら高速道路で移動して林道、廃道ツーリングも面白いだろう。本格的オフロードバイクのような走破性はない代わりに小さくて足つきの良い車体、足回りの良さはハードなセクションで大きな武器になるはずだ。
乗り心地も良いから普段街乗りに使って、ツーリングやミニバイクコースを走るような使い方にもぴったり。原付二種よりも維持費は若干上がるかもしれないけれど、その代わりに使える幅が大きく広がるのである。

(今回の撮影では富士スピードウエイカートコースにご協力いただきました)

ポジション&足つき(身長178㎝ 体重)

ポポジションはライダーの体格や乗り方に寄って感じ方が異なるだろう。テスターの身長だと少し膝の曲がり方が少しきつい感じがする。加えてハンドル位置が低いのでターンやUターンする時などは意識して足を開かないと膝とハンドルが当たってしまう。ただ、普通に走っている分には窮屈な感じはなく、数時間走り続けても問題なし。乗り心地も良かった。

もしも自分のバイクだとしたらハンドルの位置はもう少し高くしておきたい。フロント荷重は減るけれど、そこは乗り方や着座位置で調整できるし、それも走らせるうえでの楽しさにつながる。ハンドルと合わせてシートのスポンジを少し厚くするというやり方をしても良いかもしれない。

車体が小さいだけに足つきは良好。軽いので車体を支えるのに苦労することもない。

ディテール

フロントキャリパーはスライドピン式の片押し2ポット。
エンジンは空冷4ストローク単気筒で140cc。ボア✕ストロークは56x57mm。圧縮比8.8:1で最高出力は6.8ps/7500rpm。最大トルク9.7Nm/5500rpmを発生する。スペックは控えめだが体感的にはとても元気なエンジンだ。
アップタイプのマフラーからはレーシングマシン的な排気音を響かせる。走っているときの迫力はミニバイクのそれではない。排気音は大きめ。
リアキャリパーはスライドピン式の片押し1ポット。
フロントホイールは12インチのワイヤースポーク。タイヤサイズは130/70-12でセミブロックタイヤを装着する。
始動方式はセル、キック併用。ミッションは5速リターンだがパワーバンドが広いので不足はまったく感じない。
オフロード走行を想定したステップが採用されている。
リアショックはシングル。作動性は良好でダンピングも適度に効いている。ストリートからカートコースまで走りやすい。
リアキャリアが装備されているのでツーリングなどではとても便利。テールボックスなどの装着も容易だ。
左のスイッチボックスはウインカー、ライトのアップ・ダウン、ホーンボタンを配置。冷間時の始動に使うチュークレバーが見える。
右のスイッチボックスにはキルスイッチ、スターター、ライトスイッチが配置されている。
ハンドルは低めのパイプハン。体格が大きいライダーはもう少し高めにしたいところ。
テールランプはシート下に埋め込まれている。小型のウインカーはオフロード奏功で倒しても破損する可能性が低いだろう。
縦目2灯のヘッドライトが個性的だ。
メーターは液晶表示。回転数がドット、スピードはデジタルで表示される。
原付クラスとくらべると大きめのシートは乗り心地も良好。タンクまでシートが被っているのでオフロードなどでの自由度も高い。
シート下にはバッテリーと書類が収められている。

Nicot・Korak ADV140 主要諸元

【シャーシ】
全長×全幅×全高:-
軸距(ホイールベース):1250mm
シート高:-
最低地上高:-
車両重量:-
タイヤサイズ:
 F:- | R:-
ブレーキ:
 F:油圧ディスク | R:油圧ディスク
サスペンション:
 F:倒立フォーク | R:モノショック
ガソリンタンク容量:6L
【エンジン】
エンジンタイプ:空冷 4ストローク 単気筒
排気量:-
圧縮比:-
最高出力:-
最大トルク:-
イグニッションタイプ:C.D.I
変速機形式:-
スターターシステム:セル・キック
希望小売価格:330,000円(税込)

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