17%の値上げに見合う進化でした。足周りもエンジンも好印象のKLX230 S|カワサキ試乗記

しばらく国内のラインナップから外れていたカワサキのKLX230シリーズが、2025年シーズンに復活した。最新の排ガス規制に適合させつつ、フレームはシートレールを再設計するなど大幅に手を加えている。バリエーションは標準モデルのKLX230と、シート高を35mm下げたKLX230 S、トレッキングモデルのKLX230 シェルパ、そして今年1月13日に発売されたスーパーモタード仕様のKLX230SMの4種類。今回はKLX230 Sに試乗した。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●カワサキモータースジャパン

ディテール解説

1軸バランサー採用の232cc(φ67.0×66.0mm)空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒は、従来型をベースに吸気ポートを小径化し、それに伴い排気バルブをφ37→33mmへ。エキパイは見た目にも管長が長くなった。ECUのセッティング変更と合わせて国内の最新排ガス規制に適合。最高出力は19ps/7600rpmから18ps/8000rpmへ。トランスミッションは6段だ。
高張力鋼ペリメター構成のセミダブルクレードルフレームは、シートレールの位置を下げるなど再設計。合わせてキャスター角が従来の27.5°から24.6°へとだいぶ立ったのも見逃せない。その影響もあってか、ホイールベースは1360mmから1365mmへと伸長したにもかかわらず、最小回転半径は2.2mから2.1mへ(競合車のCRF250Lは2.3m)。
φ37mm正立式フロントフォークはホイールトラベル量を158mmから200mmへと27%もアップ。フロントブレーキディスクはφ265mmのペタルタイプで、これにピンスライド片押し式2ピストンキャリパーを組み合わせる。
ホイールサイズはフロント21インチ、リヤ18インチのいわゆるフルサイズで、アルミリムはシルバーからブラックへ。標準装着タイヤは従来から変わらず、IRC製のGP-21F/22Rを採用する。スイングアームはスチール製から、オフロード専用モデルKLX230Rと同様のアルミ製となり、1.2kgもの軽量化を達成。リヤブレーキはφ220mmペタルディスクとシングルピストンキャリパーの組み合わせで、マスターシリンダーはKLX230Rと共通のリザーバータンク一体型となり、およそ100g軽くなった。
リヤサスペンションはボトムリンク式(ニューユニトラック)のモノショックで、プリロードが調整可能に。ホイールトラベル量は168mmから223mmへと33%も増えている。
ブレース付きのハンドルバーは、グリップ位置が13mmアップし、24mm前方へ。これに伴いステップ位置は9mm後退している。ミラーステーが短いため、後方視界があまり良くないのは相変わらずだ。
赤いスイッチは新設されたABSキャンセルボタン(前後輪とも)。先代のKLX230はカワサキ車として初めてデュアルパーパスABSを採用したモデルであり、これはボッシュと共同開発したものだ。
メーターのデザインこそ従来から変わらないが、新たにスマホ接続機能を追加。なお、ブレーキホースによって表示が見えにくい点は人によってストレスに感じるかも。
シート表皮はオールブラックから車体色を組み合わせたツートーンに。純正アクセサリーでハイシート(ブラック、1万1440円)を用意する。リヤフェンダーの左側にはヘルメットロックあり。
キーロック式の左サイドカバーを取り外すとバッテリーにアクセスできる。その上部には車載工具あり。
ヘッドライトは60/55Wのハロゲン球からLED(ハイ/ロービーム、ポジションランプとも)へ。ウインカーは鋭利なデザインからラウンドタイプへと変更された。
テールランプやリヤフェンダーのデザインに変更はなく、側方反射鏡が追加された点が従来型との判別ポイントになるだろう。ナンバー灯を含め、ヘッドライト以外の灯火類はすべてフィラメント球だ。

カワサキ KLX230 S(2025年モデル) 主要諸元

最高出力 13kW(18PS)/8,000rpm
最大トルク 19N・m(1.9kgf・m)/6,400rpm
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒
総排気量 232cm³
内径×行程 67.0×66.0mm
圧縮比 9.4:1
弁方式 SOHC2バルブ
燃料供給方式 フューエルインジェクション(φ32mm×1)
点火方式 バッテリー&コイル(フルトランジスタ点火)
始動方式 エレクトリックスターター
潤滑方式 強制潤滑方式/ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.3L
トランスミッション形式 常時噛合式6段リターン
一次減速比 2.870(89/31)
ギア・レシオ 1速 3.000(39/13)
ギア・レシオ 2速 2.066(31/15)
ギア・レシオ 3速 1.555(28/18)
ギア・レシオ 4速 1.260(29/23)
ギア・レシオ 5速 1.040(26/25)
ギア・レシオ 6速 0.851(23/27)
二次減速比 3.214(45/14)
クラッチ形式 湿式多板/マニュアルトランスミッション
動力伝達方式 チェーン

フレーム形式 セミダブルクレードル(高張力鋼ペリメター)
懸架方式(前) テレスコピック(インナーチューブ径37mm)
懸架方式(後) ニューユニトラック/プリロード調整可
ホイールトラベル(前) 200mm
ホイールトラベル(後) 223mm
キャスター 24.6°
トレール 96mm
ステアリングアングル(左/右) 45°/45°
タイヤサイズ(前) 2.75-21 45P
タイヤサイズ(後) 4.10-18 59P
ブレーキ形式(前) シングルペタルディスク(外径265mm)
キャリパー(前) デュアルピストン
ブレーキ形式(後) シングルペタルディスク (外径220mm)
キャリパー(後) シングルピストン

全長×全幅×全高 2,080×845×1,140mm
軸間距離 1,365mm
最低地上高 240mm
シート高 845mm
車両重量** 133kg
燃料タンク容量 7.6L
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
燃料消費率(国土交通省届出値)※1 45.5km/L(60km/h・定地燃費値、2名乗車時)※2
燃料消費率(WMTCモード値)※1 34.7km/L(クラス2-1、1名乗車時)※3
最小回転半径 2.1m
乗車定員 2名
生産国 インドネシア共和国
型式 8BK-LX232A
メーカー保証 2年

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…