オフロードが得意なKTM・890アドベンチャーR、街乗りしたらミドル排気量の良さを体感できた。

2022年3月から2022年イヤーモデルが新登場。KTMが誇るアドベンチャー・シリーズの中核を成すミドルクラス。前モデルの790から890へとスケールアップされ、ユトリを増したハイパフォーマンスが注目された人気モデルである。(なお、撮影試乗車は2021年型)

REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️徳永 茂( TOKUNAGA Shigeru)
取材協力⚫️KTM Japan 株式会社

ディテール解説

シリーズ一連のフロントマスクを採用。しかしアップフェンダーの標準装備は、790と890 Rだけ。オフロードへのこだわりはそれだけ強いとも言えるだろう。スクリーンは、オプションで890 ADVENTURE用に換装可能。

フローティングマウントされたダブルディスクローターはφ320mm。金属メッシュホース採用の油圧キャリパーは対向4ピストンタイプがラジアルマウントされている。倒立式フロントフォークはφ48mmのWP製。

水冷DOHC直(並)列ツインエンジンは気筒当たり4バルブヘッドを持つ。790からのスケールアップは全域にわたる大きなパフォーマンス向上を果たしている。

スイングアームピボット直後のチャンバーを経て右側に出るアップマフラーが採用されている。

リンクを持たないシンプルな構造のリヤサスペンション。白いスプリングが印象的なモノショックはWP製。6角レンチを使用してプリロード調節ができる。

リヤディスクローターもフローティングマウント式。サイズはφ260mm。KTMと打刻された油圧キャリパーは
Brembo製 2ピストンのピンスライド式。リムの黒いスポークホイールにはメッツラー製Karoo 3タイヤを履く。

ブラックアウトされたハンドルバーはアルミ製のテーパータイプ。中央部はφ28mm、両サイドはφ22mm。白いナックルガードが装備されている。ハンドル取り付け位置も可変可能。好みのライディグポジションが選択できる。

ハンドル左側のスイッチは、下から順にホーン、ウインカー、そして4っつの三角ボタンスイッチは、ディスプレイを操作する上下と、左は戻る、右はセット。右上はクルーズコントロールスイッチ。向こう側には人差し指で操作するディマー&パッシングスイッチがある。
ハンドル右側はシンプルに赤いシーソースイッチがひとつ。エンジンキルスイッチ兼用、始動用のスタータースイッチ。スロットルはバイワイヤー式なので、強制開閉ケーブルはなく、スッキリとデザインされている。

搭載メーターは5インチサイズのフルカラーTFTディスプレイ。バックライトの照度は自動的に調光される。写真からもわかる通り、整然と多彩な情報表示が成されている。

KTM・890アドベンチャーR
メーター直ぐ下の中央部に12Vアクセサリー電源ソケットが標準装備されている。通常はラバーキャップを被せる方式。
KTM・890アドベンチャーR
ステアリングパーツはアルミ鍛造製。アンダーブラケット直後にはWP製ステアリングダンパーを装備。フロントフォークのトップエンドにはプリロードとダンパー調節(左の白が圧側、右の赤が伸び側)機構が装備されている。
KTM・890アドベンチャーR
スポーツライディングに適した体重移動のしやすい一体デザインのダブルシートを装備。
KTM・890アドベンチャーR
シートは車体左脇のキー操作による脱着式。エアクリーナーへのアクセスが容易。後方には収納スペースがある。
KTM・890アドベンチャーR

張り出しの大きなグラブバーとトップケース搭載に対応するキャリアは堅牢なイメージ。尻上がりでフィニッシュするテールエンドはスッキリとコンパクトに仕上げられている。

主要諸元

車名:KTM・890 ADVENTURE R
軸距(mm):1,528
最低地上高(mm):263
シート高(mm):880
車両重量(kg):200(半乾燥)
乾燥重量(kg):196
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):22.2

エンジン型式:水冷4ストローク直(並)列 2気筒
動弁型式:DOHC 4バルブ チェーン駆動
総排気量(cm³):889
内径×行程(mm):90.7×68.8
圧縮比:13.5:1
最高出力(kW[ps]/rpm):77[105]/8,000
最大トルク(N・m /rpm):100 /6,500
始動方式:セルフ式
バッテリー:HTZ12A-BS(MF12V 10Ah)
燃料供給装置形式:スロットルボディφ38mm。 Bosch製EMS(電子制御式燃料噴射)
点火装置形式:非接触制御電子式点火
燃料タンク容量(L):20(含む予備約3L)
潤滑方式:ドライサンプ(2ポンプ式)
潤滑油量(L):2.8
クラッチ形式:湿式多板式、機械式PASC(アンチホッピングクラッチ)
変速機形式:常時噛合式6速
変速比:
   1速:2.846(13:37)
   2速:2.000(17:34)
   3速:1.550(20:31)
   4速:1.273(22:28)
   5速:1.083(24:26)
   6速:0.957(23:22)
1次減速比:1.923(39:75)
2次減速比:2.813(16:45)
キャスター角(度):26,3°
タイヤ(前/後):90/90-21 M/C 54R M+S TL / 150/70-18 M/C 70R M+S TL
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク / 油圧式ディスク(Bosch製9.1MP コーナリングABS、オフロードモード、作動解除可能) 
懸架方式(前/後):テレスコピック式 / スイングアーム式
サスペンションストローク(前/後mm):240/240
フレーム形式:クロムモリブデン鋼管製トレリスフレーム。パウダーコート塗装

生産国:オーストリア

試乗後の一言!

遠くのツアーコースに林道を挟みたい。そんな冒険心がくすぐられる1台である。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…