「白バイ」じゃなくて「黄バイ」って知ってる?首都高の緊急車両にBMWが採用された!?【東京モーターサイクルショー2025】

前回までの『東京モーターサイクルショー』で西館エントランスに設けられていた特設ステージや業界団体のブースは東8ホールへと移動した。そんな東館8ホールのAJブースに展示されていたのが首都高パトロール株式会社の「バイク隊」がBMW F900XRの通称「黄バイ」だった。この車両は同社の「バイク隊」が山手トンネルの安全を守るために使用するパトロール車両で、昨年末から配備が始まったばかりの最新車両である。今回はそんな新たに導入された黄バイとその役割について紹介する。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

首都高の安全を守る「黄バイ」をキミは知っているか?

2025年3月28日(金)~30日(日)にかけて開催された『第52回東京モーターサイクルショー』は、例年通り「東京ビッグサイト」で開催されたものの、昨年までの西館1~4ホールに変わって、今年から東館1~3、8ホールへと会場が変更された。これによってバイクメーカーと部品用品メーカーのブースは東館1~3ホールへと移り、これまで西館エントランスに設けられていた特設ステージや業界団体のブースは東8ホールが割り当てられた。

『第52回東京モーターサイクルショー』のAJ関東ブースに展示されていた首都高パトロール株式会社の「黄バイ」。ベース車両はBMW F900XR。

そんな東館8ホールを歩いていると、AJ関東(全国オートバイ協同組合連合会 関東ブロック)のブースに、一見すると白バイのようにも見えるが、見慣れない黄色く塗られたバイクを見つけた。一般にはあまり存在が知られていないが、じつはこのバイクは「黄バイ」と呼ばれる首都高パトロール株式会社の「バイク隊」が使用するパトロール車両なのだ。

「黄バイ」仕様のホンダCB400スーパーボルドール。数の上では現在でも主力となる(写真:首都高パトロール株式会社WEBサイトより)。

黄バイの活動エリアは、主に品川区から豊島区までをつなぐ全長18.2kmの山手トンネルとなる。日本最長の長さを誇るこのトンネルは、勾配や分岐・合流が連続することから渋滞の発生率も高く、交通事故や火災、地震などの災害などが発生した場合は大きな被害が生じる危険性が高い。

黄バイの活動エリアは主に山手トンネルで交通事故や火災、地震などの災害などが発生した場合には、避難誘導や通行止め規制などに従事する。その任務の性格から黄バイは民間企業で初めて緊急指定されたオートバイで、赤色灯やサイレンなどを装備している(写真:首都高パトロール株式会社WEBサイトより)。

そのようなときにバイクならではの機動性を生かし、避難誘導や通行止め規制に活躍することが期待されているのだ。その職務の重要性から黄バイは民間企業で初めて緊急指定されたオートバイで、赤色灯やサイレンなど白バイとほぼ同じ装備が与えられている。ただし、車列を誘導するために後ろ向きに拡声器が追加されたことが黄バイだけの特徴となる。

「黄バイ」に乗車する首都高パトロール株式会社「バイク隊」の隊員。現在、約50名の隊員によって構成されている。隊員は大橋基地、志村基地、大井基地の3拠点に分かれ、交通管制室から指示が入り次第出動する。業務は2人1組での行動が基本となるようだ(写真:首都高パトロール株式会社WEBサイトより)。

新型「黄バイ」はドイツ製? BMWが採用されたワケとは

これまで首都高パトロール株式会社ではホンダCB400スーパーボルドールを黄バイとして運用してきた。しかし、同車が2022年に生産を終了したことにより、老朽化した車両の更新ができなくなった。そこで新たな車種の導入が必要になり、昨年11月にBMW F900XRの導入が決定した。

CB400スーパーボルドールの後継として昨年末から配備が始まったBMW F900XRの黄バイ。左右のパニアケースには発炎筒など交通規制に必要な機材が納められている。

BMW F900XRは2020年に登場した最高出力105psを発揮する水冷並列2気筒895ccエンジンを搭載したアドベンチャーバイクだ。ヨーロッパ各国では白バイとしての採用実績もあり、耐久性、操縦安定性、機動性、積載性、エンジン冷却性能などの評価が高い。

新型黄バイのベースとなったBMW F900XRの市販モデル。

また、BMWらしい先進装備も充実しており、車両の安定性を高めるアンチホッピングクラッチ、急激なスロットル操作やシフトダウンの際に発生しやすい後輪のスリップを軽減するエンジンドラッグトルクコントロール(MSR)など優れた安全装備を持つ。

正面から見たBMW F900XRの黄バイ。純正オプションとは異なる形状の大型エンジンガードとフォグランプを備え、ハンドルにはナックルガード、カウルにはLEDの赤色灯が備わる。

しかし、BMWのバイクと言えば、お大尽御用達の輸入車だ。最近では国産バイクの価格が上昇したこともあり、車両価格の面では同クラスの国内4社との差が縮まってきているが、正規ディーラーの工賃は1万2000~1万5000円/1時間と高いことからメンテナンス代は嵩み、パーツ代もけっして安くはない。
さぞや首都高パトロール株式会社は大儲けしているのか?と同社の説明員に質問をぶつけてみたところ、

「車種選定は競争入札で決定しました。BMWが提示した価格がいちばん安かったのでF900XRに決まったそうです。入札価格にはメンテナンス代を含む維持管理コストも含まれているようです。また、各国の法執行機関などでの採用実績も高く評価されています。なので、ウチが儲けているから外車を買ったわけではありません」

との答えが返ってきた。どうやら邪推が過ぎたようだ(黄バイでの採用とのCM効果を狙ってBMWモトラッドは低めの入札額で応じたのかもしれないが……)。

フロントカウルに輝くBMWのエンブレム。ボディカラーはCB400スーパーボルドールの山吹色から鮮やかイエローに変わり、ワンポイントにブルーのカッティングシートがあしらわれている。

今回展示されている車両は昨年末に導入された3台のうちの1台で、まだまだF900XRは少ないようだが、今後は老朽化した車両と順次入れ替えて行き、行く行くは全車BMWに切り替える予定だという。普段なかなか間近で見かける機会の少ない黄バイ、それも導入間もないF900XRを会場で近くからじっくりと見られた人はラッキーだったかもしれない。

同じ東館8ホールの警視庁ブースに展示されていた新型白バイのホンダNT1100P。国内で市販されるNT1100はDCT仕様となるが、白バイで使われる車両はMTとなる。
ホンダNT1100Pのリヤビュー。ハンドルは市販仕様とは異なるやや高さのあるメッキタイプに変更されていた。交通取締用のリッターバイクの白バイとしては初の2気筒エンジン搭載車だ。

キーワードで検索する

著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…