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110年の歴史を持つ、イタリア発の老舗メーカー!
イタリアの老舗ブランド、ベネリの誕生は1911年。実に100年以上前のことである。さまざまな排気量のバイクを生み出し、レースでも実績を重ねてきた。しかし幾度も経営危機に陥り、80年代後半には他メーカーに吸収合併されブランドが途絶えた。しかし90年半ばに新オーナーの手により復活。現在は中国資本下におかれ、新生Benelliとして精力的に活動し、日本では株式会社プロトが輸入販売している。
新たなBenelliのラインナップ中、中間排気量クラスでバイクファンの高い注目を集めているのがレオンチーノだ。
実はレオンチーノという名はBenelliの歴史上とても意味があるもの。1951年に登場した初代レオンチーノ(125cc)は他車とは異なった、流れるようなデザインを持っていて、数多く売れたといわれている。そのヒットモデルの名を冠したモデルとして現代に復活したのである。先に記した通り、レオンチーノとはイタリア語で「小さなライオン」という意味。それを証明するかのようにフロントフェンダーの上に小さなマスコットが装着されているので、実車を見るときにはチェックしてもらいたい。
クラシック感あるルックスと最新技術が融合!
レオンチーノのスタイリングは、レトロっぽいシルエットながら灯火類にLEDを採用するなど新旧が融合されたちょっと不思議な雰囲気。造りは明らかに現代のバイクなのだが、リヤ下がりのシルエットからはノスタルジーさも感じる。
中央にレオンチーノのロゴが入った異型ヘッドライトには特徴的なLEDデイライトを備えていて、ネイキッドながら個性を感じる。LEDウインカーの造形もシャープだ。ガソリンタンクにはBenelliの立体エンブレムが入り高級感ある仕上がり。短いタンデムシートの処理やナンバーの位置などは現代の流行りともいえるもの。
ロードタイヤを履いていることもあって、個人的にはメーカーが言うスクランブラーというよりネイキッドという印象を受ける。しかし海外でラインナップされている500ccには「TRAIL」というブロックタイヤを装着したモデルがある。PVではダートを走っている姿も見られ、スクランブラーというカテゴライズにも納得する。
車体がスリムなことと着座位置が高くないので足着き性は悪くない(シート高:約800mm)。幅広のバーハンドルは入力しやすい位置にセットされている。それ対してステップ位置が後ろで高め。バックステップ的な印象だが、収まりは良く荷重もかけやすい。シートの座り心地はよくツーリングでも疲れにくそうだ。
走行性能は及第点! 街中もヒラヒラ!
セルボタンを押すと水冷単気筒エンジンが目を覚ます。ショートストロークということもあって吹け上がりは軽快だ。クラッチをつなぐと単気筒らしいパルス音とともにリヤタイヤが路面を押し出しグンッと加速する。低〜中回転域のトルクフィールは扱いやすく信号ダッシュでは車の流れを余裕でリードでき、車が増えてきたところでその流れに乗るのも苦ではない。高回転域では細かい振動が出るので、あまり引っ張らずにシフトアップしていくとスムーズに走れる。
ブレーキのタッチは良好。コントロールの幅もあって車速の調整がしやすい。車体剛性、特にフロントまわりの安定感が高いこともプラス要素だ。倒立フォークが効いているのだろうと想像できる。そのため挙動は基本的に落ち着いた安定指向。サスペンションの動きも良好で安っぽさは感じにくい。沈み込みが自然なのでコーナーリングのキッカケもつかみやすい。
安定指向とはいえハンドリングに変な粘り感はなく、コーナーに進入するとスッと素直にバンクしていく。やや後ろ気味でスポーティなステップ位置なのも操作性を高め気分を上げてくれる。交差点など小さなコーナーはもちろん、中〜高速コーナーでもライダーが描いたラインを自然にトレースしてくれる。車体のシッカリ感とタイヤの接地感がリニアに伝わってくるのには好感を持った。
質感も上々! “バイクらしさ”を体現した一台
ルックスはレトロとモダンを掛け合わせた個性的なものだが、走りは現代のバイクそのもの。低〜中回転域を有効に使って走るとサスペンションの動きと相まって気持ち良さが倍増する。ハンドルの位置やステップの高さも僕にとってはちょうどよく、入力のしやすさもバイクとのシンクロ率を高めてくれる要因だと感じた。
新生Benelliのマシンに乗っていると、中国で作られたバイクだということを忘れてしまいそうになる。それほど走りの質が高く感じられるのだ。もちろん中国製のバイクがすべて悪いわけではないが、ピンからキリまで差があるのは事実。そのなかでもBenelliはかなりレベルが高いといえる。耐久性に対しては正直わからないが、輸入元が信頼できる企業だということを考えるとパーツ供給などに関しても安心度は高まる。
独創的なスタイリングと安定した乗り味を持つレオンチーノ250は、国産モデルにはない新しい世界を求めるライダーにとって魅力的な存在だといえるだろう。
ディテール解説
縦長の楕円形をしたLEDヘッドライトの中央にはレオンチーノのロゴが入り、上半分にライン状のLEDデイライトが備わっている。ウインカーもLEDだ。
倒立フォークにセットされているキャリパーは対向4ポット。ウェーブタイプのディスクローターの径は280mmでABSがセットされている。
スチール製のパイプフレームに搭載されているエンジンは水冷単気筒。不快な振動やノイズはほぼなく、吹け上がりもスムーズ。フレームもエンジンもブラック仕上げだ。
エンジンはコンパクトにまとめられている。本国では500ccもラインナップされていることを考えると、車体剛性に余裕があることも納得できる。
レオンチーノのロゴが入った異型サイレンサーのエンドからは単気筒サウンドが響く。エンドがやや上に跳ね上がっているためバンク角には余裕がある。
前後一体式のシートを採用。ライダー側のスポンジは肉厚があり座り心地が良い。タンデムシートは小振りなので長時間座っているのは厳しいかもしれない。
車載工具はシートの裏側にある。内容は+−差し替え式のドライバーと16/13mmのレンチが各1本、六角レンチが3本。近年のバイクは工具の数が少なくなっている。シート下にはエアクリーナーや補機類がビッシリと詰まっていて、小物を入れるスペースはほぼ無いといっていいだろう。
小振りのテールランプやウインカーはLED。シンプルな造形が個性になっている。ウインカーには停止時に便利なハザードを装備している。
ナンバープレートとリフレクターはスイングアームから伸びるステーで保持されている。この辺りの処理も外車らしい。
ブレーキレバーには調整機能があるので手が小さい人でも操作しやすくなっている。こういう細かい部分まで配慮されているのが嬉しい。
フレームの溶接や各部の塗装、凝った形状のボルト類を使っていることなどからも、中国の生産技術が向上していることを感じる。
SPECIFICATION
車名(型式) LEONCINO 250 (N29) トランスミッション形式 常時噛合6速リターン 全長×全幅×全高 2030mm×840mm×1115mm 軸間距離 1380mm 最低地上高 170mm シート高 800mm 車両整備重量 162kg フレーム形式 トリレス(格子)フレーム 燃料タンク容量 12.5L クラッチ形式 湿式多板 2次減速方式 チェーン式 懸架方式(前) 倒立テレスコピック 懸架方式(後) スイングアーム エンジン種類 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 総排気量 249cc 内径×行程/圧縮比 Φ72.0×61.2/11.2:1 最高出力 19kw/9250rpm 最大トルク 21.0Nm/8000rpm 始動方式 セルフスターター 点火方式 トランジスタ(TLI) 燃費(WMTCモード) 30.3km/L 潤滑方式 圧送飛沫併用型 燃料供給方式 フューエルインジェクション ホイールトラベル(前) 125mm (後) 60mm タイヤサイズ(前) 110/70R17 (後) 150/60R17 ブレーキ形式/径(前) 油圧デイスク/280mmABS (後) 油圧デイスク/240mmABS
ライダープロフィール
横田和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得して以来、50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクを乗り継ぐ。普段から移動手段にバイクを使うことが多く、プライベートでもツーリングやサーキット走行、草レース参戦などを楽しむスポーツライディング好き。現在は雑誌やWebなど、さまざまな媒体で執筆活動をしている。