MVアグスタのスポーツDNAを継承するミドルスーパースポーツ「F3ロッソ」の軽快な走りを楽しむ|F3 RR

MVアグスタを代表するスーパースポーツといえば、750㏄から1000㏄へとスケールアップしていった直列4気筒のF4シリーズでした。しかし現在は、800㏄直列3気筒のF3へとバトンタッチしています。そんなF3シリーズのスタンダードモデルであるロッソに試乗してみました。

レーシングキットを組み込んだF3 RRにも同時に試乗

MVアグスタ・F3 RR……3,245,000円(消費税込み)

 ストリートモデルとしてはもちろん、サーキットレベルの走りにも十分に対応しなおかつ、高いパフォーマンスを発揮してくれるF3ロッソですが、実はロッソはスタンダードモデルの位置づけにあります。街中での扱いやすさを含めてその高性能ぶりはスタンダードと呼ぶレベルじゃないのですが、さらなるハイパフォーマンスを実現したモデルが存在しているのです。それがMVアグスタF3 RRです。今回はロッソと比較するかたちで試乗することができました。
 基本的な仕様にちがいはありません。しかしよく見てみると、カウルの形状はよりエアマネージメントが徹底されたものとなっていて、カウルに潜り込んだときの視界もロッソより良かったです。ブレーキやクラッチレバー回り、タンクキャップなどの細部も、レーシングマシンのような上質なパーツが使われています。
レーシングライクなポジションはなかなか好戦的。しかしストリート走行にも対応してくれる
シート高は830㎜。足つき性に特に不満はない
足を下ろしたときにバックステップは足と干渉しない
 このF3 RRにはレーシングキットが組み込まれているのですが、こうしたパーツ類もその一環なのです。さらに目に付く変更点は、特徴的な3本マフラーからアクラボビッチのチタンマフラー(公道使用承認取得済)に換装されている点です。外観的にもグッとレーシーになっています。そして専用のコントロールユニットが装備してあり、最高出力は147から155hpへと引き上げられ、車重は8kg軽量化しています。
レーシングレベルのこんなモデルに街中で乗れるなんて、なんとも贅沢な話です。本来ならサーキットで走らせるのがこのモデルにとってもうれしいのでしょうし、ポテンシャルを実感することもできるのだと思います。しかし、あくまでもストリートモデルだということを念頭に置けば、市街地での走行性も大切なファクターになります。
保安部品を装備したMoto2マシンといっても過言じゃないほど高性能なモデルですが、発進から加速、減速、そしてコーナリングといった一連の操作はロッソ同様、一般的なミドルバイクと同じ感覚でできます。パワーフィーリングとしては低速域ではロッソよりもスムーズに感じました。排気口の位置が下方で耳から遠いためか、エキゾーストノートもスタンダードの3本マフラーより静かです。いずれにしても、レーシングマシン並みの性能の片鱗や装備をストリートで体感できるのですから、やはりMVアグスタは最上級のバイクだと思いました。ちなみに消費税込みの価格は、ロッソより84万7000円高い324万5000円となっています。

ディテール解説

空力特性を高め、エアマネージメントも進めたカウルを装備
レバー類はレーシングマシンと同等の高品質なパーツを装着
F3ロッソと比較して大きなスクリーンが装備されている。カウル形状も異なる
アクラボビッチ製マフラーを装着してパワー特性をアップ
タンクキャップにもレーステクノロジーが生かされている
シート周りのデザインはF3ロッソと共通だが、シート表皮はフィット性を高めた素材を使用。シングルシートカバーも付属する

F3 ROSSO 主要諸元

エンジン形式4ストローク 3シリンダー 12バルブ “DOHC”
総排気量798cc
圧縮比13.3:1
ボア×ストローク79.0mm×54.3mm
最高出力108kW(147hp)/13,000rpm
最大トルク88Nm(8.98kgm)/10,100rpm
エンジンマネージメントMVICSイグニッションシステム(MOTOR & VEHICLE INTEGRATED CONTROL SYSTEM)
4エンジンマップ(ノーマル・スポーツ・レイン・カスタム)
8段階調節トラクションコントロールシステム
EAS3.0[クイックシフター アップ・ダウン]
ギヤ6速
クラッチ湿式多板クラッチ
全長×全幅2,030mm×730mm
ホイールベース1,380mm
シート高830mm
車両重量(乾燥重量)173kg
タンク容量16.5L
フレームALSスチールパイプ トレリスフレーム
スイングアームアルミニウム シングルサイドスイングアーム
フロントサスペンションMARZOCCHI ø43mm フルアジャスタブル倒立フォーク
リヤサスペンションSACHS プログレッシブ・フルアジャスタブルシングルショック
フロントブレーキキャリパーBrembo 4ピストン ラジアルマウントモノブロックキャリパー
フロントブレーキディスクø320mm フローティング ダブルディスク
リヤブレーキキャリパーBrembo 2ピストンキャリパー
リヤブレーキディスクø220mm シングルディスク
フロントホイール・タイヤアルミニウム合金ホイール 3.50″×17″ 120/70-ZR17
リヤホイール・タイヤアルミニウム合金ホイール 5.50″×17″ 180/55-ZR17
グラフィックアゴレッド

F3 RR 主要諸元

エンジン形式4ストローク 3シリンダー 12バルブ “DOHC”
総排気量798cc
圧縮比13.3:1
ボア×ストローク79.0mm×54.3mm
最高出力108kW(147hp)/13,000rpm (RACING KIT装着時:114kW(155hp)/13,250rpm)
最大トルク88Nm(8.98kgm)/10,100rpm
エンジンマネージメントMVICS2.1 イグニッションシステム(MOTOR & VEHICLE INTEGRATED CONTROL SYSTEM)
4エンジンマップ(ノーマル・スポーツ・レイン・カスタム)
8段階調節トラクションコントロールシステム
EAS3.0 (クイックシフター UP&DOWN)
ギヤカセット式6速コンスタントメッシュ
クラッチ湿式多板スリッパークラッチ
全長×全幅2,030mm×730mm
ホイールベース1,380mm
シート高830mm
最低地上高120mm
始動方法エレクトリック
タンク容量16.5L
車両重量(乾燥重量)173kg (RACING KIT装着時:165kg)
フレームALSスチールパイプ トレリスフレーム
スイングアームアルミニウム シングルサイドスイングアーム
フロントサスペンションMARZOCCHI ø43mm フルアジャスタブル倒立フォーク
リヤサスペンションSACHS プログレッシブ シングルショック
フロントブレーキキャリパーbrembo 4ピストン ラジアルマウントキャリパー
フロントブレーキディスクø320mm フローティング ダブルディスク
リヤブレーキキャリパーbrembo 2ピストンキャリパー
リヤブレーキディスクø220mm シングルディスク
フロントホイールアルミニウム鋳造ホイール 3.50″×17″
リヤホイールアルミニウム鋳造ホイール 5.50″×17″
フロントタイヤ120/70 – ZR 17 M/C (58W)
リヤタイヤ180/55 – ZR 17 M/C (73W)
グラフィックファイアレッドマット/メタリックダークグレイマット、シュールホワイトグロス/マンバレッドグロス

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…