ホンダ・スーパーカブ110・JA44と新型JA59|旧型オーナー目線で乗り比べ。一言目はやはり「ブレーキの効き味」

長い歴史を持つスーパーカブは、世界一売れてるバイクです。そして世界中に多くのファンを持ち、コミューター、ビジネス、レジャーにと大活躍しています。大幅なモデルチェンジが行われて2022年3月に国内販売を開始した新型スーパーカブ110(JA59)もまたまた人気モデルになりそうですが、従来型となってしまったスーパーカブ110(JA44)ユーザーでもあるボクにしてみれば、ちょっとショックではあります。そこで従来型の乗り味を熟知しているボクが、新型との違いをチェックしてみました。

PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

スポークホイール+ドラムブレーキとキャストホイール+ディスクブレーキの違いが見た目の印象を一変させた

 だれがどこから見ても『スーパーカブ』とわかるスタイルの基本はまったく変わっていません。従来型ユーザーとしてはこれは大きな安心材料です。あまりに変化してしまうと旧型という印象が強くなってしまいますからね。しかし、長年親しまれてきたスポークホイールとドラムブレーキが、とうとうキャストホイールにディスクブレーキ装備となってしまいました。これによって外観の印象は変わりました。

  これをどう感じるかは人それぞれだと思いますが、「現代的にスポーティになったな」というのがボクの感想です。そして好き嫌いもわかれるところだと思います。ですが機能性ということでいえばやはり、ABS装備のディスクブレーキは安全性が高くて安心だし、キャストホイールにチューブレスタイヤが装着されたこともパンクのリスクが減って、これまた安心感が高まっています。そういう意味でも良い方向に進化したといえるでしょう。

従来型はスポーク式ホイールにチューブタイヤ、そしてドラムブレーキとベーシックな足回りとしている
キャストホイールにチューブレスタイヤ、そしてABS装備のシングルディスクブレーキが新たに採用された新型

 乗り比べてみると、当然のようにブレーキのフィーリングは別物です。従来型のドラムブレーキはレバーをギューッと握り込んで効かせるタイプでした。制動力そのものに不満はありませんが、たとえばツーリングに出かけている途中でレバーの握りしろが深くなってきてしまうこともありました。ワイヤーが伸びるんですね。まあ簡単に工具なしで調整できるから問題ないとボクは思っているんですが。一方、新型のディスクブレーキは、レバータッチがカチッとしていて入力の初期段階からググッと効きます。たとえば砂利道など滑りやすい路面で不用意に掛けてしまっても、ABSという文明の利器がタイヤロックを防いでくれて転倒の憂き目に遭うことはありません。なので不安なくブレーキ操作ができます。ボク自身はドラムブレーキでも一向にかまわない派なんですが、実際に使ってみるとやはり、ディスクブレーキのほうが安心して走れました。

サスペンション、タイヤ、それにスポークホイールが衝撃を吸収する従来型。リアサスペンションはカバードタイプで新型も同様だ
キャストホイールの採用で衝撃吸収の役割はサスペンションとタイヤにかかることになった。そのためサスペンションの設定も変更されているはず

 乗り心地については、舗装路を普通に走っている限りそれほど変わらなかったというのが正直な感想です。ただ、新型はタイヤとサスペンションの2つで衝撃を吸収しますが、従来型ではスポークホイール自体にも衝撃を緩和する働きがあります。したがって段差を乗り越えるなど強い衝撃を受けた場合には、従来型のほうが力が分散されて乗り心地への影響を少なくしてくれます。まあそれも程度問題なんですけどね。なにしろ衝撃があまりにも強いとリムが変形してしまうリスクもありますから。

スムーズでトルクが向上した新型エンジンはあらゆる状況で使いやすくなっていた

 新型スーパーカブ110はエンジンも新設計となりました。具体的には、従来型がボア×ストローク50.0×55.6㎜で圧縮比が9.0だったのに対し、新型は47.0×63.1㎜とロングストロークとなり圧縮比も10.0へと引き上げられています。排気量は109㏄で変わりありませんし、最高出力に関しても5.9kW[8.0ps]/7,500rpmで同じです。しかし最大トルクは8.5N・m[0.87kgf・m]/5,500rpmから8.8N・m[0.90kgf・m]/5,500rpmへと高まっています。さらに4速ミッションの変速比、1次減速比も変更されました。

  このように数値的にはわずかな差なのですが、走りだした瞬間、明らかな違いを実感します。トルクアップが図られた新型は発進加速が良くて、エンジン回転がスムーズです。さらに高回転での頭打ち感が穏やかで、ともすると、まだ伸びるんじゃないかと錯覚してしまうほどです。低中回転ではわずかながら鼓動感もあって、すべての領域で走りに余裕をもたらしてくれるのです。

  従来型も伸びの部分では大きな差はないのですが、頭打ちする感覚が明白で、良くも悪くもわかりやすいエンジン特性です。引っ張ったときに振動も新型より多めで、長時間走行した場合には疲労度に差が出る可能性はあると思いました。また新型はギアの入りが良く確実性も高まっています。ボクの従来型も走行距離が2000㎞を過ぎたころにアタリが付いたのか、ちゃんとギアが入るようになりましたが、節度の点では新型に及びません。こうした細かい点でも進化したことを実感させられます。従来型ユーザーとしては悔しい気持ちです。

タフさが売りの空冷OHC単気筒エンジン。俗に横型と呼ばれるエンジンはスーパーカブの伝統的な心臓部だ
クラッチ操作のいらないスーパーカブ伝統の自動遠心4速ミッション。シーソー式チェンジペダルは靴の甲を痛めない
ロングストローク型となった新設計エンジン。トルク特性がアップし、回転フィーリングも一段とスムーズになった
自動遠心4速ミッションは、変速比、1次減速比が変更された。チェンジペダルはシーソー式で、タッチと節度が良くなった

 新型が羨ましいなぁと思いところがもうひとつあります。それはメーターです。アナログ式スピードメーターを中心としている点は変わりないのですが、従来型は中央にオドカウンター、左上にアナログ式燃料計を配置していました。ところが新型では、下部に新たに液晶ディスプレイを装備して、燃料計とギアポジションを常時表示。ギアポジションの有無はボク自身はあまり気にならないのですが、統計的にはギアポジションがあったほうがいいという意見が圧倒的だったようで、それに応えたかたちです。左上にある切り替えスイッチを操作すると、液晶ディスプレイには時計、オド/トリップ、平均燃費を表示させることができるようになっています。この中で時計とトリップメーター、平均燃費表示はツーリングに重宝するのでいいなぁと思いました。

  逆に従来型のほうがいいと思ったのは、燃料タンク容量が4.3Lと新型より0.2L大きいことです。新型は燃費性能が上がっているので、トータルとしての航続距離はあまり変わらないとは思いますが、少しでも多いほうが安心感があります。また車重も2㎏軽いことも従来型の利点です。細かいことをいえば、シート高も3㎜低いです。

  とまあこのように従来型と新型とではいろいろと違いがあって、装備面での利便性や、走行性能の向上、そして安全性においてたしかに新型スーパーカブ110のほうが勝っています。でも機動性の高さや日常での使いやすさでは従来型も引けを取っていません。というわけで、ボクを含めた従来型スーパーカブ110ユーザーは、負い目を感じることなくこれからもカブライフを楽しんでいきましょう。

スピードメーターと燃料計、それにオドメーターが配置された従来型のメーター。すべてアナログだ
キーロック式燃料タンクキャップは従来型、新型ともに採用。従来型のタンク容量は4.3L。定地燃費は62km/L
スーパーカブといえば国内では配達用バイクとの認識が強い。大型のこのリアキャリアもその一翼を担っている
従来型スーパーカブ110のシート高は735㎜。車重は99㎏となっている。わずかな差でしかないが、従来型のほうが軽量コンパクトということ
従来型の全幅は695㎜となっている。新型と比較するとたしかにハンドル幅が狭い。だがポジション的には変わらない
ギアポジション、時計、燃料残量、平均燃費、オド/トリップを表示する液晶ディスプレイを備えた新型メーター
シート下に収められた燃料タンクは4.1L容量。定地燃費が68km/Lと高まったのを受けて容量は減少した
新型スーパーカブ110ではクロスカブ同様リアキャリアがブラック塗装となった。これによって外観的にはスポーティになった
新型スーパーカブ110のシート高は738㎜。車重は101㎏だ。足つき性をはじめとした取り回しには苦労しない
全幅は705㎜となった新型。フロントブレーキのディスク化でブレーキレバー側にオイルタンク、マスターシリンダーを配置したため幅が広がった

主要諸元スーパーカブ110 新型JA59

車名・型式 ホンダ・8BJ-JA59 
 全長(mm) 1,860 
 全幅(mm) 705 
 全高(mm) 1,040 
 軸距(mm) 1,205 
 最低地上高(mm) 138 
 シート高(mm) 738 
 車両重量(kg) 101 
 乗車定員(人) 2 
 燃料消費率(km/L) 
  国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 68.0(60)〈2名乗車時〉 
  WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉 
 最小回転半径(m) 1.9 
 エンジン型式 JA59E 
 エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒 
 総排気量(cm³) 109 
 内径×行程(mm) 47.0×63.1 
 圧縮比 10.0 
 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500 
 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500 
 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 
 始動方式 セルフ式(キック式併設) 
 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火 
 潤滑方式 圧送飛沫併用式 
 燃料タンク容量(L) 4.1 
 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式 
 変速機形式 常時噛合式4段リターン 
 変速比 
  1速 3.142 
  2速 1.833 
  3速 1.333 
  4速 1.071 
 減速比(1次/2次) 3.421/2.500 
 キャスター角(度) 26°30´ 
 トレール量(mm) 73 
 タイヤ 
  前 70/90-17M/C 38P 
  後 80/90-17M/C 50P 
 ブレーキ形式 
  前 油圧式ディスク(ABS) 
  後 機械式リーディング・トレーリング 
 懸架方式 
  前 テレスコピック式 
  後 スイングアーム式 
 フレーム形式 バックボーン

主要諸元スーパーカブ110・JA44

車名・型式 ホンダ・2BJ-JA44
 全長(mm) 1,860
 全幅(mm) 695
 全高(mm) 1,040
 軸距(mm) 1,205
 最低地上高(mm) 135
 シート高(mm) 735
 車両重量(kg) 99
 乗車定員(人) 2
 燃料消費率(km/L)
  国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 62.0(60)〈2名乗車時〉
  WMTCモード値(クラス) 67.0(クラス1)〈1名乗車時〉
 最小回転半径(m) 1.9
 エンジン型式 JA10E
 エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
 総排気量(cm³) 109
 内径×行程(mm) 50.0×55.6
 圧縮比 9.0:1
 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500
 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.5[0.87]/5,500
 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
 始動方式 セルフ式(キック式併設)
 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
 潤滑方式 圧送飛沫併用式
 燃料タンク容量(L) 4.3
 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式
 変速機形式 常時噛合式4段リターン
 変速比
  1速 2.615
  2速 1.555
  3速 1.136
  4速 0.916
 減速比(1次/2次) 4.058/2.500
 キャスター角(度) 26° 30´
 トレール量(mm) 73
 タイヤ
  前 70/90-17M/C 38P
  後 80/90-17M/C 44P
 ブレーキ形式
  前/後 機械式リーディング・トレーリング
 懸架方式
  前 テレスコピック式
  後 スイングアーム式
 フレーム形式 バックボーン
 製造国 日本

著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…