価格差60,500円、あなたはどちらを選ぶ?

スーパーカブ110とクロスカブ110、峠道ではクロスカブに利。|見た目以外の差も大きい!

令和2年排出ガス規制に対応するため、同じタイミングでモデルチェンジしたホンダのスーパーカブ110とクロスカブ110。前者がビジネス&パーソナルユース、後者がアウトドアスタイルのレジャーモデルという位置付けであり、両車とも非常に人気が高い。ゆえに、どちらを買おうか迷っている人も多いはず。価格差は60,500円で、クロスカブ110の方が20%高く設定されている。走行性能をメインに、装備その他の違いについて紹介しよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

まずはスタイリングやスペックの違いからチェックしよう

ホンダ スーパーカブ110……302,500円

ホンダ クロスカブ110……363,000円(くまモンバージョン:374,000円)

新型スーパーカブ110の型式は8BJ-JA59。価格は302,500円。109cc(φ47.0×63.1mm)の空冷SOHC単気筒エンジンは最高出力8.0ps/7500rpm、最大トルク8.8Nm/5500rpmを発揮する。
新型クロスカブ110の型式は8BJ-JA60。価格は363,000円(くまモンバージョンは374,000円)エンジンの各諸元は共通で、2次減速比のみ2.500から2.642とローギアード化する。
スーパーカブ110のシート高は738mmで、足着き性はご覧のとおり良好だ。ライポジも原付二種としてはコンパクトな部類と言えるだろう。なお、キャスター角は26° 30´、トレール量は73mm、ホイールベースは1205mmとなっている。(ライダー:栗栖国安)
クロスカブ110のシート高は46mm高く、やや腰高な印象に。さらにハンドルも高くて広いので、ライポジの印象はスーパーカブ110よりも一回り大きめだ。キャスター角は27゜00′、トレール量は78mm、ホイールベースは1230mmだ。(ライダー:栗栖国安)
スーパーカブ110のステップは固定式。シフトペダルは伝統のシーソー式だ。
クロスカブ110は可倒式ステップを採用。ラバーのデザインも異なっている。

ハンドリングに大きな違いあり。クロスカブ110は安定指向だ

2022年のモデルチェンジで、よりロングストローク&スモールボアとした新型エンジンを獲得。合わせてキャストホイールやチューブレスタイヤ、フロントディスクブレーキ&ABSを導入したスーパーカブ110とクロスカブ110。エンジンについては基本的に共通であり、どちらも従来型より微振動が減って上品になったとすら感じた。ドリブンスプロケットの歯数はスーパーカブ110が35T、クロスカブ110が37Tを採用しており、これにより2次減速比はクロスカブの方が5.6%ショートになっている。街中では2台を同時に乗り比べてもその差を体感することはほとんどないが、上り基調の峠道に入ると印象が一変。クロスカブの方が明らかに元気がいい。なお、外付けのデジタルタコメーターで確認したところ、両車ともアイドリングは1,400rpmで、レブリミットは8,000rpm。加速フィールが力強くなるのは4,000rpmを過ぎてからだ。

大きく異なるのはハンドリングである。クロスカブ110はスーパーカブ110よりもホイールトラベル量が長く、フロントタイヤは1サイズ太い。また、これらの影響によるものか、クロスカブの方がキャスター角はわずかに寝ており、トレール量とホイールベースは長めとなっている。

スーパーカブ110は、ハンドルへの軽い入力だけでスイッとクイックに向きを変える特性であり、そこに前後17インチの大径ホイールならではの安定成分も加わり、街中での扱いやすさと安心感は小径スクーターを凌駕するほど。さらに、新型はキャストホイールの剛性やチューブレスタイヤのしなやかさも加わり、芯が一本通ったような1ランク上のハンドリングとなっている。

これに対してクロスカブ110は、まるでフロントホイールが18インチになったかのような、大らかな舵角の付き方となっており、そこにホイールトラベル量の長さによる大きめのピッチングも加わり、スーパーカブ110の派生モデルでありながら別ジャンルかと思えるほどハンドリングのキャラクターが異なるのだ。グリップ力の高い標準装着タイヤ(IRC・GP-5)とバンク角の深さも相まって、特にワインディングロードの下りは軽二輪クラスのような安定性と安心感がある。

フロントブレーキは新型で両車ともディスク化され、キャリパーはスーパーカブが片押し式シングルピストン、クロスカブは2ピストンとなっている。これによりタッチの差別化が図られており、スーパーカブはドラム時代を彷彿させるソフトな初期フィール、クロスカブはカッチリとした利き味となっている。車両の特性に合わせてこうした細かい部分にも差別化を図るあたり、カブシリーズが開発者にも愛されていることが伝わってこよう。


標準装着のフロントタイヤはIRCのNF63B Yで、サイズは70/90-17。フロントキャリパーはニッシンの片押し式シングルピストン。ホイールは全ての車体色でシルバーを採用する。
クロスカブ110のフロントタイヤはIRCのGP-5 Dで、スーパーカブ110よりも1サイズ太く、リヤと同サイズとなる80/90-17を採用。キャリパーはニッシンの片押し式2ピストンだ。
1958年登場の初代C100から採用されている大型レッグシールドは、ライダーに当たる走行風や泥跳ねを軽減する実用装備。これをクロスカブに移植するオーナー多し。左側には荷かけフック(積載重量1.0kgまで)を設ける。
クロスカブ110のヘッドライトはフレームマウントで、それを囲うようにガードが設けられる。上面に荷物が載せられそうな形状だが、ハンドルを大きく切ると干渉するためか、取扱説明書には積載に関する記述は一切なし。
2022年モデルでメッキからブラック塗装となったリヤキャリア。四隅に荷かけフックが設けられているため、荷物をしっかりと固定できる。
クロスカブ110のリヤキャリアは従来からブラックであり、新型スーパーカブ110がこれを流用する。なお、積載重量に関する記述はなし。

差別化の妙に感心しきり。あとは予算と好みで選ぶべし!

クロスカブ(EBJ-JA10)は2013年にデビュー。2018年に初のフルモデルチェンジを実施し、前後14インチホイールの「50」が登場したことで、110の方は車名の末尾に排気量を表す数字を追加した。レッグシールドを廃した2代目の外観は、往年のハンターカブを彷彿させるもので、開発者もそれを明言している。ゆえに、その2年後の2020年にCT125・ハンターカブがデビューしたことで、クロスカブ110の売り上げが減少、もしくはディスコンになるかと思いきや、むしろ販売数を伸ばしているというから驚きだ。

今回、スーパーカブ110と乗り比べたことで、クロスカブ110の魅力を再認識したというのが率直な感想だ。足回りの刷新で両車の違いがより明瞭になったこともあろう。素の状態での積載量は、リヤキャリアが同一なので同等レベルだが、そこからさらに増やすとなると、クロスカブ110の方がカスタムパーツが豊富にあり、よりロング&キャンプツーリング向きと言えるだろう。

一方、スーパーカブ110も万能性という点においては感心しきりで、シートの低さによるフレンドリーさやレッグシールドによる耐候性、スクーターにはないモーターサイクルを操っている感覚など、総合的なバランスの良さはやはり原点にして頂点と言わざるを得ない。

この2台、どちらを選んだとしても決して後悔はしないはず。あとはスタイリングの好みと予算で選んでほしい。


スーパーカブ110(2022年モデル)主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JA59
 全長(mm) 1,860
 全幅(mm) 705
 全高(mm) 1,040
 軸距(mm) 1,205
 最低地上高(mm) 138
 シート高(mm) 738
 車両重量(kg) 101
 乗車定員(人) 2
 燃料消費率(km/L)
  国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 68.0(60)〈2名乗車時〉
  WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉
 最小回転半径(m) 1.9
 エンジン型式 JA59E
 エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
 総排気量(cm³) 109
 内径×行程(mm) 47.0×63.1
 圧縮比 10.0
 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500
 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500
 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
 始動方式 セルフ式(キック式併設)
 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
 潤滑方式 圧送飛沫併用式
 燃料タンク容量(L) 4.1
 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式
 変速機形式 常時噛合式4段リターン
 変速比
  1速 3.142
  2速 1.833
  3速 1.333
  4速 1.071
 減速比(1次/2次) 3.421/2.500
 キャスター角(度) 26°30´
 トレール量(mm) 73
 タイヤ
  前 70/90-17M/C 38P
  後 80/90-17M/C 50P
 ブレーキ形式
  前 油圧式ディスク(ABS)
  後 機械式リーディング・トレーリング
 懸架方式
  前 テレスコピック式
  後 スイングアーム式
 フレーム形式 バックボーン

クロスカブ110(2022年モデル)主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JA60
 全長(mm) 1,935
 全幅(mm) 795
 全高(mm) 1,110
 軸距(mm) 1,230
 最低地上高(mm) 163
 シート高(mm) 784
 車両重量(kg) 107
 乗車定員(人) 2
 燃料消費率(km/L)
  国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 67.0(60)〈2名乗車時〉
  WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉
 最小回転半径(m) 2.0
 エンジン型式 JA59E
 エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
 総排気量(cm³) 109
 内径×行程(mm) 47.0×63.1
 圧縮比 10.0
 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500
 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500
 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
 始動方式 セルフ式(キック式併設)
 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
 潤滑方式 圧送飛沫併用式
 燃料タンク容量(L) 4.1
 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式
 変速機形式 常時噛合式4段リターン
 変速比
  1速 3.142
  2速 1.833
  3速 1.333
  4速 1.071
 減速比(1次/2次) 3.421/2.642
 キャスター角(度) 27°00´
 トレール量(mm) 78
 タイヤ
  前 80/90-17M/C 44P
  後 80/90-17M/C 44P
 ブレーキ形式
  前 油圧式ディスク(ABS)
  後 機械式リーディング・トレーリング
 懸架方式
  前 テレスコピック式
  後 スイングアーム式
 フレーム形式 バックボーン

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