伝統を脱ぎ捨て“モンスターらしさ”を再定義

初代登場から30年以上。空冷Lツイン、鋼管トレリスフレーム、荒々しい鼓動感――ブランドの象徴だった“伝統”を受け継ぎながらも、2026年型はその価値観を大胆に更新してきた。新型モンスターは、ひと目でそれと分かる存在感を残しつつ、従来型とは異なる思想で作り込まれている。
筋肉質に張り出した“バイソンバック”形状の燃料タンクは初代のDNAを継承しながら、よりコンパクトで凝縮感の強いシルエットへ進化。タンクからシート、テールへ流れるラインもシャープで、軽快感を際立たせる。DRLを組み込んだフルLEDヘッドライトは、丸形モチーフをベースに立体的な内部構造を採用。クラシックとモダンを融合した表情を生み出している。余計な装飾を削ぎ落としたデザインは、まさに“シンプル・イズ・ベスト”そのものだ。

新世代890cc Vツインの実力を投入

心臓部には、新型パニガーレV2譲りの890cc水冷90度Vツインを搭載。従来のデスモドロミック機構を廃し、バルブスプリング式へ移行したことで大幅な軽量化を実現した。最高出力は111ps。さらにIVT(可変吸気バルブタイミング)を採用し、4,000rpm以上で最大トルクの80%以上を発揮する。低回転では扱いやすく、中回転域ではLツインらしい鼓動感、高回転では鋭い加速を味わえる。振動や機械的ノイズも大幅に抑えられ、日常域からスポーツライディングまでシームレスに楽しめる万能型ユニットへと進化した。

軽さと強さを追求したモノコックフレーム

車体構成も一新され、従来の鋼管トレリスフレームに代わってアルミ製モノコックフレームを採用。エンジンを構造体の一部として活用することで、高剛性と軽量化を両立している。足まわりにはSHOWA製43mm倒立フォークとリアショックを装備し、スポーティでありながら街乗りでも硬すぎない絶妙なセッティングを実現。ブレンボ製M4.32ラジアルキャリパー+320mmダブルディスクが、高い制動力とコントロール性を支える。
電子制御も充実している。6軸IMUを核に4種類のライディングモード(Sport/Road/Urban/Wet)を設定し、コーナリングABSやトラクションコントロール、ウイリー&エンジンブレーキ制御を搭載。5インチTFTメーターは視認性に優れ、左ハンドルのジョイスティックによる直感的な操作で走行中でも迷わず設定変更できる。

“優等生”になったのに、ちゃんとドゥカティだ

跨るとまず感じるのは、驚くほどのスリムさと軽さだ。数値以上に“マスの集中感”が強く、大排気量ネイキッドとは思えないほどコンパクト。取り回しでも重さを感じさせないし、走り出すとハンドルを切った瞬間からフロントまわりがスッと動き、切り返しではヒラリと向きを変え、ライダーの入力に対する反応も極めてダイレクトだ。

そして低速域での安定感。これ、本当にドゥカティなのか?と思うほど扱いやすいのである。従来のLツインにあったギクシャク感や神経質さは影を潜め、街中で欲しかった繊細なスロットル操作にも自然に追従してくれる。クラッチも軽くミートも滑らかで、渋滞路でもストレスが少ない。一方で回転を上げていくと、そこには確かに“モンスター”の血が流れている。3,000rpmを超えたあたりからトルクが厚みを増し、Lツインらしい鼓動とともに7,000rpm付近からさらに鋭く加速していく。最新のドゥカティは鼓動感があるのに回転はとてもスムーズ。かつてのドコドコ感や振動は過去のものだ。

数値以上に感情に訴えかけてくる

面白いのは、その速さが決して怖くないことだ。以前のモンスターには、ライダー側へある種の“覚悟”を求める荒々しさがあったように思う。しかし新型は違う。電子制御が非常に自然で、ライダーを過剰に緊張させない。コーナリングABSやトラクションコントロールの介入も実に滑らかで、限界域でも不自然さが少ないのである。
ワインディングでは、この車体の真価がさらに際立つ。切り返しは驚くほど軽快。それでいて接地感は高く、フロントタイヤのグリップ状況が手に取るように伝わってくる。倒し込みでは自然にインへ向きを変え、クリッピングまでの一連の動きがとにかくスムーズ。
従来型の“重厚なLツインスポーツ”というより、“軽量ハイパフォーマンスネイキッド”へと完全に進化した印象だ。しかも、その軽快さの中にドゥカティらしい色気がちゃんと残っている。スロットルを開けた瞬間に高鳴るLツインサウンドや、どこか動物的なしなやかさのある乗り味、エンジンと直結したような後輪が路面を蹴り出すダイレクト感など。数字以上に感情へ訴えかけてくる独特のフィーリングは健在である。
新型モンスターは、“扱いやすさ”と“刺激”という、本来なら相反する要素を高次元で両立し
てきた。かつての尖ったモンスターを知るライダーほど、この変化には驚くだろう。しかしそれは決して“丸くなった”のではない。ドゥカティとしての速さや楽しさの本質をもう

スタイリング

初代モンスターのエッセンスを今どきの感覚で仕立て直したデザイン。ドゥカティ史上最も軽いVツインをそのままフレームの一部として使うことで、車体センターにマス集中した凝縮感のあるデザインになっている。

足つきチェック(身長179cm・体重73kg)

日本仕様(写真)はローシート&ローサスペンションを採用し、スタンダート比から40㎜も低いシート高775㎜を実現。シートまわりもスリム化され足着きはすこぶる良い。ハンドルバーも高く前寄りに設定され、スポーティかつリラックスしたポジションに。
ライダー身長179cm。体重73kg。

ディテール解説

上級仕様の「モンスター+」には、メーターバイザー状のカウルとパッセンジャーシートカバーが付く。カラーは標準仕様とともに「ドゥカティ・レッド」と「アイスバーグ・ホワイト」の2色を設定。
ドゥカティのネイキッドモデルで特徴的なダブル「C」照射形状フルLEDヘッドライトを採用。両サイドのDRLにはパニガーレV4のフロントを思わせる「カット」が入る。

前後ワンピースタイプの新型シートは動きの自由度も高い。従来型より5mm低く、さらに前方部分が絞られて足着き性もアップ。リア側はエンボス加工のロゴ入りで高級感も漂う。

最高出力111psを発揮する新型パニガーレV2系のエンジンは従来型より5.9kg軽量化。IVT(インテーク可変バルブ・タイミング)機構により4000~10000rpmの間で最大トルクの80%以上を発揮するなど扱いやすさと高性能を両立する。
従来からの片持ち式スイングアームから一転、新型パニガーレV4/V2由来の軽量な両持ち式スイングアームを採用。クイックシフターを標準装備する。
背中の筋肉が盛り上がった水牛を思わせる“バイソンバックタンク”は歴代モンスターが採用する伝統のデザインだ。新型には第2世代で導入されたフロントエアインテークをあらたに取り入れている。容量は14L。
ブレーキはフロントにブレンボ製φ320mmのデュアルディスク&M4.32ラジアル4Pキャリパーを採用し盤石のストッピングパワーを確保。
リアにはφ245mmのシングルディスク&2Pキャリパーを採用。
フロントサスペンションはSHOWA製φ43mm倒立フォークを採用。調整機構は持たないタイプだが、街乗りからワインディングまで幅広い走りに対応した扱いやすいセッティングになっている。
モノショックもSHOWA製。同系エンジンを搭載するパニガーレV2やムルティストラーダV2同様、車体左サイドに水平に近い角度でマウントされたリンクレスタイプを採用。シンプルな構造でプリロード調整もしやすい。
ピレリのストリート用タイヤの最上位モデル「ディアブロ・ロッソIV」を標準装備。フロント120/70、リア180/55と標準的なサイズでハンドリングは素直、かつ十分なドライグリップ性能とウェットでの安全性を確保。
従来型から16%大きくなった5インチTFTディスプレイ。周囲の明るさに応じて自動で切り替わる機能や2種類の表示デザインを採用。マルチメディアシステムおよびターンバイターンナビゲーションにも対応する。
4種類のライディングモードを搭載。新しい花びら状のジョイスティック操作により、コーナリング対応のABSとトラコン、ウイリーコントロール、エンジンブレーキコントロールなど電子制御の設定も容易だ。

スペック

  • ボディサイズ: 全長×全幅×全高=-×-×1088mm
  • ホイールベース: 約1492mm
  • シート:高 775mm(日本仕様)
  • 車両重量: 約175kg
  • エンジン: 水冷V型2気筒 DOHC 4バルブ排気量890cc
  • トランスミッション: 6速リターン
  • 最高出力: 111 PS / 81.6 kW @ 9,000 rpm
  • 最大トルク: 91.1 Nm @ 7,250 rpm
  • 燃料タンク容量: 14L
  • フレーム: アルミニウム製モノコック
  • サスペンション(ホイールトラベル):
  • フロント:倒立式テレスコピック(130mm)
  • リア:リンクレス式モノショック(145mm)
  • ブレーキ:
    F:φ320mmダブルディスク+4Pラジアルキャリパー
    R:φ245mmシングルディスク+2Pキャリパー
  • コーナリングABS標準装着
  • タイヤ: フロント:120/70-17、リア:180/55-17
  • 燃費: 5.2 L/100km
  • 価格: 1,662,000円~(消費税込み)