多勢に無勢!? シグナス系にガチンコ勝負!

スクーターレース「S-1」の最高峰クラスであるS-1PROはシグナスX/グリファスのワンメイクレースと言っていいほど。2026年初戦では17台が出走した内15台がシグナス系だ。たしかに同モデルは素性も良く、チューニングパーツやノウハウも豊富だから手を付けやすい。また、ショップの看板を背負ったセミワークス的なチームにとってはレースのノウハウやパーツをそのままフィードバッグできるメリットも。

中央の6番が今回紹介する車両(GOD野村プロデュースwithT.アキラ/小河原 崇選手)

そんなシグナス勢に対し、レトロな2スト車両で立ち向かうプライベートチーム(マシン)も存在! 軽量化や扱いやすさを追求し、往年のスプリントレースを彷彿とさせる佇まいは市販車とは遠くかけ離れているけれど、ガチンコ勝負への執念が感じられるほど。過去の記録と照らし合わせても好タイムだった今回のレースにおいても他車に引けを取らない走りを披露した。そのディテールをチェックしてみよう。

80年代の原チャリを大胆にカスタマイズ!

写真の状態だとベースがわかりにくいけれど基本的にヤマハ・チャンプ80を使用している。50㏄クラスのチャンプ/RSと比べてフレームの剛性が高く、エンジン自体もスタッドボルトが太かったり、ピッチが広いので発展させやすいという。

フレーム関しては軽量なアルミ材を盛り込むこともあるけれど、当車のメカニックはアルゴン溶接機しか持っていないので“鉄”限定での加工がメイン。アルミ材のサブフレームはホームセンターで購入した角材をそのまま装着している。

注目はリヤショックだ! メインチューブとアンダーチューブにサス受けを追加して車体中央に移設している。マスの集中化も図れるセンターマウントに加えてリンク式とすることで初期作動と“踏ん張り”を両立。また、サスペンションは減衰力を圧側、伸び側で独立して調整できるドゥカティ900SS用を使ってレース向けに対応させている。

なお、フロント足周りはアンダーブラケットを加工してシグナスX(2型以降)のφ33フォークを装着。剛性を高めるとともにフォークオイル(ヒロコー製)は硬めを選び、シートパイプ(オリフィス)を適正化している。

ブレーキは前後ディスク仕様にチェンジ! NS-1用のφ200㎜ローターで優れた制動力を発揮させる。フロントキャリパーはANCHOR製4ポットキャリパーを組む。

さらに排気系では、モトクロッサーYZ80用を加工して前側に大きく膨らんだワンオフチャンバーをセットする。2スト全盛期のミニバイクレース用ではよく見られた形状だが、管長をいかにして稼ぐか=パワーを絞り出すかというレースならではレイアウトなのだ。

水冷化でフルにパワーを発揮!

パワー面の肝となるパワーユニットはKN企画製のターゲット90(RS90)用φ54㎜シリンダーを使い、ヤマハ系対応のスーパーロングクランク(47.6㎜)を組み合わせて約110㏄まで排気量を拡大。これにベリアルサービス製のシリンダーヘッドを加工流用して水冷化している。

キャブレターはPWK28を使用し、ジェット類の合わせ程度。

とはいっても全水冷ではなく、スタッドボルト周りにパイプを追加する程度に留め、熱がこもりやすい排気ポートから上部分を重点的に冷やす設計に。極端な話、必要な周回数を持たせられればいいわけで、こういった考えは燃料タンクにも及んでいる。純正タンクは容量3.5ℓだが、こちらは初代JOG(AF27)、通称ペリカン用(3L)を使って小型化している。

保安部品が必要のないレースでは軽量なインナーローターが定番だ。スズキ・RM80純正ローターやCDIを移植している。

軽量化はもちろんだが、純正タンクではフルボトム時にリヤタイヤに接触してタンクに穴が空いてしまうという。クリアランスを確保するため、薄くてフラットなJOG純正を使用しているそうだ。

細かなセッティングやワンオフ外装も見どころ

筆者予想で20馬力は出ているであろうパワーを伝達する駆動系については、マロッシ製プーリーこそ既製品だが、カム溝を40度ストレートに固定したオリジナルセカンダリー(トルクカム)や純正を軽量化したクラッチなどでセッティングを行い、Vベルトが切れる可能性が高まるものの、かなり硬めのセンタースプリングを投入して加速力を重視。

ラジエターはYZ85用を使用。ウォーターポンプをスイッチで手動切り替えできるようにしている。

ちなみに前後ホイールは10インチ。前にライブDio純正、後ろに横型JOG用のハブを使って社外アルミホイールを装着している。タイヤについてはハイグリップが少なくなってきた昨今、銘柄選びが難しくなってきたが、この車両はCST(チェンシン)製のCS-SRをチョイスしている。

アルミのサブフレームにはKOSO製の温度計と電圧計、OPPAMA製タコメーターを追加している。

外装は純正をトレースしたFRP材で、ライディングポジションなどに合わせてカット。ゼッケンプレート風のサイドカバーや薄型のオリジナルシートがいかにもレーシーな雰囲気を漂わせる。

練習走行や予選では好タイムを刻んだが、肝心の決勝ヒートでは中盤に懸念していたVベルト切れのトラブルで無念のリタイアとなってしまった・・・・・・。しかし、シグナスX/グリファスが多勢を占める中で、ビィィーンという2ストならではのエキゾーストノートを奏でながら疾走する雄姿はかつてのスクーターレースを思い起こさせてくれた!