ボルボの大型トラック「FH」シリーズの2026年モデル

ボルボFH(2026年モデル)。美しいブルーのボディカラーは、本国でのイメージカラーだそう。

ボルボFHは、2014年に日本導入が開始された2世代目モデルで、欧州車らしいモダンなスタイリングと先進機能を含む高い安全性能、快適な運転及び居住性能を誇る。

13Lディーゼルターボエンジンによる力強い走りを見せるボルボFH。

大型トラックに分類され、トレーラーを牽引するトラクターと荷台を架装するロングフレーム付きリジッドの2種類を中心に展開している。その搭載されるエンジンは、なんと13.0Lの直列6気筒ディーゼルターボエンジンで、12段変速電子制御オートマチック「iシフト」を組み合わせる。

ボルボFHに搭載されるD13型13.0L直列6気筒ディーゼルターボエンジン(写真は2025年モデル)。
ボルボFHの「iシフト」シフトレバー(写真は2025年モデル)。

FH2026年モデルの改良点だが、最大の特徴は、日本の大型トラック初となる「カメラモニターシステム」の全車標準搭載だ。これは従来の鏡面サイドミラーに代わり、カメラ映像を車内のディスプレイに表示するもの。つまり、乗用車でも採用されるようになっているデジタルドアミラーのトラック版である。

ボルボFHの全車に標準装備となった「カメラモニターシステム」。

さらにシリーズ初のリモコンキー及びスタートボタンシステム「パッシブスタート」やテレマティクスサービス「ボルボ・コネクト」を搭載。このほかにも、左折巻き込みリスクを感知した際の緊急制動機能を追加した「速報衝突警報装置」やエンジン始動時もドアと連動して機能する「オートマチックパーキングブレーキ」などの機能向上も図られている。

リモコンキー。大きさは乗用車と同等だ。
プッシュスタートスイッチ。2026年モデルから、始動時に物理キーを差し込みが不要に。

また現代的なニーズに応えたと感じらせるのが、インフォテイメントシステムが、android AutoとApple Car Playに対応したことも挙げられる。

Apple CarPlayとandroid Autoに対応したインフォテインメントシステム。

牽引するトレーラーの軌跡までわかる「カメラモニターシステム」

今回のボルボFH試乗会では、トラックの基本性能は同等なため、「カメラモニターシステム」の体験が主となった。

サイドミラーの代わりとなる「カメラモニターシステム」は、キャビン上部に装備。

2026モデルの外観上の最大の違いは、お馴染みの巨大なサイドミラーが省かれ、小さな羽のようなカメラシステムが備わるようになったこと。ミラーよりも装着位置が高い上、小型化。さらに停車中や時速15㎞以下で、電動で折り畳むこともでき、接触による破損も防止できる。

「カメラモニターシステム」を格納すると、ここまでコンパクトに。

左右に備わるカメラ映像は、同じ側にあるAピラー部に設置されたモニターに表示。運転席側となる右側に縦長12インチを。助手席側となる左側には、縦長15インチを装備している。かなり大きな画面だが、運転席に着座してみると、前方の視界の邪魔にならないモニターサイズなだけでなく、サイドミラーが無くなったことで周辺視界も良くなっていることを実感。さらにミラーよりも視線移動が少なく、視認性に優れることも分かった。

運転席側の12インチモニター。縦長なことを活かし、2画面表示となる。中央のモニターには、バックカメラの映像も映る。
助手席側の15インチモニターも同様に左側の映像を映す。画面サイズの違いによる市にせいの違いは感じない。
「カメラモニターシステム」未装備の2025年モデル。ドアミラーの大きさを感じる。
「カメラモニターシステム」未装備の2025年モデル。ミラーの張り出しは意外と大きい。

早速、ドライビングポジションを調整し、試乗を開始する。ステアリングの角度調整の幅が大きいこともあり、意外と乗用車に近い感覚の運転姿勢が取れるので違和感はない。それでも、大きなガラスエリアと着座位置の高さによる視界の違いは、乗用車では味わえないトラック特有のものだ。

見上げる高さにあるボルボFHの運転台。手すりとステップを使っての乗り降りが必要。

試乗車にはトレーラーが連結されており、運転席からトレーラー後方までの距離は10m程ある。アルファードが約5mなので、走行中はミニバン2台分先の動きに注意する必要があるのだから大変だ。

トレーラーを連結したボルボFH。運転時は乗用車の2倍を超える10m越えの全長にドキドキする。

シフトモードは至ってシンプル。「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「A(オートモード)」、「N(マニュアルモード)」の4段階のみ。早速、Aモードにシフトし、パーキングブレーキを解除で発進可能に。

ボルボFHの「iシフト」シフトレバー(写真は2025年モデル)。今やパーキングブレーキも電動式だ。

アクセルを踏み込むと、スムーズに加速を開始。13.0Lディーゼルターボエンジンのフル加速は、高出力の乗用車のような刺激はないものの、迫力に溢れる。そして、素早く70㎞/hに到達する。

トレーラーを牽引するボルボFH。静かだが、ディーゼルエンジンが力強いサウンドを奏でる。

普段、乗用車にしか乗らない筆者にとって、走行中のデジタルミラーは視線移動が少なく、サイドミラーよりも見やすいと感じた。特にコーナーでは、しっかりとトレーラーの後端や走行ラインを追うことができ、全く車線をはみ出すことなく、走ることができた。

首振り状態のトラクターで、デジタルミラーによるトレーラー後方の確認し易さを体験。

新ミラーには、デジタル化を活かした複数の機能を実装。モニターへの表示は、通常ビューと広角ビューの切り替えが可能。後退時など周囲の障害物の有無も掴みやすくなっている。さらに画面内に基準線を設定できるので、トレーラー後端や車両後方の位置を直感的に掴むことも。

日中の明るい状態でも画面が見やすいモニター。
フロント部や助手席側側面は、物理ミラーを継承。ミラーも機能により使い分けている。

さらに後退時には、トレーラーの後端追従表示してくれるので、トレーラーの向きが変わっても最後端をデジタルミラーだけでも確認できるように。従来のドアミラーでは、ドライバーのミラーの調整か、目視確認が必要だったことを考えると、かなり利便性が高まったといえる。

車両端部との距離認識をし易くする黄色のラインを画面内に表示可能。位置も調整できる。
カメラの操作と表示切替は、ドア部とモニターの下部のボタンで行なう。

「暗視モード」も備えるなど夜間仮眠時などの防犯にも有効

屋内で「暗視モード」をテスト。モニターの赤外線カメラ映像が明るくなっていることが分かる。

カメラ性能が高いので街灯などがある場所では夜間の映像も確認できるが、暗い場所でも視界が確保できるように、赤外線ライトを内蔵した「暗視モード」も装備。

「暗視モード」の映像。人の表情が分かるほど、はっきり見えるのは驚き。
画面の三日月型のマークは「暗視モード」を示すもの。
「暗視モード」では、カメラの側に赤外線ライトが点灯する。

走行中はもちろんだが、長距離トラックに必須となる車内の仮眠中でも、物音などで車外を確認したい時に、カメラを活用できる。この機能は、海外でも増えている女性ドライバーに好評とのことだ。

昼夜共に、キャビンのカーテンを閉じたままモニターで外が確認できるのも強み。

ボルボトラックでは、FHに全車標準化を決断した理由について、「欧州市場では5年ほどの実績があり、アップデートも進んでいるため、故障のリスクも非常に少なくなっている。さらに物理的破損があった場合も、国内に修理部品を在庫しており、サイドミラーを破損した状況と同様な時間で修理が可能」という。快適面のメリットとして、カメラ化による空気抵抗の低減による風切り音の軽減などの効果もあるとしている。

カメラモニターシステムのデジタルカメラ部。
カメラモニターシステムのカメラ部の内部。
カメラモニターシステム用のモニター。

乗用車のデジタルミラーに関しては、車室内のスペースや前方視界の確保の関係などから、車内モニターの搭載位置に課題があり、普及していない現状だ。しかし、大型トラックに関してはメリットが大きいことを感じた。また夜間に車内で就寝することもあるため、監視カメラ代わりに使えるのは心強いだろう。今後の普及と市場の反応に、注目していきたい。

「カメラモニターシステム」は小さな翼のようだ。