CO2回収装置を搭載したスズキ・カーボンキャプチャーキャリイ

スズキは「人とくるまのテクノロジー展 2026 YOKOHAMA」(2026年5月27日〜29日、パシフィコ横浜)に出展し、軽トラックのスーパーキャリイにCO2回収装置を搭載した車両を展示した。その名も「CARBON CAPTURE CARRY(カーボンキャプチャーキャリイ)」である。

CARBON CAPTURE CARRY(カーボンキャプチャーキャリイ)

CO2は走行中の排気から回収する。カーボンニュートラル燃料(CNF)の使用と組み合わせることで大気中に排出されるCO2の量よりも回収・吸収する量が上回る「カーボンネガティブ」を実現するのが、CO2回収装置を開発する目的。CO2回収装置を軽トラックに搭載したのは、農家での使用を想定しているからだ。

ハウス農家では、農作物の成長を促すために灯油を燃やし、そこで発生するCO2をビニールハウスに供給する。ハウスが20a(約2000平方m)だと仮定すると1日に約1.6Lの灯油を燃やし、1日あたり4kgのCO2を供給するという。

スズキの調査によると、軽トラックの平均的な一日の走行距離は約20km。20km走行時に排出するCO2は約2kgになり、このうちの半分を回収し、ハウスに利用することを想定してシステムを組んだ。CO2回収によって1kg負担できれば、灯油消費量は4分の1の0.4L減り、そのぶんCO2排出量の面でも、燃料コストの面でも(農家の負担が減る)メリットが生まれることになる。

荷台の面積をできるだけ奪わないためにも、CO2回収装置はコンパクトに成立させたい。しかしカーボンキャプチャーキャリイは開発のファーストステップの位置付けであり、さまざまな技術にトライする観点から小型化を突き詰めた設計にはなっていない。その証拠に、排気をさまざまに分岐したり、外部と接続したりできる三方弁が複数設置されている。

カーボンキャプチャーキャリイは、荷台部分にCO2回収装置を設置。

CO2回収のプロセスはこうだ。まず、マフラー通過後の排気管から排気の一部をバイパスさせる。バイパス部の下流側に電磁弁が付いており、この弁を制御することで排気をせき止め、CO2回収装置側に取り込む仕組みだ。つまり、ブロワーなどを用いて強制的に引き抜くことはしていない。

排気の一部をバイパスさせる。

バイパス後の排気は冷却器を通る。詳細は後述するが、CO2を回収する吸着材は温度が低いほうが吸着量は増える特性があるためで、ここで50℃程度まで冷やす。吸着器はEGRクーラーのような見た目だ。荷台右側下に冷却器に用いる冷却水と大気との熱交換を行なうラジエーターが設置されている。

排気を冷却器で冷やす。

排気を冷却すると水分が凝縮して凝縮水が生じる。これを気液分離器で捕らえる。排気中の水分が少ないほうが吸着効率は高まる特性があるため、排気中に残っている水を吸湿材で取り除く。その後、H2Oフリーになった排気は吸着材を通過。ここでCO2が吸着され、CO2フリーになった排気(主に窒素)が大気に放出される。放出のさせ方は今後の検討課題と捉えており、現状が最終形とは言い切れないとのこと。吸湿材と吸着材は荷台の前端、荷台側に張り出したキャビンの下に設置されている。

排気を冷却した際に生じた水分は気液分離器で捕らえる。
まだ排気中に残っている水分を吸湿剤で取り除く。その後、CO2を吸着材でキャッチしてからCO2フリーになった排気を大気に放出する。

CO2の吸着材には物理吸着に分類される金属有機物構造体(MOF)やゼオライトなどを検討しているという。CO2の回収には化学吸収を行なうアミンも考えられるが、取り扱いのしやすさ(アミンは溶液、MOF/ゼオライトは固体)から固体吸着材を選択した。

CO2吸着材は、金属有機物構造体(MOF=Metal-Organic Framework)やゼオライトなどを検討している。

カーボンキャプチャーキャリイでは、固体吸着材にCO2を吸着する(表面に空いたナノレベルの穴に捕らえる)だけでなく、吸着したCO2を脱離する(吸着材から剥がす)ことも考えている。固体吸着材は熱を持つとCO2を離す性質がある。ハウスにCO2を供給する際は灯油を燃やすが、そのとき発生する熱をCO2回収装置に取り込み脱離する方法を検討しているという。また、マフラーの上流から排気をバイパスさせ、高温の排気が持つ熱を脱離に使うことも検討しているという。

全開時のように負荷が高い運転状況では排気の温度が高く、ガス流量も多いので回収は行わず、CO2回収に適した条件のときに排気をバイパスさせる考え。スズキのCO2回収装置は将来の社会実装に向け、さまざまな検証を行なっていくことになる。

カーボンキャプチャーキャリイの室内。

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