注目の異色のツーリングマンガ『終末ツーリング』の作者・さいとー栄先生の愛車遍歴とバイクライフ

2025年10月4日~12月20日にかけてオンエアされた『終末ツーリング』は、ヨーコとアイリのふたりの少女が荒廃した世界をオフロードバイク・セロー225Wで旅をするTVアニメで、アニメファンだけでなくライダーからも注目され、話題となった。
これまで2回に渡って原作者・さいとー栄先生に『終末ツーリング』のアニメとマンガについて話を伺ってきた。最終回となる今回は、先生のバイクライフを中心に話を聞くことにした。
さいとー栄先生の最初の愛車はヤマハYSR50。その後ステップアップし、限定解除もパスする

『終末ツーリング』を読んでいると、作品からひしひしと感じるのがさいとー栄先生のあふれるバイク愛だ。彼がバイクに愛情を傾けることになったきっかけと、これまでの愛車遍歴について尋ねた。
「学生時代からバイクに興味があったのですが、三ない運動の影響もあって高校在学中に先に取得したのは四輪免許でした。当時は空前のレプリカブームの真っ只中ということもあり、付帯免許で乗れるバイクということで最初にYSR50を買いました。仲間がNSR50やGAGに乗っていたことから誰ともメーカーが被らなかったことが選んだ理由です。はじめての愛車となったYSR50は原付とは思えない高性能に大変満足しました。この車両でバイク……とくにヤマハ車の魅力の虜になり、これまで乗り継いだ30台近いのバイクのうち15台がヤマハ車が占めます」。
原付から排気量の大きなバイクへステップアップしたのはいつ頃のことなのか?

「中免を取得したのは20歳の時のことです。YSR50は気に入っていたので手放すことなくFZR250を増車しました。このバイクは免許を取る前に購入を決めてしまい、バイク屋に頼んで免許が取れるまでは店のショーウインドウに飾ってもらいました。さらに教習内容を忘れないうちに限定解除にも挑戦します。当時は大型自動二輪の教習がなく、免許取得への道は一発試験のみ。埼玉県の試験場は全国でも指折りの『合格させない試験場』として有名でしたが、なんとか6回目でパスすることができました。その日の合格者はボクだけだったので喜びもひとしおでした」。
バイク熱が燃え上がった時に出会ったセロー225。このバイクで北海道ツーリングに出かけたのは良い思い出

限定解除に合格したさいとー栄先生は、最初の大型バイクにFZ750の購入を考えていたが、生産が終了したことから後継のFZR750を購入する。そこから彼のバイク熱は一層燃え上がり、増車に次ぐ増車で6~7台を同時所有していたという。ちょうどセローと出会ったのもその頃のことだったそうだ。
「セロー225はスピードこそ出ませんが、その代わりにツーリングが楽しいバイクでした。北海道ツーリングに出かけたのは良い思い出となっています。このバイクに乗っていたときは、まさか将来、主人公がセローで旅するバイクを描くとは思っても見ませんでしたが(笑)。セロー以外でこれまで所有したバイクの中で印象深い車両を挙げると、国産車は草レースで走りまくったベルガルダヤマハのSZR660、同型のエンジンを搭載したXTZ660テネレ(モタード仕様)、友達から譲り受けたゼファー750と同1100、KDX220SRなどです。輸入車はBMW1150ロックスター、同K1200S、ドゥカティ・パニガーレなどです」。
現在、さいとー栄先生が所有しているバイクについても尋ねた。

「現在所有しているのはロイヤルエンフィールド ベア650、セロー225Wと同WE、それと最近買ったCT125ハンターカブ 、それとしばらく動かしていませんが、最初に買ったYSR50もまだ持っています。CT125は小説『スーパーカブ』のスピンオフ作品『スーパーカブRei』を描かせて頂いたことがきっかけで礼子の愛車だったハンターカブを購入しました。このバイクはちょっとした用足しにも便利でとても気に入っています。今、いちばん乗る機会が多いバイクですね。そんなこともあって三沢編ではクレア・キーンスに乗せました」。

4年前のモトチャンプのインタビューでは、不動車のセロー225WEを入手し、時間を見つけてはレストアしているとさいとー栄先生は語っていた。その車両は完成したのだろうか?
「久しぶりのレストアでしたが、あの後すん完成しました。ロケ取材にツーリングにと活躍してくれたんですが……。その後、完全な終末ツーリング車のレプリカを作ろうと新たに買ったセロー225Wの部品取り車になっちゃいました。セローの部品は今では絶版のものが多いんですよね。このWの方は買った段階で状態が悪く、なかなか思うように作業は進まなかったのですが、アニメ化のイベントで使用することになったので、プロの手を借りつつ作業のスピードを早めました。こちらも現在はほぼ完成して、走る以外にも展示などにも使ってもらってます。あとは自分しかわからないような細部に手を入れたいところが少し残っているのですが、WEの方もそのうち直したいなと思っています」。
北海道のロケハン、空自浜松広報館のF-4ファントム取材など執筆のための取材に精力的なさいとー栄先生

これまでに様々なバイクを乗り継いできたさいとー栄先生だが、連載で多忙の中、ツーリングなどバイクを楽しむ時間を捻出するのも大変だと思うのだが……。
「仰る通りで、最近は仕事が忙しくて、以前のような長距離ツーリングにはなかなか行けていません。ですが、マンガのロケハンにはなるべくバイクで出かけるようにしています。東北編を描くにあたっては愛車のKTMで実際に現地を回って写真を撮ってきました。ただ、北海道は関東からは距離もあるし、まとまった休みが取りづらいので、ちょっとバイクで現地を訪ねるのは難しいですね。じつは一昨年、家族旅行を兼ねて道南をクルマで回ってきました。北海道は大好きな場所なので、じっくりと執筆する予定なのですが、これから物語の舞台となる道央・道東・道北の取材はどうするか、ちょっと頭を悩ませています。まあ、飛行機で行ってレンタルバイクを利用するという方法もなくはないのですが、じつは飛行機デビューしたのは最近のことで、あまり乗り慣れていないんですよ。飛行機そのものは大好きなんですけどね」。
飛行機と言えば、三沢編では緻密に描かれたF-4ファントムが登場したが、こちらも取材されたのだろうか?

「ファントムは昔から大好きな飛行機で、連載当初から何かしらのカタチで作品内に登場させるつもりでいました。執筆に当たっては、事前に浜松にある航空自衛隊広報館『エアパーク』を訪れました。今は条件を満たした人は誰でも乗れるそうですが、ボクが行ったときには、そのようなサービスはなく、特別な許可を頂いてコクピットに座らせてもらいました。その想像以上の狭さに驚きました。実機取材して描いたのでリアルに描けていたらいいなと思います」。
作品の楽しみ方はさまざまだが、本作のテーマはふたりの少女が人間がいなくなった世界を自由気ままにバイクで旅することにある

ファントムが登場する三沢編では、ヨーコたちにとっては初めて出会う生身の人間の生存者・クレアの口から宇宙船で活動中に大規模な太陽フレアに遭遇、宇宙空間でコールドスリープに入ったことにより生き残ったこと、仲間の宇宙飛行士たちが謎の病で命を落としたことが語られた。文明崩壊の原因の一端に触れたことで、この世界に何が起こったのかファンの間での考察も進んだようだが……。

「そのようですね(笑)。もちろん、作品の読み方や楽しみ方は読者にお任せしていますので、ボクとしては考察も自由に楽しんでもらいたいと思います。テーマはヨーコとアイリが人間がいなくなった世界を自由気ままにバイクでツーリングすること。この世界でこういうことがあったら楽しいだろうな、ということですが、SFですので、その中には実際いろんな要素や楽しみ方がありますよね」
先ほど北海道編はじっくりと執筆する予定との話だったが、お話しできる範囲で前置きした上で、今後の展開を尋ねることにした。

「箱根から始まったヨーコとアイリの旅は関東を脱し、東北を走り抜けて北海道へと至ったわけですが、ありがたいことに、西日本のファンを中心に『ぜひウチの地元にもふたりに来て欲しい』とのリクエストをたくさん頂いております。いつまで連載が続くかは編集部の判断にもよりますが、そうしたみなさんの声はとてもうれしいですね。これからも『終末ツーリング』の応援をよろしくお願いします」。

