BMW・F450GS スポーツ/トロフィー

全世界で人気となるアドベンチャーバイクカテゴリー。火付け役でもあり、その頂点に君臨するのがBMWがリリースするGSである。しかしもともとはある意味、マニアックなカテゴリーのマシンだったように思われる。軽量さが命でもあるオフロードに、あの大柄なマシンで踏み入れるという暴挙ともいえる行動。そこに得も言われぬ快感があるとしてもである。もちろん、GSはオフロード専門モデルではないし、オンロードでのレベルの高い走りや快適性が備わっていてこそだとは思われるが、それが同社のメインのモデルになるとはBMWも考えていなかったのではないかと想像される。ところがGSはいつしか同社のベストセラーモデルとなり、ボクサーエンジンを搭載するモデル以外もラインアップ。

これまで、もっとも小さな排気量のGSはG310GSであったが、2025年をもって生産終了。その後継モデルともいえるF450GSが発売。F450GSがで行われたプレスローンチに参加し、そのポテンシャルを確かめてきた。

420cc並列2気筒の全く新しいエンジンを、これまた全く新しい車体に搭載している。大きさはG310よりも一回りほど大きいものの、兄貴分たちと比べると小さめ。178kgという車重は、オフロードだけを想定したスポーツモデルと比較すればヘヴィだといえるかもしれないが、アドベンチャーモデルとして考えれば十分軽量で、コンパクトだと言えるだろう。

F450GSにはイージライドクラッチ(ERC)という新システムがモデルによって採用されている。自分で変速する必要はあるものの、クラッチ操作が必要なく、エンストの心配からも解放される。ホンダのEクラッチのようなシステムとなるが、構造はよりシンプルな機械式遠心クラッチシステムである。

本国では4つの仕様が発売されるという。日本では導入予定のないシンプルなベースグレードのほか、ライディングモードやギアアシストプロ等が装備されたエクスクルーシブ。そこに調整機構の付くハイグレードなサスペンションを装備したスポーツ。さらにERCやアルミ製エンジンガードが装備されたGSトロフィーの4モデル。今回は午前にワインディングを主体に「スポーツ」。午後にオフロードメインで「GSトロフィー」が準備されテストをおこなった。

F450GS スポーツ、その実力は?

まずはERCを装備しない「スポーツ」でオンロードから走行を開始。

ERCが注目を集めるなかで、じつはこの通常のクラッチシステムもかなり良い出来栄えだ。まず操作感が軽く、少ない力でコントロールが出来る。そして、その繋がりや切れ感が非常にわかりやすい。ゼロ発進やUターン等でのプレッシャーがないという優秀さを持っている。
135度の位相クランクエンジンは3000rpmでトルクの80%を発揮するというキャラクター。420ccという排気量にやや期待感は薄かったものの、想像以上のパワフルさに少し驚かされる。このクランクタイミングによる効果かと聞けば、それによる効果がとくに大きいといった訳ではないそうだ。しかしシンプルにトルクフルで扱いやすいキャラクターは多くの人から高い評価を受けるだろう。

F450GS スポーツ

市街地をあとにして高速道路に乗る。アクセルをひねるとぐんぐんスピードを乗せていく。メーター読みで150km/h程度はすんなり出てしまうし、120km/hでの巡航などはまったく不安のないレベル。
これなら高速を使ったツーリングも苦にならないであろうし、アドベンチャーマシンらしいしっかり感や快適性も味わえる。
さらにワインディングに突入すれば、車体の軽さはキビキビとしたハンドリングにつながり、しなやかな足回りが路面をがっちりと掴んでくれる。オンロードにおけるGSの意外性はこのマシンにも受け継がれていたのだ。

ブレーキシステムはガツンと効くものではないが、足周りとの相性も良く実際の制動力は不安のないもの。しかもコーナリングABSを装備しているのも安心である。
GSのプロモーションもオフロード走行をフィーチャーしたものが多い。しかし、現実にはオフロードを走らないユーザーがほとんどだろう。
車で言えばトヨタのランドクルーザーなどと同様、オンロードしか走らないとしてもしっかりと満足できるパフォーマンスを備えていた。

一方のF450GS トロフィーは……、


ランチタイムを挟んでERCを標準装備する「GSトロフィー」モデルに乗り換える。今回はオプションとなるスポークホイールにくわえ、タイヤをメッツラー製カルー4に換装。オフロードを存分に楽しめる仕様となっていた。

オプションのラリーシートが装着され、シート高はSTDから20mmアップの865mm。しかしこれとて、軽さやスリムさの恩恵か、数値とイコールの印象とはなっていない。

ギアを1速に入れアクセル操作のみで発進。スムーズかつ力強いスタートである。このエンジンキャラクターだからこそ、ERCがさらに活きるのだろうと感じられた。
R1300シリーズに搭載されるASAはより緻密な電子制御による変速やコントロールがされるが、シンプルでわかりやすく、大きなコストや重量増を避けたERCも評価出来るシステムであるといえよう。
一つ気になるところがあるとすれば、トルクフルなエンジンキャラクターに誘われるように早めに高いギアにあげて固定してしまうようなシチュエーション。そこで回転が落ちた際に、ややダイレクト感の薄いエンジンフィーリングとなる。(2700RPMで完全につながる設定)さぼらずにシフトダウンすれば良いだけの話ではあるのだが、個人的には少し気になったポイントだ。とはいえ、クラッチを使わず、しかもエンストしないメリットは大きく、長時間の走行。それこそGSに相応しい状況下における快適性につながるであろうことは間違いない。

オフロードにおける、GS流の低速走行時にもこれは有効であると感じた。

ラリー経験豊富な先導ライダーが途中から良いペースで飛ばし始めたので、なんとか付いていこうとこちらもスピードを上げる。砂塵で前がよく見えないなか、ギャップに強めにヒットするような場面でもパニックになるような挙動が出ない。
180mmという前後のサスペンションストローク量は数値的に豊富というわけではないものの、実際の足回り(スポーツサス)の動きやショックの吸収性はなかなか高性能であり、G310GSの後継モデルとは思えないほどであった。

フラットダートではリヤを滑らしながら気持ちの良い走行。ややスライドしやすい傾向であるが、そこがまた面白さに繋がっている。いっぽうでそのコントロール性は高く、トラコンの制御も安全性重視のものから一歩進んだ、ある程度滑らせて安定させるといった介入具合。これまでのGSで培ってきた安全性と楽しさの両立をしっかりと見極めている印象であった。
ただ軽く、運動性能だけを追い求めるのではなく、重厚ながら軽快というGSらしいフィーリングがしっかりと継承されているように感じられたF450GS。排気量で敬遠する人も想定されるが、日本市場によくマッチするであろうアドベンチャーマシンだと感じられた。

F450GS スポーツ ディテール解説

「スポーツ」はレーシングレッドと称されるカラーリングを纏い、スポーツサスペンションを装備する上級仕様。
上位機種と遜色ない豪華なTFT液晶メーターを装備。

F450GS トロフィー ディテール解説

「GSトロフィー」仕様はおなじみのレーシングブルーメタリックカラーが特徴。「スポーツ」の装備を踏襲しつつ、細かな仕様が異なる。また、新機構。ERCが標準装備となる。今回はオプションとなるスポークホイールに換装され、タイヤもオフロード走行を想定したメッツラー製カルー4が装着されていた。

主要諸元

最高出力:35 kW (48 hp) at 8,750 rpm
エミッション制御:Emission control/Closed-loop 3-way catalytic converter
タイプ:Water-cooled 2-cylinder, four-stroke engine with four cam-operated valves per cylinder, two overhead camshafts and wet-sump lubrication
ボア x ストローク:72 mm x 51.6 mm
排気量:420 ccm
最大トルク:43 Nm at 6,750 rpm
圧縮比:13.0 : 1
点火 / 噴射制御:Electronic intake pipe injection / digital engine management system with throttle-by-wire
排ガス基準:EU 5+
最高速度:165 km/h
燃料種類:Super unleaded (max. 10% ethanol, E10), 95 ROZ/RON, 90 AKI, Super unleaded (max. 25% ethanol, E20) E15-E25, 95 ROZ/RON, 90 AKI
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時):3.8 l
WMTCに準拠したCO2排出量:88 g/km
オルタネーター:Permanent magnet alternator with 334 W (nominal power)
バッテリー:12 V / 8 Ah, maintenance-free
クラッチ:Multiplate clutch in oil bath, anti-hopping clutch, mechanically operated
ミッション
Claw-shifted 6-speed gearbox integrated in the transmission housing
トラクションコントロール:BMW Motorrad DTC
フレーム:Steel tube frame with load-bearing engine, steel tube sub-frame
フロントサスペンション:Upside-down telescopic fork, diameter 43 mm
リアサスペンション:Aluminum twin-sided swingarm, compression and rebound damping adjustable shock absorber including progressive damping
サスペンションストローク、フロント/リア:180 mm / 180 mm
軸距:1,465 mm
キャスター:115 mm
ステアリングヘッド角度:26.1°
ホイール:Aluminium cast wheels
リム(フロント):2.50″ x 19″
リム(リア):3.50 x 17″
タイヤ(フロント):100/90 -19
タイヤ(リア):130/80 -17
ブレーキ(フロント):Single disc brake, floating brake discs, diameter 310 mm, Brembo 4-piston fixed caliper
ブレーキ(リア):Single disc brake, diameter 240 mm, 1-piston floating caliper
ABS:BMW Motorrad ABS Pro
シート高、空車時:845 mm
インナーレッグ曲線、空車時:1,880 mm
燃料タンク容量:14 L
リザーブ容量:approx. 2.5 l
全長:2,161 mm (over license plate holder)
全高:1,210 mm (above windshield, at DIN unladen weight)
全幅:869 mm
乾燥重量:165 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備):178 kg (※1)
許容総重量:355 kg
最大積載荷重(標準装備の場合):177 kg

(※1) According to Guideline (EU) 168/2013 with all operating fluids, with standard equipment and refuelled with min. 90% of the usable fuel tank capacity.