BMW・R 1300 R ツーリング AUTOMATED SHIFT ASSISTANT……2,571,000円~




ロードスターの転機は2015年のフルモデルチェンジにあり
少しだけBMWのロードスターと筆者との昔話をさせてほしい。
筆者は1999年にR 1100 Rを購入した。車両価格は145万円だったと記憶する。「20代でビーエムの新車を買う」という目標を達成したのだ。1085ccの空油冷ボクサーツインは、最高出力80PSを発生。決してパワフルではなかったが、どの回転域からでも必要十分な力が取り出せ、まさに意のままに操れる従順なネイキッドだった。北海道や九州へのキャンプツーリングに飽き足らず、各地の林道にも足を踏み入れ、最終的には「ボクサートロフィー」というワンメイクレースにも参戦している。この間、致命的な故障こそなかったものの、経年劣化によってハーネスの被覆がボロボロに。これの修復にはかなりの費用がかかることから、5万kmを目前に手放してしまった。とはいえ、このバイクを通じて得られた経験は相当なボリュームであり、ゆえに今なおBMWのロードスターには思い入れが強いのだ。

2001年に発売されたR 1150 Rは、リヤホイールが17インチ化され、トランスミッションは5→6段に。この一見地味なように思える改良は、すでにレースに参戦していた筆者にとって非常にうらやましかった。ただ、初期入力から極端に利きすぎるサーボブレーキだけはどうしても馴染めずじまい。後に追加されたバリエーションモデル「R 1150 R ロックスター」を借りてボクサートロフィーに出場したこともあるが、自分のR 1100 Rでの自己ベストを更新できず、買い換えるまでには至らなかった。

2015年にフルモデルチェンジしたR 1200 Rは、エンジンの空水冷化だけでなく、およそ20年貫いてきたテレレバーとの決別もハイライトだった。BMWはこの前年に発売したR nineTとの差別化を図りたかったのか、ここからロードスターは見た目も走りもストリートファイターへと移行する。ライダーに対する従順さは残しつつも、各種先進デバイスによって楽しめる速度域が一気に底上げされた。牧歌的な味わいを求めるならどうぞR nineTシリーズへ……。そう言われているような気がするほどの、ドラスティックな進化ぶりだった。

ボクサーとASAの相性は抜群、開ければ実にパワフルだ

前振りが長くなりすぎてしまったが、筆者がBMWのロードスターに対して人一倍思い入れがあることはお分かりいただけたかと思う。
さて、このR 1300 Rだが、2気筒エンジンのネイキッドでありながら、車体はけっこう重い。並列4気筒のヤマハ・MT-10やスズキ・GSX-S1000、カワサキ・Z1100らと比べると20kg前後も上回るのだ。排気量が1300ccもあるのだから仕方ないとはいえ、サイドスタンドで傾いた状態から車体を起こすだけでも「ヨイショ」という言葉が自然と口から漏れる。

エンジンは145PSを発揮する空水冷ボクサーツインで、今回試乗したのは自動変速システム「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」を採用するツーリングASA仕様だ。ドゥカティ・ストリートファイター V4の214PS、KTM・1390スーパーデュークR EVOの190PSと比べれば、最高出力こそ控えめではある。だが、注目すべきは149Nmという圧倒的な最大トルクで、R 1300 Rはこれを6500rpmという中回転域で発生するのだ。

ツーリングASA仕様にはライディングモードProが採用されており、エコ/レイン/ロード/ダイナミックモードが選べるほか、スロットルレスポンスやDTCなどの設定を個別に調整可能だ。ASAの自動モードDとボクサーツインとの相性は抜群で、一般道においてはエコやレインモードでも、シフトカムが切り替わるであろう5000rpm付近に到達する前に次々とシフトアップしていく。それだけ低~中回転域に潤沢なトルクがある証拠だが、大排気量のツインだからといってエンジンフィールは決してクルーザー的なものではなく、快活な吹け上がりは間違いなくスポーティーと表現できるものだ。
ダイナミックモードでスロットルをワイドオープンすると、強い蹴り出し感を伴いながらとてつもないダッシュ力を披露する。そこにはもう空油冷時代の牧歌的な面影はないが、ボクサーツインならではの滑空感は未だ健在。これこそが他のストリートファイターとは決定的に異なる点であり、このモデルの大きな魅力の一つになっている。
ASAの自動モードDは、減速していくと停止直前まで2速を維持する設定で、走行中に1速まで自動的にシフトダウンすることは決してない。最初はこれに違和感を覚えたが、通常走行において特に問題ないことが分かると、それ以降は気にならなくなった。一方で、少し心配になったのは冷却ファンが回り出すタイミングだ。試乗日はさほど気温が高くなかったにもかかわらず、信号待ちのたびにクーリングファンが稼動していた。もし猛暑日で渋滞にハマったときなどは、メーターの警告表示を見逃さないように注意しておいた方がいいだろう。
セミアクティブサスのDSAが優れた操縦安定性を実現

R 1300 Rがライバル各車よりも重いことは先ほど触れたとおりだが、いざ動き出してしまえば軽快な運動性を発揮するのはBMWモトラッドの常だ。
クランクシャフトが車体に対して縦置きにレイアウトされているため、エンジン回転数の上下にかかわらずロール方向の動きは軽快だ。R 1100 R時代と比べるとマスの集中感がより増しているかのような印象で、特に低速域でのスラロームではリッタークラスのネイキッド並みにスパッ、スパッと左右へ切り返すことができる。その後に続く二次旋回については、ときおり1510mmというホイールベースの長さを感じさせることもあるが、これが安定性の源にもなっているのは確かだ。

ツーリングおよびツーリングASA仕様は、ダイナミックESAの上位互換であるDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)を採用する。負荷によってダンピングおよびバネレートを自動的に変化させるセミアクティブサスで、基本的には車体が極端にピッチングしないような設定となっているようだ。機械的なアンチノーズダイブを発生するテレレバーの動きに近く、これも切り返しの軽さを生んでいる。また、ACCでの巡航中、前走車のブレーキングに合わせて自動的に減速する際、車体は決して前のめりにならず、むしろリヤが沈んでいるかのような挙動を見せる。これ自体はフルインテグラルABS Proとも連携していると思われるが、このDSAがあるからこそACCの便利さがより際立っていると言えるだろう。


ラジエーターシュラウドをはじめとするボディワークのおかげか、下半身の防風効果は意外と高く、また軽い前傾姿勢によって高速巡航もさほどつらくはない。日本で楽しめる速度域を考えるとR 12 nineTの方が有利とも思えるが、R 1300 RのツーリングASA仕様は257万1000円~で、R 12 nineTの256万2000円~と価格はほぼイコールなのだ。付け加えると、採用されている先進デバイスの数はR 1300 Rが圧倒的に多い。そういう視点で見ると、この最新ロードスターが俄然魅力的に思えてくるはずだ。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
シート高は810mm(スポーツサスペンションを採用するライト・ホワイトのみ820mm)で、リッタークラスの一般的なネイキッドとほぼ同等。マシンのボリューム感に圧倒されがちだが、足着き性はご覧のとおり良好だ。ハンドルはワイドかつ低い位置にあり、上半身は軽く前傾する。峠道やサーキットでフロント荷重がしやすいライポジとなっている。
ディテール解説










R 1300 R(2026年モデル)主要諸元
●エンジン
最高出力 107 kW (145 PS) / 7,750 rpm
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
タイプ 空冷/水冷2気筒4ストロークボクサーエンジン、可変インテークカムシャフトコントロール BMW ShiftCam
ボア × ストローク 106.5 mm × 73 mm
排気量 1,300 cc
最大トルク 149 Nm / 6,500 rpm
圧縮比 13.3 : 1
点火 / 噴射制御 電子制御インテークパイプ・インジェクション / スロットル・バイ・ワイヤ付デジタルエンジンマネジメントシステム
排ガス基準 EU 5+
●走行性能 / 燃費
最高速度 240 km/h
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時) 20.8 km/L
WMTCに準拠したCO2排出量 110 g / km
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン(スーパー)(max 15%エタノール、E10/E15)、95 ROZ/RON、90 AKI
●電装関係
オルタネーター 650 W
バッテリー 12 V / 14 Ah、メンテナンスフリー
●パワートランスミッション
クラッチ 多層構造湿式クラッチ(アンチホッピング)
ミッション 常時噛み合い式6速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト
●サスペンション / ブレーキ
フレーム 板金シェル構造のフレーム、リアフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション 倒立式テレスコピックフォーク
リアサスペンション BMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアーム
サスペンションストローク、フロント/リア 140 mm / 140 mm
軸距 1,510 mm
キャスター 127 mm
ステアリングヘッド角度 62.5°
ホイール アルミニウムキャストホイール
リム(フロント) 3.50″ × 17″
リム(リア) 6.00″ × 17″
タイヤ(フロント) 120/70 ZR17
タイヤ(リア) 190/55 ZR17
ブレーキ(フロント) ダブルディスクブレーキ(310 mm 径)、フローティングマウント式ディスクブレーキ、4ピストンラジアルブレーキキャリパー
ブレーキ(リア) シングルディスクブレーキ(285 mm 径)、2 ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW MotorradフルインテグラルABS Pro
●寸法 / 重量
シート高、空車時 810 ㎜ (スポーツサスペンション装備:820 ㎜)
インナーレッグ曲線、空車時 1790 mm(スポーツサスペンション装備:1810 ㎜)
燃料タンク容量 約17 L
リザーブ容量 約4 L
全長 2,125 mm
全高 1,090 mm
全幅 835 mm ※ミラー含まず
乾燥重量 227 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備) 239 kg
許容総重量 460 kg
最大積載荷重(標準装備の場合) 221 kg
車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時) 244 kg
※生産国:ドイツ



